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みんなで笑ったらいい。『大震災名言録―次の災害を乗り越えるための知恵』

2011年5月10日 10時00分 (2011年5月13日 04時40分 更新)

『大震災名言録―次の災害を乗り越えるための知恵』藤尾潔 /明月堂書店
阪神・淡路大震災から16年。今だからこそ読みたい

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「忘れるくらいなら、笑ってほしい」(あとがきより)

阪神・淡路大震災から16年。あの震災をユーモアで切り取った名著「大震災名言録-「忘れたころ」のための知恵」。1997年に出版後、副題を「次の災害を乗り越えるための知恵」と変更。知恵の森文庫、明月堂書店と版元を渡り歩き、現在も刊行中です。

著者の藤尾潔さんは、神戸で生まれ育ち、ソニーに入社したのに退職、ライターになった奇特な方。独立直後に震災で被災。本書を書き終えて出版社に持ち込みを続けるも連戦連敗。時には「まったく笑えませんでした」と一文書き添えて送り返されることも。この時点で本人がネタ満載です。

ちなみにAmazonでは、在庫状況が「通常2~4週間以内に発送します」と表示されますが、版元さん曰く「在庫はあるので、注文があれば、すぐ出荷しますよ」とのこと。直接版元まで買いに行って、ついでに聞いてきました。皆さんも安心してポチってください。もちろん書店で購入したり、書店経由での注文もOKですよ。

内容については、これまで何度もメディアで取り上げられて、小耳に挟んだ方も多いかと思います。阪神・淡路大震災で見聞された「ネタ」の数々。藤尾さんはボランティアなどを続けるかたわら、それらを一つずつ拾い集め、異色の「お笑い震災ルポ」として出版。皮肉にも東日本大震災で、再注目されているのでした。

なにせ、人を笑わせるのが何よりも好きな関西人。僕も子どもの頃、10歳まで大阪で育って、大阪の大学に通ったので、ちょっとはその感覚がわかります。どうしようもない惨劇に見舞われたとき、人から同情されると、かえって傷つく。逆にそれをネタにして、他人から笑ってもらうことで、気持ちが救われるんですよね。

本書にも、そんな彼らが家財資産と引き替えに得た、250個以上の「至極のネタ」が詰まっています。ちょっと紹介すると、

「震災当初、テレビの現地レポーターは当然下調べなどする余裕もなくぶっつけ本番で、『この倒壊家屋は……アッ犬がいます、犬だけ助かったみたいですね……』
と中継しているさなか、横から
『ワシ生きとるわい』
と家人につっこまれていた。」

これ、三回転宙返り半ひねりして、カバーイラストのモチーフにもなっています。イラストレーターは、いしいひさいち氏。装丁は南伸坊氏。眉をひそめながら表紙をめくった人を、ウッと唸らせる推薦文に田辺聖子氏。バックを固める最強の布陣です。

もう一つだけ、喫茶店で読みながら思わず笑ってしまったのが、

「『おれはよめさんの名前を呼んだ。

ライター情報

小野憲史

ゲームジャーナリスト/フリーライター。「ゲーム批評」編集長を経て2000年よりフリーランスで活動中。業界レポート・インタビュー・コラム・レビューなどを発表。連載『小野憲史のゲーム評評』(gamebusiness.jp)など。著書に『ニンテンドーDSが売れる理由』『ゲームニクスとは何か』(共著/構成協力)がある。
ツイッター/@kono3478
ブログ/日々つれづれ

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