演目は「白波五人男」。
新聞で記事を読み、これは絶対観たい!と思っていた矢先に、スタイリストのヤッコさんから「とってもロックなこの演目は是非布袋さんに観てほしい!」というメールを頂き迷わず行ってまいりました。
最高でした。
濃密な4時間に酔いしれ二人とも大興奮。
終演後銀座の行きつけのイタリアンでシャンパングラスを傾けながら、歌舞伎から感じ取ったスリルを肴に大いに語り合いました。
伝統を重んじながらも歌舞伎の底辺に流れる「攻撃的な精神」は表現全般に通ずるもの。
「高貴な野蛮人/ NOBLE SAVAGE」とは大好きな三島由紀夫著の『若きサムライのために』Sという本から『エレクトリック・サムライ』というヨーロッパと日本、韓国でリリースされたアルバムのサブタイトルに引用させてもらった大好きな言葉ですが、昨夜観た歌舞伎はまさにその言葉がピッタリ当てはまる豪快なものでした。
例えば着物。着物には着物のルールがあり、故にその美しさは継承されてきたと思いますが、歌舞伎舞台の衣装は完全にそのルールを無視した大胆な色彩と型破りの絵柄で目がくらみそうなほどの美しさ。着物にイナズマが走っていたりするのです!
役者さんたちの技量と技はもちろんのこと、舞台美術や音楽も素晴らしかった。
先日のオペラと比較すべきものではないにせよ、長い長い歴史を孕んだ大木の如き安定感がありながらも、未だ挑戦と成長を続けているという意味でも共通するものがありました。
一級のエンタテイメントは本当に楽しめる!
自分が表現者であることを忘れ舞台に熱狂できることの幸せ。
これが中途半端なものであればあるほど、あら探しをしてしまうものです。
「もっとこうあればいいのに...」とかね。
隙がないものも疲れますが、隙をも生み出す底力を感じました。
「破壊しながら構築する」というのは僕の音楽に対するここ数年のテーマです。
培った経験の上に鎮座するのではなく、常に攻撃的でありたいです。
昨夜の歌舞伎はまさにロックでした。
最近のロックはどこか少しお行儀良過ぎると思いませんか?
共感ばかりを求めているような気がする。
闇雲にルールを破ればいいわけではありませんが「?」を叫ぶのがロック。
横綱対決の件に関しても、あれやこれやと意見が交わされますが
溢れんばかりのファイティング・スピリットを観たいと思いませんか?
僕はああいう熱くなる瞬間を見るのが好きだなぁ。
観衆の観たいものに合わせてしまっては負け。
スリルのある存在でいたい。
そんな会話の中スティーリー・ダンのアルバム「 Can't buy a thrill / キャント・バイ・ア・スリル」(スリルは金では買えない)を思い出しました。
もっと突き抜けなきゃ!
と歌舞伎からロック魂を浴びた最高の一夜でした。