「忘れるくらいなら、笑ってほしい」(あとがきより)
阪神・淡路大震災から16年。あの震災をユーモアで切り取った名著「大震災名言録-「忘れたころ」のための知恵」。1997年に出版後、副題を「次の災害を乗り越えるための知恵」と変更。知恵の森文庫、明月堂書店と版元を渡り歩き、現在も刊行中です。
著者の藤尾潔さんは、神戸で生まれ育ち、ソニーに入社したのに退職、ライターになった奇特な方。独立直後に震災で被災。本書を書き終えて出版社に持ち込みを続けるも連戦連敗。時には「まったく笑えませんでした」と一文書き添えて送り返されることも。この時点で本人がネタ満載です。
ちなみにAmazonでは、在庫状況が「通常2~4週間以内に発送します」と表示されますが、版元さん曰く「在庫はあるので、注文があれば、すぐ出荷しますよ」とのこと。直接版元まで買いに行って、ついでに聞いてきました。皆さんも安心してポチってください。もちろん書店で購入したり、書店経由での注文もOKですよ。
内容については、これまで何度もメディアで取り上げられて、小耳に挟んだ方も多いかと思います。阪神・淡路大震災で見聞された「ネタ」の数々。藤尾さんはボランティアなどを続けるかたわら、それらを一つずつ拾い集め、異色の「お笑い震災ルポ」として出版。皮肉にも東日本大震災で、再注目されているのでした。
なにせ、人を笑わせるのが何よりも好きな関西人。僕も子どもの頃、10歳まで大阪で育って、大阪の大学に通ったので、ちょっとはその感覚がわかります。どうしようもない惨劇に見舞われたとき、人から同情されると、かえって傷つく。逆にそれをネタにして、他人から笑ってもらうことで、気持ちが救われるんですよね。
本書にも、そんな彼らが家財資産と引き替えに得た、250個以上の「至極のネタ」が詰まっています。ちょっと紹介すると、
「震災当初、テレビの現地レポーターは当然下調べなどする余裕もなくぶっつけ本番で、『この倒壊家屋は……アッ犬がいます、犬だけ助かったみたいですね……』
と中継しているさなか、横から
『ワシ生きとるわい』
と家人につっこまれていた。」
これ、三回転宙返り半ひねりして、カバーイラストのモチーフにもなっています。イラストレーターは、いしいひさいち氏。装丁は南伸坊氏。眉をひそめながら表紙をめくった人を、ウッと唸らせる推薦文に田辺聖子氏。バックを固める最強の布陣です。
もう一つだけ、喫茶店で読みながら思わず笑ってしまったのが、
「『おれはよめさんの名前を呼んだ。…