前日から10度も気温が下がるような寒暖差の激しい日々が続いたが
我が家の庭の木々もようやく色づき始め、秋が来た。
北の国からは雪の知らせも届いた。
毎年季節は巡り、特に年の瀬が近づくと、そのスピードの速さに驚くものだが
今年は3月11日の記憶が未だ生々しく、厳しい季節の到来を素直に喜べぬ自分がいる。
30周年記念ツアーはどの会場も満員のお客さんと共に、過去最高の盛り上がりをみせている。
荘厳なSEと共に幕が上がり一曲目が始った瞬間からバンドとオーディエンスが一体となる。
ただ拳を突き上げ叫ぶのではなく、ハートとハートで抱きしめ合うような
涙が出そうなくらい幸せに満ちた瞬間の連続だ。
30年目にしてたどり着いた理想のステージがそこにある。
長きに渡ってのファンの皆さんと、初めてご来場いただく新しいファンの皆さんが
心を一つにして声援を送ってくれることが何よりも嬉しくてて
気づけば僕も笑顔になっている。
今までで一番笑顔が多いステージではないだろうか。
先日の福岡でのライブでは、隣の会場で矢沢永吉さんが、そしてその隣では大相撲九州場所が行われるということで、
リハーサル終了後、矢沢さんの楽屋に御挨拶に伺った。
NHKで共演した以来だから、ずいぶんとご無沙汰をしてしまった。
お忙しい中、快く楽屋にお招き下さった矢沢さん。
いつものような包容力のある大きな微笑みで「久しぶり!」と右手を差し出してくれた。
いつお会いしても本当にジェントルマンな立ち振る舞いで惚れ惚れする。
こんな素敵な大先輩をもった我々は幸せだ。
自分も気づけば50歳を目の前にした大人の男。
矢沢さんを見習って、後輩達にそう感じてもらえるミュージシャンを目指したい。
「隣で演るんだって?お互い頑張りましょう!」
ガッチリ握手を交わし楽屋を後にすると、僕が乗った車が走り出すまでお見送り下さった。
その優しさに胸が熱くなった。
矢沢さん、ありがとうございました。
そんな矢沢さんとの再会もあって気合い充分の福岡ライブはしょっぱなから大盛り上がり。
PAエンジニアは毎回、オーディエンスの大歓声と歌声の大きさに驚きながら格闘している。
会場によってはPAのバンドの音がかき消されるくらい、オーディエンスが熱い。
バンドも一回り大きく成長したと思う。
音をぶつけ合うのではなく、受け止め合うことができるようになってきた。
豪快なスピード感と優雅な乗り心地こそロックンロールの美学なり。
スタッフとのコミュニケーションも万全で布袋組は今、絶好調だ。
メンバーと一緒に美味しいもつ鍋とワインでライブの余韻を楽しんでいると横綱白鵬からメール。
場所中だし、優勝までもう一歩という大事な時期だからお会い出来ないと思っていたが
「せっかく博多にいらっしゃるんですから会いましょうよ!」
と嬉しいお言葉。
突然の横綱の参加にメンバーもスタッフも緊張するが、そこはなんとも懐の深いお人柄。
皆の緊張をほぐすかのように柔らかで美しい日本語で会話は弾み、あっという間に和やかなムードに。
貴乃花親方がそうであるように、やはり戦いの頂点を極めた男はなんとも優しく力強い。
我々には計り知れない重圧の中、己がぶれることなく、勝つことにすべてを賭ける生き様は神々しい。
横綱からモンゴルの話を聞くたびに、一度は是非訪れてみたいと思う。
日本に来た時は70キロしかなく、初めて相撲の稽古で先輩に当たった時は震え上がったというモンゴルの狼は
大空を舞う伝説の龍となった。
今後の益々の御健闘を陰ながらずっと応援させていただきます。
最後にもう一つ。
福岡のライブの最前列で一曲目から楽しそうに踊りながら、ずっと歌ってくれていた小さな女の子がいた。
きっとお父さんもお母さんも僕の音楽が好きで、赤ちゃんの頃からずっと聞いていてくれたんだろうな!
なんて胸を熱くしながら踊る小さなその姿を見ていました。
アンコール最後の曲が終わり、僕はその子を客席から抱き上げてステージにあげた。
「布袋さんのこと好き?」と訊いたら、マイクに向かって「好きー!」と言ってくれました。
終演後、ファンの方から教えてもらい知りました。
大の布袋ファンだったおばあちゃんはガンで亡くなられたのですってね。
そしてライブはパパとママからの8歳の誕生日のプレゼントだったんだってね。
誕生日おめでとう!まゆちゃん。
またライブに来てね!
また布袋さんと、パパと、ママと、
そして天国のおばあちゃんと一緒に歌おうね!
忘れられない福岡への旅となりました。