本作は横山秀夫の人気小説を原作とする刑事ドラマ。瀧は昭和64年に起きた時効寸前の少女誘拐殺人事件についてマスコミに説明する広報官を演じる。
大河ドラマの『龍馬伝』、『軍師官兵衛』、朝ドラの『おひさま』、『あまちゃん』(すべてNHK)に出演し、大ヒットしたディズニーアニメ『アナと雪の女王』では、喋る雪だるまのオラフの声優を担当したりと、近年のピエール瀧は俳優として活動の幅を大きく広げている。
なぜ、ピエール瀧は俳優としてここまで愛されるのだろうか。
ピエール瀧は石野卓球とともに電気グルーヴに所属するミュージシャンだ。結成当初はラジオ番組の「オールナイトニッポン」を筆頭に、バラエティ番組にも出演するお笑いに理解のあるミュージシャンという立ち位置だったが、アルバム「VITAMIN」の発表以降、石野卓球はミュージシャンの活動に専念するようになり、逆にテレビ出演等の芸能活動は、ピエール瀧が担当するようになっていった。
瀧は、「ポンキッキーズ」を筆頭に多数のバラエティ番組に出演し、映像制作、ゲームソフトのプロデュース、漫画原作など、その活動は多岐に渡っている。
役者としてテレビドラマに初出演したのは1995年の『カケオチのススメ』(テレビ朝日系)。長瀬智也と永作博美が主演のちょっとHなコメディドラマで、瀧は永作博美の兄役だった。そして、2002年には宮藤官九郎脚本の『木更津キャッツアイ』(TBS系)に出演。シガ二ー小池という詐欺師風の男を演じていた。
会話の中にサブカルチャーネタがふんだんに盛り込まれたクドカンドラマに出演したことからもわかるように、当時の瀧が映画等で演じる役柄はタレント・ピエール瀧のイメージをなぞるような、胡散臭いおじさんが多かった。
そんな中、俳優としての実力が大きく注目されたのは樋口真嗣監督の『ローレライ』だ。本作で瀧は、潜水艦の掌砲長を演じたのだが、元野球部という体育会系の血筋もあってか、今時こんなに生粋の帝国軍人を演じられる男がいたのか。と驚かされる見事なハマり方だった。
『64(ロクヨン)』で主役に起用された理由について「昭和顔だったからだとプロデューサーに言われた」と、瀧は記者会見で語っていたが、『ローレライ』と山崎貴監督の『ALWAYS 三丁目の夕日』で氷屋のおじさんを演じたことで、役者としての幅を大きく広げた。
近年、大河ドラマと朝ドラの出演が続いているのは、この二作がきっかけだろう。そして、ピエール瀧の現時点でのベストアクトは白石和彌の映画『凶悪』で演じた元暴力団の死刑囚だろう。
>巨体と強面の外見を活かした瀧の演技は犯罪の相棒であるリリー・フランキーと共に不気味な存在感を放っていた。
それにしても俳優・ピエール瀧の存在感はどこから生まれたのだろうか。
ヒントは電気グルーヴにおける瀧の役割にある。
電気グルーヴの前身バンドである「人生」の頃から瀧は楽器を弾かない(あるいは、弾けない)ミュージシャンだった。その代わり、着ぐるみで登場するといった様々なパフォーマンスで客席を盛り上げることを得意とした。
そのため、海外ツアーをした際に電気グル―ヴの写真が掲載される時はいつもケンタウロスやインベーダーの恰好をした瀧の姿であった。
動きが少ないため、ビジュアルが地味になりがちな打ち込み系のグループでありながら電気グルーヴのライブは、華やかでエンタメ性が強い。
それは毎回話題となるPVにしても同様だ。音楽だけではフォローできないビジュアル面から電気グルーヴの世界観を構築する際にピエール瀧が果たしてきた役割は実に大きい。
また、「UFO」や「KARATEKA」といった初期のアルバムには、やる気のないサラリーマンや、夢ばかり見てるが努力を全くしないフリーターといった、凡庸な人間を突き放した視点で歌う歌詞が多かった。そういった歌は「がんばれば夢はかなう」と歌う90年代のJ・POPの中ではきわめて異例のシニカルな笑いに満ちていた。
「誰だ!」が収録された「ORANGE」の殺伐とした世界観は完全に『凶悪』と地続きであり、電気グルーヴの歌詞に登場する凡庸な男たちの存在感は、瀧が演じている悲哀のある中年や、胡散臭い詐欺師然とした男たちに通じるものがある。
どんな歌詞であれ、ミュージシャンは歌っている瞬間は歌詞の世界の人々の気持ちを追体験しているものだ。それは俳優が役を演じることに通じるものだと言える。
だから、電気グルーヴの歌詞世界の住人たちは、間違えなく瀧の中に存在する。電気グルーヴという劇団の看板役者であり続けたからこそ、ピエール瀧は俳優として成功できたのだ。
[引用/参照:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150414-00010002-realsound-ent]
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