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更新日:令和4(2022)年6月27日

ページ番号:7479

水田裏作でのブロッコリー栽培~育苗方法と排水対策のポイント~

1.はじめに

ブロッコリーは、他の秋冬野菜に比べて栽培に関わる作業が少なく、特別な資材や機械を必要としないため、秋冬どり野菜の中では栽培に取り組みやすく、水田を利用した栽培においても有望な品目の一つです。秋冬どりの作型では、秋の長雨による定植準備の遅れとそれに伴う苗質の劣化、また、定植後には湿害、台風被害などの影響を受けやすく、安定生産のためには圃場排水性の改善が重要です。

そこで、ポイントとなる苗質の劣化による生育の遅れを防ぐ育苗方法と、排水対策の目安となる地下水位に関する試験成果を紹介します。

2.苗質の劣化による生育遅延を防ぐ!

ブロッコリーをセルトレイで育苗すると、は種後20から25日で定植が可能になります。葉菜用の育苗培養土は窒素肥料分が少ないため、播種後2週間頃から液肥などで追肥を行う必要があります。しかし、台風や長雨などで定植が遅れると、追肥した苗は徒長し、機械定植適性が低下したり、根鉢がまわり過ぎることによる活着の遅延などが発生します。

その対策として、肥効調節型肥料を利用する方法が有効です。育苗中の追肥を行わずに定植直前に肥効調節型肥料「マイクロロングトータル40日タイプ」を株当たり約0.5から1グラム(128穴セルトレイで約60から130グラム)施用することで、苗の徒長を防ぐとともに慣行の育苗方法と同等の収量を得ることが可能で(表1)、収穫物の外観品質にもほとんど差がありません(写真1、写真2)。肥効調節型肥料の施用は、セルトレイ上から振りかけるようにして行うため、充填してある培養土を事前に潅水して湿らせておくと肥料のこぼれが少なくなります。

 

表1.長期育苗のセル苗への追肥方法がブロッコリーの生育及び収穫に与える影響

育苗時追肥

定植前追肥

定植時

定植11日後

収穫時生育

草丈(センチメートル)

葉数(枚)

草丈(センチメートル)

葉数
(枚)

葉長(センチメートル)

可販株率
(パーセント)

収穫
最盛日

花蕾重
(グラム)

花蕾径
(センチメートル)

液肥

液肥

11.3

4.0

12.3

5.3

9.2

96

2月6日

310

10.1

肥効調節型

肥料

6.3

2.4

11.3

4.7

9.9

92

2月6日

300

10.2

注1)栽培は旭市内の典型的な淡色黒ボク土畑地圃場で行った

2)品種は「むつみ(ブロリード)」、128穴セルトレイで育苗し育苗用培養土は「与作N8号」を使用した

3)播種は2016年8月24日、定植は同年9月26日(育苗日数34日間)に行った

4)液肥は「大塚A処方」を9月12日と9月26日に潅注した

5)肥効調節型肥料「マイクロロングトータル40日タイプ」は9月26日に施用した

ブロッコリー写真1

写真1.慣行の収穫物

ブロッコリー写真2

写真2.肥効調節型肥料を施用した収穫物

(慣行との差はほとんどない)

また、早播きした苗(7月下旬から8月上旬播種)でも、定植時期が品種の適期ならば同様の処理を行うことで、慣行の育苗方法と比較して収穫開始が早くなり可販株率が増加し、台風の潮風害に伴う欠株も少なくなりました(表2)。早播きすることによって、育苗期間は長くなりますが、は種と水稲との作業分散を図ることが可能です。

ただし、従来の育苗方法と同様に定植時期が品種の適期を過ぎると、茎葉の生長が十分でないうちに低温遭遇して花芽分化し、花蕾が小さくなるボトニングの発生などのリスクがあるため、種苗会社のカタログなどで確認し品種ごとの定植適期を遵守します。

表2.播種時期と追肥方法がブロッコリーの収量に与える影響

播種時期

育苗時
追肥

定植前
追肥

収穫
開始日

収穫
終了日

花蕾重
(グラム)

収量
(10アールあたりトン)

可販株率
(パーセント)

潮風害欠株率(パーセント)

7月下旬

肥効調節

1月10日

2月7日

320

1.37

89.9

10

8月上旬

肥効調節

1月17日

2月23日

300

1.27

86.7

13

8月中旬
(慣行)

液肥

液肥

1月24日

2月23日

350

0.71

36.8

63

  • 注1)播種と定植以外の栽培概要は表1と同じ
  • 2)定植は2017年9月15日に行った
  • 3)花蕾重は花蕾頂点から18センチメートルに切りそろえ出荷形態に調整した後の重量
  • 4)収量は10アール当たりの定植株数4,761株×花蕾重×可販株率で計算した
  • 5)2017年10月22日から23日に台風21号による潮風害を受けた

3.適切な排水対策で湿害の回避を!

水田裏作でのブロッコリー栽培では、排水対策がポイントになります。大量降雨直後の表面水を迅速に排水するため、高うね栽培や明きょの施工を行います。また、湿害を回避するためには地下水位を下げることも重要です。ブロッコリーを栽培する圃場の地下水位は、地表下60センチ以下を目安にしてください。農林総合研究センターにおける試験では、地下水位を65センチとすることで、ブロッコリーの茎葉の生育が良く、花蕾重も240グラム以上となりました(図1)。暗きょが地表下50センチ付近に施工してある圃場では、15から20センチのうねを立てることで、水田でもブロッコリーを安定的に生産できます。

育苗方法と排水対策のポイントをしっかり押さえて、水田裏作でもブロッコリーの栽培が可能になります。

花蕾重図1

図1.地下水位とブロッコリーの生育の関係

注1)試験はガラスハウス内のポット試験で行った

2)1週間に1度、平年の平均降水量に等しい量を頭上かん水した 

初掲載:令和元年7月
千葉県農林総合研究センター
水稲・畑地園芸研究所
東総野菜研究室
研究員竹内大造
電話:0479-57-4150

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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