医療現場からの提言

2016年

vol.12 不適切な自己判断と「残薬」

病院で処方された薬を飲んでいましたが、症状が良くなったので自己判断で飲むのをやめ、薬が余ってしまいました。どうすればよいのでしょうか?

森本:

ニュースなどで「残薬」という言葉を聞いたことがあると思います。処方された薬が決められた通りに使われず、患者さんの手元に大量に残されている場合にこう呼ぶことがあります。「残薬」はさまざまな理由で発生しますが、たとえば患者さんが自分で「薬が合わない」「多すぎる」などと判断して決められた通りに使用しない場合もあるでしょう。

また、うっかり忘れていてたくさん余らせてしまうこともあるかも知れません。

「残薬」については「医療費の無駄遣い」と指摘されることもあるようですが、医師の立場からは少し違った見え方がします。

お医者さんはどのように考えているのですか?

森本:

医師は、患者さんを診察する際に「○○さんはこの薬を使ってこの症状なのだな」と理解し次の薬やその後の治療方針等を決めます。この様な状況で、もしも医師が気付かないまま「残薬」を作り出すような薬の使い方をしていたらどうなるでしょうか。医師は、患者さんに処方している薬を「量が足りない」「種類が合っていない」等と判断し誤った治療を行うかも知れません。

またその反対の場合も考えられます。患者さんは何とかよくなりたいと思うあまり自分の症状を強調し過ぎたり、心配のあまり他の医療機関で並行して治療を受けたりすることがあります。これも、「残薬」を作り出したり、不必要な薬を使用したりすることに繋がる可能性があります。

やはり分からないこと、心配なことはお医者さんに聞くことが大事ですね。

森本:

薬物療法において「薬」は主役ではありません。薬物療法という治療法は、患者さんの体質や生活習慣などを考慮してその人だけの治療を総合的に作り上げていくものなのです。人のうわさやマスコミ等から得られる情報に振り回されるのではなく、信頼できる医療者との間に何でも相談できる関係を築くことが何よりも大切です。

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