小児内分泌科
はじめに
日本内分泌学会の認定する「内分泌代謝科専門医」は認定内科医または総合内科専門医、小児科専門医、産婦人科専門医、泌尿器科専門医、脳神経外科専門医を基盤とするいわゆるサブスペシャルティ専門医です。小児科領域で認定教育施設となっているのは全国で63施設です。このうち特に小児症例の豊富な小児専門医療施設(大学施設併設センターを除く)は11施設であり、千葉県こども病院もその一つです。現在、指導医2名で研修指導を行っています。
千葉県こども病院内分泌科の特色
- きめの細かい糖尿病診療をおこなっています。
1型糖尿病の患者さんは乳幼児から高校卒業ごろまで100人以上が通院しています。2型糖尿病、遺伝性糖尿病、MODY(maturity onset diabetes of the young)なども幅広く診療しています。
1型糖尿病では、インスリンポンプ、持続グルコースモニターなど最新の機器にも対応しています。
医師、糖尿病療養指導士の資格をもつ看護師、栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカー、Child life specialistで『糖尿病療養支援チーム』を結成し、多職種で患者さん・ご家族をサポートします。患者さん向け、学校の先生方向けの勉強会も開催しています。
- 性分化疾患診療の中核施設です。
外性器・内性器が非典型的であるお子さんに対して、性分化疾患診療チームで泌尿器科・新生児科、遺伝科医師、遺伝カウンセラー、看護師、助産師と連携しながら適切な検査・治療を行います。ご家族への丁寧な説明、ご本人への年齢にあわせた疾患理解の支援も大切にしています。当院は小児内分泌学会による性分化疾患診療の中核施設の認定を受けています。
- 他科と連携して診療することができます。
当院は小児専門病院であり、内科系・外科系の各科がそろっています。ターナー症候群、プラダー・ウィリ症候群、ヌーナン症候群などの染色体の病気、軟骨無形成・低形成症、骨形成不全症など骨の病気、小児がん経験者など、様々な科に受診されるお子さんにとって、ひとつの病院内で必要な医療が受けられることが大きなメリットとなっています。また小児外科・泌尿器科・耳鼻いんこう科・整形外科・脳外科といった外科系診療科と連携し内分泌疾患関連の手術にも対応しています。
- 内分泌緊急疾患に対応しています。
平日は毎日内分泌科医が勤務しております。糖尿病性ケトアシドーシス、急性副腎不全、水電解質異常、バセドウ病、低血糖症などの内分泌緊急疾患にすみやかに対応しています。
- 女性医師が複数在籍しています。
主な対象疾患
- 成長ホルモン分泌不全症、下垂体機能低下症、低身長・高身長など
- 尿崩症、水電解質異常など
- 先天性甲状腺機能低下症、橋本病、バセドウ病、甲状腺腫瘍など
- カルシウム・リン代謝および副甲状腺疾患、くる病、軟骨無形成症・低形成症、骨形成不全症等の先天性骨系統疾患など
- 思春期早発症・思春期遅発症、性腺機能低下症、性分化疾患など
- 先天性副腎皮質過形成、副腎腫瘍、副腎皮質機能低下症など
- 肥満症、メタボリック症候群、やせ症など
- 糖尿病、高インスリン性低血糖症など
- 小児がん経験者の内分泌合併症など
- 新生児マススクリーニング(先天性甲状腺機能低下症・副腎皮質過形成症)の精密検査や、千葉市の幼児尿検査・学校尿検査の尿糖陽性者の精密検査
診療実績
年度別新患患者数
疾患群分類 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
成長障害 |
82 |
82 |
73 |
93 |
間脳-下垂体障害 |
2 |
1 |
5 |
9 |
水・電解質代謝異常 |
1 |
1 |
0 |
1 |
思春期発来異常 |
34 |
49 |
85 |
66 |
性分化疾患・性発達異常 |
3 |
8 |
10 |
8 |
副腎疾患 |
4 |
3 |
12 |
15 |
甲状腺疾患 |
32 |
32 |
41 |
48 |
副甲状腺/カルシウム代謝/ビタミンD関連 |
10 |
8 |
5 |
9 |
糖尿病 |
9 |
12 |
13 |
15 |
低血糖症 |
0 |
1 |
1 |
1 |
肥満症 |
32 |
26 |
24 |
30 |
脂質異常 |
0 |
0 |
0 |
0 |
尿細管疾患(腎性糖尿) |
0 |
0 |
9 |
15 |
先天症候群・骨系統疾患 |
6 |
9 |
11 |
13 |
小児がん経験者 |
8 |
13 |
10 |
1 |
その他の内分泌関連疾患 |
0 |
0 |
0 |
0 |
全身性疾患 |
1 |
1 |
2 |
5 |
非内分泌疾患 |
0 |
2 |
6 |
4 |
異常なし |
67 |
71 |
59 |
30 |
合計 |
291 |
319 |
366 |
363 |
年度別入院患者数(延べ人数)
疾患群分類 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
1.下垂体疾患 |
|
|
|
|
下垂体機能検査 |
45 |
44 |
32 |
22 |
汎下垂体機能低下症 管理中 |
4 |
2 |
1 |
4 |
成長ホルモン治療導入 |
6 |
8 |
2 |
0 |
2.甲状腺疾患 |
|
|
|
|
バセドウ病 |
0 |
2 |
3 |
2 |
3.カルシウム・リン代謝疾患 |
4 |
1 |
0 |
2 |
4.糖尿病 |
|
|
|
|
1型糖尿病 初発 |
8 |
7 |
10 |
8 |
1型糖尿病 管理中 |
23 |
18 |
6 |
15 |
2型糖尿病 初発 |
0 |
0 |
2 |
1 |
2型糖尿病 管理中 |
0 |
4 |
2 |
1 |
その他 |
1 |
1 |
0 |
0 |
5.副腎疾患 |
|
|
|
|
先天性副腎過形成症 初発 |
0 |
0 |
0 |
0 |
先天性副腎過形成症 管理中 |
8 |
3 |
6 |
5 |
褐色細胞腫 |
3 |
2 |
0 |
2 |
副腎がん術後 |
0 |
0 |
0 |
0 |
副腎機能検査 |
0 |
1 |
1 |
0 |
6.性腺・性分化疾患 |
|
|
|
|
性分化疾患 |
4 |
3 |
0 |
1 |
思春期早発症 |
0 |
11 |
0 |
0 |
7.肥満症 |
4 |
0 |
0 |
0 |
8.骨系統疾患 |
|
|
|
|
骨形成不全症(ビスフォスフォネート治療) |
5 |
6 |
13 |
16 |
その他 |
0 |
1 |
2 |
2 |
9.その他 |
|
|
|
|
高インスリン血性低血糖症 |
1 |
1 |
2 |
4 |
低K性周期性四肢麻痺 |
18 |
34 |
26 |
10 |
その他の内分泌疾患 |
0 |
2 |
0 |
1 |
10.内分泌以外の疾患 |
44 |
8 |
4 |
19 |
合計 |
178 |
159 |
112 |
115 |
目標とする専門医資格名(認定する学会名)
※新専門医制度においては、「カリキュラム制の継続」、「呼称を内分泌代謝科専門医に統一(括弧内基本領域名が削除される)」「原則3年以上の研修期間」とする方針が2018年5月に日本内分泌学会から示されています。
千葉県立病院群レジデント医応募資格
- 採用開始日において小児科専門医研修を修了しているあるいは修了見込みである医師(小児科専門医資格を取得済みないし採用年度内に取得見込みであること)
- 内分泌代謝科(小児科)専門医資格を有していないこと
研修期間と研修施設名
- 研修期間:基本的に3年以上
- 研修施設:千葉県こども病院内分泌科
募集人数
- 1~2名(各年度新規分)
*応募を希望する方は必ず事前に下記レジデントコース指導責任者に連絡をとってください。
また、将来年度にわたる採用計画が立てられることもあるため、応募を検討中の方も早めに連絡をとることをお勧めします。
指導責任者名および連絡先
數川逸郎(千葉県こども病院診療部長/内分泌科部長)・皆川真規(千葉県こども病院副病院長)
043-292-2111(代)
研修カリキュラムの概要
専門医資格取得の要件
内分泌代謝科(小児科)専門医(日本内分泌学会内分泌代謝科(小児科)専門医認定募集要項より抜粋。一部改変、詳細は日本内分泌学会ホームページ参照)
専門医の認定を申請する者は、次の各項の条件を全て満足するものであることを要します。
- 申請時において、継続3年以上または通算5年以上本学会の会員であること。(休会期間は会員歴には含まれません。)
- 申請時において、小児科専門医として認められている者。
- 小児科専門医資格の研修期間を含めた研修期間を6年以上(初期研修含む)とし、そのうち申請時までに3年以上、日本内分泌学会認定教育施設において内分泌代謝科指導医の指導の下で内分泌代謝疾患の診療に従事している者。
- 内分泌代謝疾患の臨床に関する学会発表、または論文発表が5編以上あり、少なくとも2編は筆頭者であること。
- 内分泌代謝疾患相当例(内分泌代謝科専門医制度規則細則第6条参照)以上の入院及び外来の診療経験を有する者。
研修カリキュラム
研修カリキュラム(日本内分泌学会指定)(PDF:34KB)
申請フローチャート(PDF:33KB)
指導医(認定指導医と当該専門医)
内分泌代謝科指導医・専門医 皆川真規、數川逸郎
論文・書籍・メディア
- Autoimmune thyroid disease following hematopoietic stem cell transplantation in childhood cancer survivors. Shimazaki S, Kazukawa I, Minagawa M. Clin Pediatr Endocrinol.2022;31:54-58
- Elevation of serum fibroblast growth factor 23 level in a pediatric patient with lupus nephritis. Shunsuke Shimazaki, Itsuro Kazukawa, Hiroko Yamammoto, Kyoko Mori, Makiko Kihara , Yuki Naruke, Masanori Minagawa. CEN Case Rep.2022;11:50-54
- 第7章 甲状腺疾患 G 甲状腺腫瘍(甲状腺結節) 皆川真規 小児内分泌疾患の治療 診断と治療社2022年
- 第8章 甲状腺疾患 B 甲状腺中毒症 數川逸郎 小児内分泌疾患の治療 診断と治療社2022年