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人気作家 週刊現代に対し訴訟を検討

週刊現代が今月初めまで掲載していた連載企画「グリコ森永事件の真実(第2部)」の記事の中で、「かいじん21面相」グループの一員・キツネ目の男にされたとして、人気作家、黒川博行氏(62)が同誌や発行元の講談社を相手取り、名誉棄損の訴えを起こす準備をしていることが18日、明らかになった。

「あまりに荒唐無稽。親族まで犯人のように扱われている」と怒りが収まらない黒川氏は、出版社から自著の版権引き上げも検討しているという。

連載企画「グリコ森永事件の真実(第2部)」

問題の連載は週刊現代7月16/23日号から10月15日号まで11回掲載された。筆者は消えた年金問題を追及し、2004年の「年金大崩壊」(講談社)などで第26回講談社ノンフィクション賞を受賞したジャーナリストの岩瀬達哉氏。

同氏は記事の中で、犯人の条件として、関西での土地勘や青酸ソーダが入手しやすい立場のほかに、《言語障害の子どもがグループにいる/ダイエーと接点がある/事件当時(1984年)赤いパルサーに乗っていた》などが挙げられると指摘。最後2週にわたり、この条件にピタリ当てはまる男、浜口啓之(仮名)とのインタビューを掲載した。最終回のタイトルは〈あなたが「21面相」だ〉-。

この浜口が、つまり黒川氏。「計3度取材を受けました」と続ける。

黒川博行「最初は去年の暮れぐらいにボクの作品(処女作「二度のお別れ」)と事件に似ている部分があるから話を聞きたい、と。7月に2度目の取材を受けたあたりでおかしいと思っていたら、9月の最後の取材ではもう犯人扱い。父親が6000万円のマンションを無借金で新築したがその原資はどこからきたとか、以前ダイエーに勤めていたこととか、妹の家や町工場をやっている親戚宅を訪ねたとか、『黒川さんの引っ越し先は犯行現場にすべて近いですね』など質問を当ててきた」

「揚げ句、『最終2回分はご不快に思われるような原稿になるかも知れませんが、これが連載の結末です』と言うから、『もしボクを犯人にするつもりなら、実名で書けば』言うたら、『やっかみがあるから』と拒否。かい人21面相と知れたら、たくさんお金を持っていると周囲に知られて危ない可能性があるという意味らしい。そんなアホな」

中学校長と教諭という公職にある妹夫婦が一味のように書かれた箇所もあり、激怒した黒川氏は同誌編集人の処分などを求めて編集人本人や講談社幹部らに抗議した。

「今月に入って、講談社や大阪府内の自宅で連載を担当したデスクや編集人、その上司らと会いました。11日に会ったデスクは『深く陳謝します』と頭を下げながら、『今後出版予定の岩瀬さんの単行本については一部分訂正して出しますので、提訴を取り下げてください』と言うのです」

その翌日、自宅を訪ねてきた編集人も「申し訳ありません」と謝罪したが、今後の具体的な対応については回答なし。仮名ながら、あまりにひどい内容だとして、名誉棄損と住民票を不正に取られた保有個人情報開示違反での提訴に踏み切るつもりという。

ダイエーでの勤務実態や生家の無借金の建て替えなど事実関係としては正しい記述が大半ではある、と黒川氏。ただ、当時乗っていた赤いパルサー・エクサはスポーツカータイプで、記事中に犯行現場で目撃された車としてマル秘資料から抜粋されていた『ニッサン・パルサー、赤色2ドア、ハッチバック式』とはシルエットが違うなど、事実誤認も多いという。

パルサー・エクサ

結局、この連載は犯罪史に残る未解決事件の真相に迫ったのか。事件発生当初に捜査に携わった大阪府警の元捜査員は「黒川さん...聞いたことないなあ」とポツリ。新聞記者、ジャーナリストとして長く事件を取材し続けた大谷昭宏氏(66)も「少なくとも私の取材の中で黒川さんの名前を聞いたことは一度もない」と前置きしてこう話す。

「去年かな。岩瀬さんが訪ねてきて重要な取材先をいくつか紹介しました。地味ながらきっちりしたものを書かれる印象があったんですが、今回に関してはそこ(黒川氏)に(結論を)持っていくか、という印象。実は先ごろ放映されたNHKスペシャル(未解決事件File01グリコ・森永事件)にも協力したのですが、あれだけ人とお金をかけて凄い取材力を発揮したNスペでも黒川さんのクの字も出ていないですからねぇ」

夕刊フジでは週刊現代の鈴木章一・編集人に記事掲載の意図、黒川氏が名誉棄損で訴訟を検討していることについて見解を求めたが、編集部名義で「現時点で申し上げることは何もありません」と返ってきただけだった。

【グリコ・森永事件】

1984年3月18日夜、江崎勝久・江崎グリコ社長が兵庫県西宮市の自宅から入浴中に拉致され、現金10億円と金塊100キロを要求される誘拐事件が発端。江崎社長は約65時間後に大阪府茨木市内の水防倉庫から自力で脱出した。犯人グループは丸大食品、森永製菓、ハウス食品なども脅迫。同年10月から兵庫など4府県、翌85年2月には東京と愛知でスーパーなどに「どくいりきけん」などのメモを張った青酸菓子をばらまいた。この間、「かい人21面相」を名乗る犯人グループから挑戦状などがマスコミなどに届いたが、同年8月「くいもんの会社いびるのもおやめや」と終結宣言。警察は、捜査員が目撃した「キツネ目の男」などを公開したが、2000年2月までに計28件の事件すべてが時効となった。

■くろかわ・ひろゆき

愛媛県今治市出身。1973年京都市立芸術大学卒。美術教師を経て、84年「二度のお別れ」で第1回サントリーミステリー大賞佳作に入選し、作家デビュー。86年「キャッツアイころがった」で第4回の同賞大賞。96年「カウント・プラン」で第49回日本推理作家協会賞を受賞した。代表作に直木賞候補作「疫病神」「国境」など。

[zakzak]
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20111018/dms1110181545010-n1.htm

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