今年4月、東京・日比谷公園でミャンマーの「水かけ祭り」が開かれ、1人の女性が姿を見せた。テ−テ−イスェさん。祭りは、軍事政権と闘い民主化運動に取り組んできた在日ミャンマー人たちが毎年続けてきた。まもなく1歳になる娘を胸に抱き、旧知の仲間と語り合うひととき…。民主化運動のリーダー・アウンサンスーチーさんの肖像が掲げられた会場で、テーテーさんたちは悲願の新政権発足を祝った。 テーテーさんが祖国を離れたのは1991年にさかのぼる。民主化運動に関わる家族に身の危険が迫り、両親、3人の兄たちと一家6人で難民認定を求めて日本に逃れた。当時12歳。以来、いつの日か祖国に戻る日を夢見ながらもミャンマー情勢は好転しないまま、軍事政権によって僧侶や市民は弾圧され、多くの血が、涙が流れた。 私たちは94年にテーテーさんと出会った。「学校に通いたいのに、通えない女の子がいる」。今の時代になぜ…。それが、すべての始まりだった。 学校代わりに通っていた塾で勉強する様子、夜間中学への編入相談、初めての登校、都立高校入学と専門学校への進学、難民としての不認定、在留特別許可、そして社会人となり、結婚…。カメラは祖国民主化への期待と失望が交錯するなかで、日本の社会に根ざし、懸命に生きる姿を追った。 祖国の地を踏む日が、もう手の届くところまで近づいたいま、テーテーさんは何を思うのか。22年の取材をたどる。
取材・構成:李民和、櫻井雄亮、岡野保、神田和則
撮影:福田功 編集:大旗勝俊 |
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