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更新日:令和4(2022)年8月5日
ページ番号:7377
落花生栽培では、株を掘り取りした後に人力で土をふるい落とし、莢が上になるよう反転させて畑に並べて乾燥させる、労働負荷が大きい一連の作業が必要でした。
そこで、掘り取りから反転までを一工程で行えるラッカセイ収穫機が開発され、平成27年から市販されました。しかし、その反転精度は、隣株の茎葉が絡み合うために不安定でした。
農林総合研究センターでは、主力品種である「千葉半立」について、収量を確保しつつ、安定して高い反転率が発揮できる栽培条件を調査しました。
1)「千葉半立」は、株元は地面に水平に枝が伸びますが、枝の半分から先が立つので、伏性と立ち性の中間タイプの草型の品種です。この様な草型の品種では、慣行の株間30センチメートル2条栽培すると、隣接した株の茎葉が絡み合って、反転精度が低下していることが明らかになりました。そこで、慣行の株間より疎植となる株間45センチメートル2条で栽培した結果、隣接した株の茎葉の絡みが少なくなり、収穫機による反転率が最大で80パーセント程度まで向上しました。収量面では、疎植しても茎葉重や分枝数が増加するので、1株1本立ちでも慣行並みの収量が得られました。莢損失率は、1.5パーセントまで低下しました(表1)。しかし、落花生研究室の圃場で収穫機を用いたところ、株間による反転率の差はありませんでした。これは、落葉率が高く、慣行の株間30センチメートルでも隣接した株の茎葉の絡みが少ないためと思われました。
表1ラッカセイ収穫機による株の反転率及び莢損失率(平成27年度試験)
試験場所 |
試験区 |
株張り |
茎葉重 |
総分枝数 |
最長分枝長 |
株の反転率 |
分枝の重なり |
落葉率 |
乾燥莢実重 |
乾燥上莢重 |
左対慣行比 |
莢の損失率 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
株間 |
株立数 |
||||||||||||
畑地利用研 |
30 |
1 |
121 |
698 |
58 |
54 |
41 |
28 |
68 |
402 |
162 |
100 |
2.4 |
45 |
1 |
119 |
929 |
72 |
51 |
79 |
18 |
71 |
364 |
217 |
91 |
1.5 |
|
45 |
2 |
116 |
974 |
73 |
50 |
59 |
22 |
73 |
382 |
195 |
95 |
3.6 |
|
落花生研 |
30 |
1 |
104 |
351 |
46 |
45 |
74 |
15 |
93 |
323 |
200 |
100 |
4.2 |
45 |
2 |
109 |
502 |
61 |
46 |
72 |
9 |
92 |
306 |
186 |
95 |
3.5 |
注1)播種日:5月25日、全区2条マルチ栽培、標準区は株間30センチメートル、2条1本立区
注2)分枝の重なり:同じ条における隣株の分枝同士が重なっている長さ
注3)莢損失率は、上莢生莢重に対する落莢した上莢重の比率
2)慣行体系では、根切り後に手作業で全ての株を反転するため10メートル当たり245秒の作業時間を要しますが、収穫機を用いると反転していない株だけを修正するだけでよいため、44秒まで短縮できました(図1)。
図1落花生収穫体系別反転修正に要した時間
注1)慣行体系は、根切り後手作業で全株を反転した時間
注2)収穫機体系は、ラッカセイ収穫機を使用して反転が不十分な株のみを修正した時間
注3)平成27年6月15日播種、10月21日調査、品種「千葉半立」、畑地利用研究室
3)ラッカセイ収穫機の市販価額は、約1,300千円です。10年間使用するとして年間の減価償却費は130千円、10アール当たりの落花生莢実収量を285キログラム、燃料費の増加が28円、労働費の減少額8,896円と想定した場合、導入メリットが得られる落花生作付面積は、収穫機1台当たり148アール以上と試算されました。
実態としては、この面積を下回る経営が一般的なので、機械の共同利用や作業請負も検討する必要があります。
茎葉が立ち、株元に莢が集中する「ナカテユタカ」等の立ち性品種では反転率が低いため多くの株を手作業で修正する必要がありますが、土がふるい落とされて一定方向に株を並べられるので、反転修正時間の短縮や軽労化が図れます。
また、この収穫機は、19キロワット(26馬力)以上のトラクターへの装着が推奨されています。このため、収穫機をトラクターに装着したまま運搬するには、3トントラックが必要となります。
初掲載:平成28年7月
農林総合研究センター水稲・畑地園芸研究所
畑作利用研究室
主席研究員
清島浩之
電話:0478-59-2200
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