地域医療ニュース
千葉市の医療について考える連続シンポジウム第2回
「千葉市の医療の“これから”を考えよう ?超高齢社会を乗り切るために?」が開催
2013. 04.04 文/梅方久仁子
地域医療について考える千葉市の連続シンポジウム第2回が、平成25年2月16日に千葉市総合保健医療センターにて開催された。寒風の中、数百名の医療関係者や市民が集まり、熱心に講演に耳を傾け、意見交換を行った。その状況をリポートしよう。
「人生の最後を在宅で」という人が増えている
守屋 秀繁氏
連続シンポジウム第2回は、医療の“これから”を考えるということで、在宅医療がテーマだ。
最初に千葉市病院事業管理者・守屋秀繁氏より、「病院でチューブだらけで人生の終末を迎えるよりは、自宅でと考える人がほとんどだと思う。人生の最後を有意義に過ごせるように、ぜひ今日の機会を役立ててほしい」と挨拶があった。
次に、千葉大学医学部附属病院高齢社会医療政策研究部客員准教授・井出博生氏より、趣旨説明が行われた。
今後は高齢化率が上昇し、将来30%を越える見込みだ。特に2020年以降は75歳以上の後期高齢者が多くなり、医療が必要な人が増えてくる。
今、在宅医療が注目されるポイントは3つある。1つ目は、意識の問題。最近在宅医療の認知度が高まり、「将来は自分も在宅で」と思う人が増えている。2つ目は、病床数の問題。千葉市の入院患者数は2010年には約5300人で病床数は約7000床と余裕がある。しかし、2025年には入院患者数が7000人台後半となり、病床数が不足する。3つ目は、かかりつけ医の問題。普段からかかりつけ医と信頼関係を築いていると、歳をとって外来に通えなくなっても、かかりつけ医に在宅で診続けてもらいたいという人が出てくるかもしれないとのことだった。
人生の最後をどう過ごすのか
大岩 孝司 院長
次に、さくさべ坂通り診療所・院長の大岩孝司氏による基調講演が行われた。その概要を紹介しよう。
さくさべ坂通り診療所では、がん終末期の患者さんの緩和ケアを専門に行っている。医師2名、看護師4名、事務2名(非常勤1)、ケアマネジャー1名の9名で年間約100名を診療し、そのほとんどを自宅で看取っている。
一般にがん患者の最期は痛くてつらく、もう何もできないというイメージがあるが、実はそうではない。半数以上はもともと痛みを感じないし、痛みがある人でも、不安や心配を取り除いて心身がやわらぐと薬でコントロールできる。
病院では寝たきり状態だった人が、大岩医師たちの診療を受けるようになってから、飛行機に乗って九州に墓参りに行ったり、ゴルフ場に出かけたりした例がたくさんある。居間のこたつで家族と過ごす、好きなお酒を飲むといった生活も、病院では無理だが自宅ならできる。がんといっても、そのとき残っている力を最大限発揮することで、精一杯の時間を過ごすことができる。
自宅では、患者さんがどう過ごすかを自分で選択する。その生活を支えるには、医師、看護師のほか薬剤師、ケアマネジャー、介護士など多職種の関わりが必要だ。
最近の機器は軽量化していて、病院の病室でできる処置は、ほぼ自宅でもできる。介護者が高齢だったり、1人暮らしで介護者がいなかったりしても、訪問看護やホームヘルパーでカバーすれば、在宅で看取れる。
病床が足りないから代わりにというのではなく、自身の人生の最後をしめくくるにあたって、どう過ごすのか。在宅が大きな選択肢になりうることを理解してもらえれば幸いだ。