ゴッド・ファーザー パートⅡ
パートⅠは、ビトーがすでに大物のドンとなっており、彼の三男マイケル(アル・パシーノ)が、本人の意思に反して、マフィアの後継者となっていく話である。
パートⅡはビトー(オレステ・バルディーニ)が9歳の時、マフィアのボス、チッチオ(ジョー・スピンネル)に殺され、シシリーから船に乗ってアメリカに渡ってくるところから物語は始まる。
自由の国アメリカの地を、船から見ているビトーの目が印象的だ。しかし、希望を胸に抱いた若者が知った現実は、厳しかった。パン屋の店員の職にしか就けず、その職も街を牛耳るボス、ファヌッチ(ガストン・モスキン)に彼の甥っ子を無理やり職に就かすよう店主が強要され、去ることになった。
やがてビトーは、街の祭りの日にファヌッチを殺害し、徐々にのし上がっていくのであった。若い頃から彼にはリーダーシップがあり、街の人々にも尊敬されていた。
パートⅡは若き日のビトーと、父の後を継いでファミリーのドンとなった息子マイケルの現在が、オーバーラップし、場面が次々変わっていく。パートⅠも見ていないと時間の流れがつかみにくい。
しかし、この場面切り替えの中に、親子の絆を感じる。息子は、偉大な父の後継者としてのプレッシャーを常に感じながらも、ファミリーをまとめていく。時には非情なまでに、裏切りは許さない。マフィアのファミリーとは、血の通った家族だけを指すのではなく、仲間・同朋、子分たちも含めた広い意味での組織なのだ。それを守るためには、女房であっても兄弟であっても切り捨てる。
マイケル演じるアル・パシーノの表情が、厳しく険しく変わっていく演技が見事だ。圧巻は、マイアミの大ボス、ハイマン・ロス(リー・ストラスバーグ)を追い詰めていく場面だが、派手な銃撃戦はない。
ゴッドファーザーには、他のギャング映画と違い、派手なドンパチやカーアクションとかはない。
にもかかわらず、いやだからこそ、現実感を感じ、マフィアの恐ろしさがヒシヒシと伝わってくる。派手なアクション映画は、見ている時や終わった直後は、その爽快感やスリルを感じるが、あとに残るものがない。
ゴッドファーザーには、いつまでも深く心に残るものがある。それは、ビジネスに賭ける男の姿だったり、息子を想う愛情、仲間との信頼関係・友情、裏切りや妥協をを許さない強さだったりする。甘い男女の恋愛感情は、あまり描かれていない。恋愛よりも大切な物。まさに男の世界だと思う。
DVDだと パートⅠとパートⅡに分かれているが、LDには、時系列を追ったゴッドファーザー サーガが出ている。ストーリーだけを追うなら、こちらの方が流れがわかりやすい。こちらを観たあとに、分離したDVDを観ることを勧める。DVDには、場面変化の面白さ、カラワークの妙味を感じる。
ラスト、初老に達したマイケルが、一人湖畔の椅子に座り、亡き父ビトーの愛情に満ちた偉大な生涯(彼は自分の妻も大事にし、家族を守った)を想い、自分は父のようにできなかった(組織は父より大きくしたが)自分の孤独に胸を痛める姿が、実に印象的であった。
薄っぺらな友情や恋愛が、まかり通っている今の世の中、若者に観て貰いたい”男”の作品である。
自分が当時、一番好きだったデ・ニーロとアル・パシーノの共演というのもたまらない。この二人には、本物の”男”を感じさせる。
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