屋敷町の風格漂う一番町。重厚なマンションが立ち並びフレンチの店もある。店主の佐藤豪さんは、英国大使館の元料理人。エリザベス女王の会席にも携わり、「料理に人生を賭けよう」と２６年前、麹町に店を開いた。姉妹店る・ぴあのでは、国産野菜をいかしたランチを充実させた。大使館で覚えたライスプディングの米とスタッフには、故郷の「山形産」を採用している。
　英国大使館が横浜から現地に移った明治初期、イギリスはビクトリア時代だった。「当時のカメラは工芸的で美しい」「ハワイアンジュエリーの起源もその時代」「米国では今も当時の装飾が人気」と訪ねた先々で、偶然、華々しい歴史の一端に触れられた。
　上質な彫金のハワイアンジュエリーを販売するエアルームでは、ビクトリア女王が着けハワイの女王にも広まった黒のエナメルで言葉を施す腕輪も扱う。ビスクドールも作るギャラリーミニヨンには、風俗画としても美しい１９世紀末ごろのカードなど、装飾を凝らしたビクトリア調の品々であふれている。
　女子校にもゆかりの深いかいわいで、刺しゅうや染め織りなどのクラフトにも出合い、心躍る懐かしい感情に満たされた。（武居智子）