9年前に他界したお義父さんのお墓に手を合わせながら呟いた。
今年のお彼岸に天国へ向けて贈る言葉はそれぞれ複雑なものになったに違いない。
ニュースなどで知る震災から半年経った今の現状、
そしてその間想像を絶する悲しみと向き合いながら立ち直ろうと前向きに努力を惜しまない人々の
姿を見るたびに、あの日のことを鮮明に思い出し、心が震える。
昔から「生きていればいいことあるさ」と人は言う。
「いいことばかりは続かない」とは判っていても
地震、津波、台風、と神様はなぜにここまで我々に試練を与えるのか。
原発問題は深刻で先が見えない。
子供たちの未来が危ない。
2011年のツアーが始まった。
初日の静岡から割れんばかりの声援と熱気で最高のスタートがきれた。
タイトル通り、バンド時代から現在に至るまでの時代を超えたベスト選曲。
会場の皆さんと一緒に歌える曲ばかりだ。
20代前半で作った曲をこうして今歌い奏でていても何の違和感もなく、
改めて自分があの頃から音楽に寄せる想いは何も変わっていないのだと嬉しくなる。
「一期一会」と題したこのツアー。
皆さんと抱きしめ合うような気持ちで完走したい。
墓地はお線香の香りが揺れて心地が良い。
それぞれのお墓に、それぞれの物語があると思うと、そこにいるだけで感動する。
ひざまずき義父上に語りかける。
震災のこと、家族の近況、ツアースタートの報告。
「東京JAZZにも出演したんですよ!観てほしかったなぁ」
彼はJAZZが大好きだった。
「娘の4度目のバレエ発表会ももうすぐです」
「最近少しギターが上達したんですよ!」
「母はリハビリを頑張っています」
「来年は僕も50歳になります」
天国へ、そして自分自身に語るように。
「お義父さん。御心配なく。僕が必ず家族を守りますから」
お墓の前で嘘はつけない。
すぐ隣にあるハナミズキの葉が、台風一過の眩しい太陽の光を反射してキラリと揺れた。
「君を信じているよ」
と、小さな声が聞こえた。
人生は続く。