古き湯治場、うたせ湯で安らぐ
山奥に造られた一本のつり橋に全国から人が殺到しているという。橋を渡るために順番待ちの長い列ができるほどの人気で、途中の道もおかげで大渋滞。普段20分ほどの道のりが、橋にたどり着くまでに数時間かかるのも珍しくないそうだ。いったいどんなつり橋なのか、ちょっぴり気になり現地へ向かった。
話題のつり橋が架かるのは、大分県九重町の鳴子川渓谷。寒い時期なので、さすがに人影は少ないだろうと思っていたら、駐車場には大型バスが連なり、多くの観光客がつり橋を目指してやってくる。他府県ナンバーの車もちらほら見られるし、どうやらうわさは本当のようだ。
全長390メートル、川底からの高さが173メートル、総工費約20億円で昨年10月末に完成したつり橋は、歩行者専用の橋としては日本一のスケールを誇るという。町の活性化の願いも込めて「九重“夢”大吊(つり)橋」と名付けられた。
冷たい北風を受けながら橋を歩いた。鋼鉄のワイヤでつり下げられた橋はがっしりとした安定感を感じさせる。歩きやすく設計されているので、怖くて足がすくむ心配もない。しかし、歩くと多少揺れる。風が吹いてもやはり揺れる。見た目は頑丈そのものだが、つり橋としての「演出」も忘れてはいないようだ。