Akira Banzai, President, JA-ZENCHU (Central Union of Agricultural Co-operatives)
JA全中の萬歳章会長が、日本のTPP参加問題の基本的な考え方を述べた後、平成26年度以降の活力ある農業・地位づくりに向けた提言案を発表した。TPP交渉については、多様な農業を可能にする貿易ルール確立のために、センシビリティ品目については、
適切な関税レベルを残すよう主張を続けていくとした。TPPの本質が変わらないのであれば、断固反対する立場は変わらない、と。
司会 村田泰夫 日本記者クラブ企画委員
JA全中のホームページ
http://www.zenchu-ja.or.jp/
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/05/r00025680/
萬歳章 JA全中会長 2013.5.10
Akira Banzai, President, JA-ZENCHU (Central Union of Agricultural Co-operatives)
JA全中の萬歳章会長が、日本のTPP参加問題の基本的な考え方を述べた後、平成26年度以降の活力ある農業・地位づくりに向けた提言案を発表した。TPP交渉については、多様な農業を可能にする貿易ルール確立のために、センシビリティ品目については、
適切な関税レベルを残すよう主張を続けていくとした。TPPの本質が変わらないのであれば、断固反対する立場は変わらない、と。
司会 村田泰夫 日本記者クラブ企画委員
JA全中のホームページ
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日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/05/r00025680/
チョケワンカ ボリビア外相 2013.5.8
David Choquehuanca Céspedes, Foreign Minister, Bolivia
ボリビアのチョケワンカ外相が、対米関係や国内の先住民族の権利などについて話し、記者の質問に答えた。
司会 中井良則 日本記者クラブ専務理事・事務局長
通訳 丸山啓子(オルビス・インターナショナル)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/05/r00025747/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年6月号に掲載)
我々の生き方は「VIVIR BIEN」
南米の反米勢力の中でボリビアのモラレス政権はユニークだ。欧米の世界観に抗し、先住民の権利や環境の大切さを唱える。2009年に国名をボリビア多民族国と改名した。同年、国連に提案し、ボリビアで地球を「母なる大地」と呼ぶのにちなんで、4月22日のアースデーを「国際母なる地球の日」に変えさせた。
政権が発足した2006年からモラレス大統領の右腕として活躍するのがこの人だ。先住民アイマラ民族の出身で、記者会見には普段着のカーディガン姿で登場した。
「ボリビアは歴史的な変革の途上にあり、資本主義や社会主義を乗り越えるモデルを構築しようとしている。西欧の開発モデルは不平等と危機を生んだ。我々自身の宇宙観を取り戻し、人間は大いなる自然の一つだと自覚すべきだ。我々は人間の生活を重視し『VIVIR BIEN(良く生きる)』を掲げる」
表情を変えないまま、先住民の用語を交えつつ、学者のように語る。
「母なる大地がもたらすミルクが水だ。母なる大地の上で、我々はみな兄弟だ。対話によって知り合い、学び、尊重し合わなくてはならない。日本は技術を持ち、我が国は天然の資源がある。補完的な関係を築こう」
対米関係について質問すると、「互いに尊重し、互いの相違を認めよう。(米国は)それぞれの国の法律を尊重すべきだ」と述べ、「米国と補完と均衡の関係を保ちたいが、介入があれば排除する」と断言した。5月初め、内政をかく乱したとして米援助機関を国外追放したばかりだ。
大学の卒論テーマは先住民の権利だ。1970年代の軍事独裁時代は民主化運動、さらに農民運動、先住民組織の活動家だった。議員経験もないまま、いきなり同国初の先住民出身の外相に就任した。その印象は政治家というより哲学者に近い。
朝日新聞元中南米特派員
伊藤千尋
アリアナ・ハフィントン ザ・ハフィントン・ポスト創設者 2013.5.8
Arianna Huffington, the chair, president, and editor-in-chief of the Huffington Post Media Group
※同時通訳です。日本語は右チャンネル、英語は左チャンネル
English : Choose a left channel
朝日新聞との日本版開設のために来日した、ザ・ハフィントン・ポスト創設者で編集長のアリアナ・ハフィントン氏が会見した。提携に踏み切った最大の理由は、ニュースとブログやソーシャルメディアを融合させた独自モデルを使い、読者が意見を述べ、議論に参加するフォーラムを築くことにある、と述べた。
司会 瀬川至朗 日本記者クラブ企画委員
同時通訳 西村好美、宇尾真理子(サイマル・インターナショナル)
ハフィントンポスト日本版のウェブサイト
http://www.huffingtonpost.jp/
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/05/r00025749/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年6月号に掲載)
新旧メディアのハイブリッド化で「黄金時代」を
世界で24億人が利用するインターネットは、社会や経済の隅々にまで入り込み「破壊と創造」を続けている。メディア分野も例外ではない。
4月にサービス開始10周年となったアップルの音楽配信「アイチューンズ・ストア」は典型例だ。CD収録曲のばら売りが一般化し、音楽の新しい聴き方が広がった半面、CDは売れなくなりレコード会社の収益力は低下した。店じまいする販売会社もあった。ネット化の波をかぶった産業に生じる構造変化を物語る。
アイチューンズ誕生から2年後、2005年に米国で始まったニュース・ブログサイト「ザ・ハフィントン・ポスト(ハフポスト)」が朝日新聞社と組み日本に進出した。創設者のアリアナ・ハフィントン・プレジデント兼編集長は「伝統的なメディアと新しいメディアによるハイブリッド型で、ジャーナリズムは黄金時代を迎えるのではないか」と語ったが、警告も忘れなかった。「デジタル版に適応しないと生き残れない」
ここで「デジタル版」が、単に紙媒体のニュースを電子媒体に載せ替えるといった無邪気な策を意味しないのは言うまでもない。ネットの普及で人びとのメディア消費のありようは一変した。例えば記者がネタを集めて発信したニュースは読者の手によってソーシャルメディア上の「ネタ」となり、ときに容赦ない評価とともに瞬く間にデジタル回覧される。
ハフポストの特徴をハフィントン氏は「読者中心モデル」と語り、一方的なニュース供給ではなく、読者も参加する基盤とした。「プレゼンテーション型からパーティシペーション型への移行」が起きているという。
コンテンツ自体のクオリティーが高いことはもちろん、テクノロジーを駆使して便利さや楽しさまで備えた「しくみ」を編み出さなければ、知的な刺激の伴うメディア体験を求める読者の心に響かない。「黄金時代」を引き寄せるには相当の発想の転換がいるだろう。
日本経済新聞編集委員
村山恵一
達増拓也 岩手県知事 2013.4.27
Tasso Takuya, Governor of Iwate prefecture
岩手県の達増拓也知事が、「復興の加速のために~現場からの提案~」と題して、話した。岩手県の人的被害の状況(13年4月10日現在)は、死者4,673人、行方不明者1,151人、仮設住宅で避難生活を続けている人は約38,000人おり、いまなお非常時であると述べた。
復興での障壁を突破するために国が行うべきは、大震災復興特例ともいうような大きな「改革」とオールジャパン的な「国家プロジェクト」として復興を推進していくことにある、とした。クラブのゲストブックには、「地元の底力+様々なつながりの力=復興の力」と記した。
司会 中井良則 日本記者クラブ専務理事・事務局長
岩手県のウェブサイト
http://www.pref.iwate.jp/
達増知事が大震災後の2011.6.2に会見した際のページはこちら。
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2011/06/r00022766/
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025655/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
今なお非常時 復興加速へ土地利用手続きが最大の課題
「復興の加速のために~現場からの提案」と題してスピーチした。復興加速の「障壁」となっている主な課題を挙げ「国が行うべきは改革」と注文した。
「現場の最大の課題」に土地利用手続きの長期化がある。「一人の相続手続きが進まないことで、何千人の方が何カ月、何年と仮設住宅暮らしの長期化に迫られる」との言葉は切実で、市町村が管理権限を持つ制度創設や法改正を訴えた。
マンパワー不足については、これまで国の誘導なく自治体の自主的な判断で職員派遣を行ってきた日本の取り組みと、大規模な職員展開で政府機関が主体的に被災者支援に取り組む米国の「連邦緊急事態管理庁(FEMA)」を比較して「日本では支援の窓口は市町村だが、政府が直接的に被災者支援に乗り出すことも必要」と提案した。
岩手県では地元の各業界団体が復興について協議し、前を向いて歩を進めてきた。知事の言葉からは「地元の底力」に自信がみなぎる。
しかし、支援のつながりがあってこその復興。「経団連や経済同友会、建設関係、スポーツ界なども含めて、政府が司令塔になってもっともっとオールジャパンの力をコーディネートしてもいいのでは」と復興庁のあるべき姿を語る。
近ごろの国政の動きについては苦言を呈した。「地域資源を最大限活用する内需拡大型の構造改革の考え方が復興の基本。TPP(環太平洋経済連携協定)は復興に逆行する」、推進基本法案の提出が予定される道州制は「復興に関してはうまくいくイメージがまったく湧かない」、アベノミクスは「あり余るお金を復興が加速するような投資などに使ってほしい」。
震災から3年目を迎え「今なお非常時」の被災地の声が会場に重く響いた。
岩手日報東京支社編集部
金野 訓子
マラリア・ノーモア・ジャパン 2013.4.25
Malaria No More Japan
4月25日の世界マラリア・デーにあたり、「マラリア・ノーモア・ジャパン」の神余隆博・理事長ならびに水野達男・専務理事が会見した。
「世界人口の約半分がマラリアの脅威にさらされている。マラリア撲滅は日本企業、日本人も直面する課題である。国内での啓蒙活動などを進めていきたい」と、今後の活動などについて述べた。
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025651/
司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)
マラリア・ノーモア・ジャパンのウェブサイト
http://www.mnmj.asia/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
毎分1人が死亡 マラリアのない世界へ日本の貢献を
マラリアはエイズ、結核と並び世界の3大感染症とされており、年間の死者数は65万人に達するという。平均すると毎分1人が世界のどこかでマラリアのために亡くなっていることになる。しかも、その多くが5歳未満の子どもである。
マラリア・ノーモア・ジャパンは昨年10月に発足した特定非営利活動法人だ。外交官の経験も豊富な神余理事長から組織の特徴として、①日本で唯一、マラリアに特化したNPOである②マラリアのない世界を目指して活動する③啓発と政策提言活動を日本国内で展開する、との説明があった。 住友化学が開発した殺虫剤入りの蚊帳の普及を通して、アフリカのマラリア予防対策にかかわってきた水野専務理事からは、マラリアには予防の手段も治療薬もあり、国際社会が本気で取り組めば克服可能な感染症であることが報告された。
日本国内では現在、マラリアの発生はほとんどなく、「マラリアのない世界」を先取りした国となっているが、その分、マラリア対策は軽視される傾向が強い。しかし、アフリカやアジアのマラリア流行国には日本から毎年、多くの人が訪れており、慣れない環境のもとでは地元で暮らす人よりも高い感染のリスクにさらされることになる。また、日本の貿易相手国の中には、マラリアによる経済的な損失を克服できれば、大きな発展が望める国も少なくない。
さらに、先ほどの蚊帳の普及などを通し、途上国のマラリア対策への日本の貢献も国際的には高く評価されている。国内で啓発活動を推進する民間組織の存在は、その意味でも重要だろう。会見はWHO(世界保健機関)が提唱する世界マラリア・デー当日に行われ、潘基文国連事務総長がその日、発表したメッセージの日本語訳も資料として配布された。
企画委員 産経新聞特別記者
宮田 一雄
シリーズ企画「中国とどうつきあうか」① 香田洋二 元海上自衛隊自衛艦隊司令官 2013.4.24
Yoji Koda,Vice Admiral,JMSDF(Ret.)
元自衛艦隊司令官の香田洋二氏が、①中国の海洋進出の背景と理由、②朝鮮半島情勢、③尖閣諸島問題について話した。尖閣諸島の警備については、海上保安庁法や自衛権発動の3要件(政府統一解釈)などの制約から、国としての対応に限界がある、とした。
司会 日本記者クラブ企画委員 倉重篤郎(毎日新聞)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025676/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
中国の動向 多角的な分析必要
中国とどう向き合うかは、いまの日本の安全保障を考える上で最大の関心事項だ。その意味で、中国問題をシリーズ企画で扱うことをまずは歓迎したい。
その第一弾である。香田さんは日中国交正常化の1972年に防衛大学校を卒業し、海上自衛隊に入隊。海幕防衛部長や佐世保地方総監、自衛艦隊司令官を歴任した。「18年間を海上で過ごした」という経験を踏まえ、中国の狙いは海軍力の増強にあり、その根拠として国際社会で米国と対等に向き合うための国家目標を達成するため、海洋の利用が不可欠だと説いた。
香田さんは、尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返す中国公船に連日対応している海上保安庁への日本人の理解について「誤った先入観がある」と疑問も投げかけた。海上保安庁法上、海保の任務は「海上の安全および治安の確保」であり、領海・領域の警備ではない。武器使用が制限される中で「法律に書いていない任務を海保に押しつけている。中国が軍を出してこないから救われている」とも指摘し、中国側は自衛隊が出動するまでの「グレーゾーン」に着目するはずだとして、日本政府はそれにどう対応するか決めていないとした。
この点について、防衛省は尖閣を含めあらゆる事態を想定した準備をしているという。だが、内容は公表されることがないため、どこまで万全な態勢になっているかわからない。中国は公船に使うヘリ着艦装置を仏企業から購入するなど、尖閣の実効支配に向けた能力向上を着実に進めている。中国の動向は、他国からの技術支援も含め、多角的な視点から分析する必要がある。
安全保障分野は、表にされないことが多い。それだけに、海自の現場で作戦・運用に長年携わってきた人から話を聞く機会は貴重である。
朝日新聞政治部
倉重 奈苗
「サイバーセキュリティ」⑤ 宮本久仁男 NTTデータ 2013.4.24
Kunio Miyamoto, Senior Expert, NTTDATA-CERT, NTT DATA Corp.
サイバーセキュリティ研究会の5回目。NTTデータ品質保証管理部情報セキュリティ推進室の宮本久仁男・シニアエキスパートが、サイバー攻撃の実態と対策について話した。
攻撃に使われる道具は、古くから流通しているものが多く対策は可能だが、実際はそれができていないことが多いという。また、高度な攻撃は、目的をもち資金も豊富な攻撃者によるものであり、既存の技術だけでは防御が困難だともいう。高度な攻撃に対処できるような卓越した技能をもつ人材が少なく、その育成が今後の課題だと述べ、宮本氏が関わる、セキュリティ・キャンプの取り組みなどについても紹介した。
司会 日本記者クラブ企画委員 杉田弘毅(共同通信)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025568/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
サイバー攻撃対策 技術者不足が課題
米AP通信の公式ツイッターがハッキングされ、「ホワイトハウスで2度の爆発があり、オバマ大統領が負傷した」との偽メッセージが流れたのは、この研究会当日の未明だった。ハッキングの手口はパスワードを盗む「古い技法」とされ、ニューヨーク市場のダウ工業株30種平均が一時150㌦近く急落するなど、社会に与えた影響も大きかった。
3月は韓国の主要テレビ局、銀行のコンピューターネットワークが、サイバー攻撃を受けて一斉ダウンしている。特定日時に始動してシステムを破壊するマルウェア(悪意をもって作成されたソフトウェア)が仕込まれたためとみられ、コンピューターの再起動もできなくなる「新しい技法」による攻撃だった。
宮本氏は、こうしたサイバー攻撃の実態を分析し、攻撃に使われる道具は「使い古されたものが多い」、狙われる脆弱性(セキュリティホール)の大半が「公開され、簡単な対策で防御できる」、ただし、必ず攻撃を成功させたいときは強力な道具が投入されて「使うのも、発見するのにも手間と金がかかる」などと指摘した。
一方、セキュリティ対策に当たる国内の技術者は現在約23万人で、このうち16万人は再教育が必要、さらに2万人超の人材確保も急がれるという。「セキュリティ・キャンプ2013」などさまざまな人材育成イベント、プログラムがあるとはいえ、宮本氏は「新しい技法に対処できる飛び抜けた人材は不足していると感じるが、どの程度必要かすらわからない」とセキュリティ対策のお寒い現状に警鐘を鳴らした。
宮本氏はこの分野で有名な技術者であり、実務を通じて問題を熟知している。だから、具体的に説明できない部分があるのだろう。そんなもどかしさも感じられる研究会だった。
エフシージー総合研究所情報調査部長
三浦 恒郎
グローサー ニュージーランド貿易相 2013.4.24
Tim Groser, Minister of Trade, New Zealand
ニュージーランドのグローサー貿易相が、「日本とニュージーランド:TPPと国際通商政策、われわれはどこに向かっているか」と題して、スピーチをした。TPPをより重要なイニシアティブにするものとして、日本の交渉参加を歓迎する。交渉にあたっては、農業や自動車などのセンシティビティーの分野であっても、貿易自由化の対象から外すことはない、とも述べた。
司会 日本記者クラブ企画委員 実哲也(日経新聞)
通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025686/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
「TPP参加 正しかったと言える日が来る」
環太平洋経済連携協定(TPP)は4月20日、交渉参加11カ国が日本の参加を承認した。会見が行われたのはこの4日後。必然的に話題はTPPをめぐる問題に終始した。
「日本の参加をニュージーランドとして非常にうれしく思う」。グローサー氏は冒頭、日本の決断を歓迎。一方で、「農業や自動車などの分野は何であれ、自由貿易から外すことで対処するものではない」と述べ、米などの重要品目について配慮を求める日本をけん制した。さらに「電気が発明された際、ある種の人がいたら、ろうそくメーカーへの影響を恐れて反対しただろう」と述べ、TPPがもたらす変化を恐れるべきではないことを強調した。
ニュージーランドは農業に対する補助金を廃止したことで知られる。国内では当初「農業を崩壊させる」と強い抵抗があったが、「実際はすべて逆のことが起きた」という。その一例として、国際市場で自国産ワインが高値で取引されていることを挙げ、「高品質なら高価格で取引される。日本の農業にも面白い未来があるはずだ」と楽観的な見方を示した。
ウルグアイ・ラウンドのニュージーランド首席交渉官やWTO(世界貿易機関)大使を歴任し、国際貿易交渉で幅広い経験を持つ。それだけに貿易自由化への熱意は大きいとみられ、会見ではTPPのポジティブな側面ばかりが強調された。だが、日本では農業者を中心にTPPに対する賛否はいまだに渦巻いており、どんな未来が待っているのか不安に思う人も少なくない。「10年後、20年後のアナリストは、『あのときの決断は正しかった』と審判を下してくれることだろう」。その言葉が真実なのか、今後の推移を見守っていきたい。
毎日新聞外信部
金子 淳
アンヘル・グリア OECD事務総長 2013.4.23
Angel Gurria, Secretary-General, OECD
※同時通訳です。日本語は右チャンネル、英語は左チャンネル
English : Choose a left channel
OECDのグリア事務総長が対日審査報告書を発表した。アベノミクスが日本を変えたとして、「三本の矢」の政策に導かれ、日本がさまざま課題を克服し、目標を達成することを確信していると語った。
グリア氏のほか、ランダル・ジョーンズOECDシニアエコノミスト/経済局日本・韓国課長(Randall Jones, Head of the Japan/Korea Desk, Economics Department)と、ケン・アッシュOECD貿易農業局長(Ken Ash, Director of Trade and Agriculture Directorate)も同席した。
司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)
同時通訳 池田薫、西村好美(サイマル・インターナショナル)
OECD東京センターのホームページ
http://www.oecdtokyo.org/
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025649/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
海図なき航海へ アベノミクスへの期待と注文
主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、日本銀行の導入した「異次元の金融緩和」を容認する共同声明を出したばかりだったから、ある程度予想していた。それでも、「胸がワクワクする局面だ。15年間のデフレに終止符が打たれるのではないか。アベノミクスが日本のムードを変えた」という最大級の賛辞には、驚かされた。
もっとも、それを真に受けるわけにもいくまい。賛辞の裏には、なかなか動こうとしなかった過去の日本へのいら立ちが感じられるし、やっと動き出した以上は「ほめて育てよう」との思惑も見え隠れする。
実際に、アベノミクスの評価を盛り込んだOECDの対日審査報告書は、「3本の矢」のうち、金融政策は歓迎しつつも、財政政策や成長戦略には厳しい注文を付けている。グリア氏が身ぶり手ぶりを交えて強調したのも、この点だった。
財政政策については、「最近の進展には期待が持てるが、重大な問題に触れないわけにはいかない」と前置きし、消費税率10%への2段階引き上げを計画通り実施して社会保障など歳出を削減するだけでなく、さらなる増税の必要性を指摘した。
成長戦略についても、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加が他の交渉参加国から認められたことを「お祝いを申しあげたい」と持ち上げたうえで、農業やエネルギー分野、労働市場の改革を促した。
ただ、デフレ脱却の難しさはグリア氏も認める。2%のインフレ目標が2年で達成できなくても、「失敗と決めつけてはいけない。最良のプログラムでも調整は必要だ」と政策スタンスを堅持するよう求めた。
「海図なき航海に乗り出そうとしている」。そんなひと言に、アベノミクスに注がれる期待と今後の険しい道のりが象徴されていた。
読売新聞調査研究本部主任研究員
安部 順一
著者と語る『生きる力 心でがんに克つ』なかにし礼 作詞家・作家 2013.4.22
Rei Nakanishi, Songwriter
陽子線治療によって、食道がんを切らずに社会復帰した、なかにし礼さんが「現代のガン治療と患者の選択」のテーマで自身の闘病生活や陽子線治療に至るまでの経緯を話した。ゴッドハンドと呼ばれる外科の医師からは「切ったほうがいい。切れば治ります」と言う。しかし心臓が悪く手術に耐えられるか不安だった同氏は、別の治療方法はないかとインターネットを駆使して探したところ、陽子線治療を見つけたが、医師たちは誰もその治療法を教えてくれなかった。患者に選択肢が与えられていないのではないか。医師会の階層構造や新たな治療法を報道しないメディアに対する問題提起の会見となった。
司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司(テレビ朝日)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025618/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
がん治療の〝ゴッドハンド〟には頼らない
なかにし礼氏の著書『生きる力 心でがんに克つ』が売れている。昨年2月から6月にかけての食道がんとの闘いの物語である。
声が出にくい、口臭がするといった自覚症状で胃カメラ検査を受け、食道がんのステージⅡの後半と診断される。毎年健康診断を欠かさなかったが、前年は東日本大震災のため健診しなかった。
しかし「最初はゴッドハンドに診てもらえば治るという安易な気持ちだった」。紹介される名外科医に会うと、異口同音に「切れば治る」という。抗がん剤と放射線治療を併用するともいう。食道がんの手術は難しい。切って短くなった食道をつなぐために、腸や胃を剝がして持ち上げる。出血しやすく時間がかかる。「自分の心臓は長い手術や放射線治療には耐えられないと訴えるが、どの医師も切りたい一心だった」という。
そしてある時、トーマス・マンの『魔の山』を思い出し、「突然目覚めた」。「紹介されるままに医師巡りをしていたが、自分の意思で生きる手だてを探していないことに気づいた」というのだ。
それからは手術をしないで治す方法を、インターネットを活用して探し始めた。そして夫人が陽子線療法の存在を見つけた。この陽子線療法というのは、放射線療法と違ってエネルギーを絞ることができ、他の組織に障害を与えない新しい療法だ。この療法を国立がんセンター東病院で受け、死の淵から生還できた。
こんな素晴らしい治療法があるのに、がん治療のゴッドハンドたちはなぜ紹介してくれなかったのか。「日本の医療は伝統に縛られて、新しい医療が進まない」と怒りを訴える。
日本ではがんの治療は、まだ外科医が中心の病院が多い。手術だけでなく、抗がん剤の投与も、放射線の照射も自らやってしまう。最近ようやく欧米のような腫瘍内科医が出始めている状況だ。なかにし氏の話は、自分の死の淵からの生還物語から日本の医療批判に及んだ。
日経BP参与
澤井 仁
「再生可能エネルギー」 レオ・クリステンセン デンマーク・ロラン市会議員 2013.4.22
Leo Christensen, Member of City Council in Lolland Municipality, Denmark.
デンマーク・ロラン市のレオ・クリステンセン市議が、同市が再生可能エネルギー分野で2003年から産官学ですすめる、CTF(コミュニティ・テスティング・ファシリティーズ)の実証例を説明した。
CTFから水素コミュニティや藻を利用したバイオマスなどのプロジェクトをこれまで100ほど手がけてきた。大学との提携が有効なのは、民間と違い、立場がニュートラルでグローバルな視点をもっているためだとして、日本で同様な取り組みが始まった場合は、その点を参考にしてほしい、と述べた。
司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日経新聞)
通訳 ニールセン北村朋子
日本記者クラブ 第10回取材団 北欧 フィンランド・デンマーク(1月13日~21日)
参加した記者によるWEBエッセーです
http://www.jnpc.or.jp/communication/essay/series/%E7%AC%AC%EF%BC%91%EF%BC%90%E5%9B%9E%E5%8F%96%E6%9D%90%E5%9B%A3%E3%80%80%E5%8C%97%E6%AC%A7%E3%80%80%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%80%81%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC/
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025707/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
「地域は変われる」ロラン島に学ぶ
再生可能エネルギー推進派にとって、デンマークは、いわば理想の国。世界的な風力発電普及の先鞭をつけ、国内に風力産業を育てた。さらにデンマークのロラン島(市)は、風力の電気で水素を製造して利用する水素コミュニティーに取り組むことで知られる。
そんな、環境先進地域のロラン市市議会議員のレオ・クリステンセン氏の会見は、意外にも「日本はロラン市の失敗から、多くを学んでほしい」との自戒の言葉で始まった。
なるほど、話を聞くとロラン市は挫折の歴史ともいえる。「1900年代初めに造船工場を誘致して繁栄したが、石油ショックで造船所が閉鎖され、人口流出が始まった。1970年代に原発の候補地になり、反原発運動を通じて、代替エネルギーに力を入れ、この分野での産業誘致に乗り出した」と振り返る。
そのかいあって、風車メーカーの工場が建設され、失業率は2・8%まで下がったが、「その風力設備の工場も2010年に低コストを求めて海外に移転し、再び失業率は8%に上がってしまった」と打ち明ける。「工場誘致など外部に頼った雇用対策は限界があると悟った」という。
水素コミュニティーの建設には、こうした背景がある。「風力発電の電力は不安定で、電気は乗り物の燃料にはならない。水素にすれば電気を貯められるし、燃料にもなる。水素のほか、藻を使った燃料生産にも取り組んでいる。水素は水から製造できるし、藻は太陽エネルギーを使い二酸化炭素を材料に燃料を作る。地域の資源を使って、エネルギーを生み出し、提供することこそ、真の地域の自立」という思いがある。
「ロラン市が日本に教えられる技術はないが、地域は変われるということを知ってほしい」とクリステンセン氏は言う。この果敢な「変化」への挑戦こそが、いま日本が学ぶべき最も重要なことだろう。
日経BPクリーンテック研究所
金子 憲治
ロールバック・マラリア・パートナーシップ 2013.4.22
Roll Back Malaria Partnership(RBM)
ロールバック・マラリア・パートナーシップ(RBM)は、マラリアとの闘いをグロバールに対応していくために、WHO、ユニセフ、国連開発計画、世界銀行によって、1988年に設立された。RBMの特別代表を務めるベルギーのアストリッド王女妃殿下とナフォ=トラオレ事務局長が会見し、マラリアの死亡率が減少する中、逆戻りしないように財政支援と政治的なコミットメントの継続を国際社会に要請した。
司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)
通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)
ロールバック・マラリアのウェブサイト(英文)
http://www.rbm.who.int/
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025674/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
マラリア対策 立ち止まっている暇はない
ロールバック・マラリア・パートナーシップは、1998年に世界保健機関(WHO)や国連児童基金(UNICEF)などが立ち上げたマラリア撲滅のための世界的な枠組みだ。
「(マラリア対策に)金銭的、政治的な投資を続けなければ、これまでの成功が台無しになる」。特別代表のベルギーのアストリッド王女(右)が記者会見で一層の支援を呼び掛けた。
マラリア対策は成果を生み出している。2000年からの10年間で、世界のマラリアによる死者は約25%減少した。日本も近年、アフリカ支援として保健衛生分野に着目し、エイズやマラリアなどの感染症対策に力を注いできた。王女はこうした貢献に謝意を表明しつつ、世界的な経済危機で厳しい時代にあっても、先進国は支援を減らしてはいけないと訴える。年間のマラリア対策に必要な資金50億米ドルのうち、30億米ドルが不足しているという。
新たな脅威にも直面している。東南アジアのメコン川流域で、マラリアの特効薬「アルテミシニン」への耐性を持つマラリア原虫が出現。トラオレ事務局長(左)は「新薬開発に向けた研究が必要だ」と強調した。被害の大きなアフリカに広がれば、甚大な影響を及ぼしかねない事態だ。
近年、豊富な資源と人口増を背景に成長を続け、日本企業からも注目を集めているアフリカ。6月に横浜市で開かれるアフリカ開発会議(TICAD)でも投資や貿易の議論が多くを占めそうだ。しかし、蚊帳一つないため、蚊に刺されただけで命を失っていく子どもたちが、今なお毎年何十万人もいるという事実も同時に忘れてはならない。4月25日の世界マラリア・デーを前に、そう考えさせられた会見だった。
共同通信外信部
田中 寛
安倍晋三 首相 2013.4.19
Abe Shinzo, Prime Minister, Japan
安倍晋三首相が、医療、雇用、子育て支援分野での成長戦略を発表した。
司会 日本記者クラブ理事長 吉田慎一(朝日新聞)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025685/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
アベノミクスとは精神主義と見つけたり?
アベノミクス。果たしてどんな3本目の矢が放たれるのか。この日の10階記者会見場は、安倍晋三政権の成長戦略の初のお披露目というだけでなく、当クラブで4年ぶりに行われる首相会見ということもあり、常ならぬ熱気が感じられた。
そのクラブの期待に安倍首相はそれなりに応えてくれた。冒頭のスピーチで「再生医療」「若者」「女性」という3本柱の政策を発表、これでもか、というほど具体的、かつ詳細な説明を行った。
第1の柱で曰く。「先端医療研究の戦略や予算配分の決定権限を持つ、日本版NIH(国立衛生研究所)を創設します。人工多能性幹細胞(iPS細胞)の利用など再生医療の実用化に向け、規制緩和や医薬品の審査期間を短縮するための法案を今国会に提出します」
第2の柱では、「グローバル化の中で海外留学に挑戦する学生の不利益にならないよう、現行の就職活動のスケジュールを3~4カ月後ろに倒すよう経済界に要請しました」。
そして、第3の柱に力が入った。「最も生かし切れてない人材とは何か、それは女性です」と会場をぐるりと見渡した上で、①全上場企業が役員に1人以上の女性を登用する②20万人分の保育の受け皿を確保し、平成29年度までに待機児童ゼロを目指す③育児休業を3歳まで取得できるよう、企業に助成金を支給する──との方針を示したのだ。
伊能忠敬、下村治の引用も、興味深かった。日本地図を完成させた伊能にはその55歳になってからの偉業への取り組みをほめたたえ、「どんな困難も、あきらめない強い意志があれば乗り越えられる」と述べ、所得倍増政策で著名な下村理論からは、成長政策とは現に持っている潜在能力を引き出し発揮させることにある、という部分を切り出した。くたびれた熟年期の日本経済に伊能的な活躍を期待すること。そして、意識的な楽観主義。アベノミクスとは、精神主義と見つけたり。若干大げさに言うと、そんな印象も持った。
質疑も活発だった。消費税増税を10月の閣議決定段階でどう判断するか、という質問に対しては、財政規律への目配りをしながらもデフレ脱却という内閣の最重要課題を強調し「極めて慎重に考えなければならない」と述べ、聞きようによっては先送りありうべしと受け取れた。
トータル1時間強。日中関係、96条改憲、0増5減問題。何でもござれ、とばかり、なめらかな回答が返ってきた。まさに絶好調、といった感じ。だが、好事魔多し。政権というものは、調子のいい時ほど緩みが出る。上り調子だった第1次安倍政権も、5月連休を境に支持率が急落した。そのへんのリスク管理をどう考えているのか。聞くべき質問をやり損ねてしまい、反省している。
企画委員 毎日新聞論説室専門編集委員
倉重 篤郎
程永華 駐日中国大使 2013.4.19
Cheng Yonghua, Ambassador to Japan, China
程永華・駐日中国大使が3月の全国人民代表大会(全人大)での習近平体制発足をうけ、①「中国の夢」、②経済の動向、③対外関係、④中日関係について話した。
司会 日本記者クラブ企画委員長 小孫茂(日本経済新聞)
代表質問 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025653/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
日本通の大使 「もう一言」言及してほしかった
程永華大使と最初に取材でお会いしたのは、2000年のことだったと思う。当時も中国外務省アジア局の副局長として、日中関係を担当されていた。今回の大使勤務を含め日本生活はトータルで20年以上。日本のことを知り尽くした中国政府きっての日本通である。
こうした人が、「(国交正常化以来)最も厳しい局面」と自ら言うような日中関係で、中国の駐日大使を務めているというのは何とも皮肉なものだ。4月19日の日本記者クラブの昼食会で、両国関係の現状について「心を痛めている」と言ったのは、まさに本音だろうと思う。
昼食会での発言内容は、慎重に言葉を選びながら、中国政府の立場を丁寧に説明するものだった。中国外務省の報道官から聞くような公式な発言も多かったが、仕方あるまい。この局面で、踏み込んだ発言をすることは、日中双方の世論を刺激しかねないとの配慮に違いない。
気になったのは、程氏が繰り返し語ってきた「中国は平和発展を進めます」との中国外交の説明の部分だった。以前の程氏の説明ならば、ここまでだが、この言葉の後に最近の中国政府の決まり文句が続いたからだ。
「主権と領土を守ります」
以前はわざわざ言っていなかった、この言葉を強調しなければならないのが、まさに今の中国なのだろう。程氏は「この2つ(平和発展と領土保全)は矛盾しない」と説明したけれども......。
日本を含む周辺国の多くの人々が、こうした中国の姿勢の変化に不安を感じていることを、程氏ならば、よくご存じだと思う。多くの日本の記者たちを前に、もう一言、そのことに対する言及をしてもらえなかったものか。ちょっと残念に感じた。
朝日新聞国際報道部次長
古谷 浩一
アウン・サン・スー・チー ミャンマー国民民主連盟党首 2013.4.17
Daw Aung San Suu Kyi, Chairperson, the National League for Democracy
※同時通訳です。日本語は左チャンネル、英語は右チャンネル
English : Choose a right channel
27年ぶりに来日したミャンマーの国民民主連盟のアウンサンスーチー党首が会見し、内政問題を中心に質問に答えた。
国会議員になってから分かったが、立法(国会)は野党の意見を取り入れるなどそれなり機能している。司法は行政(政府)に依存し、行政は明確な改革政策をもっておらず、うまくいっていないとした。民族・宗教間の対立問題については、法の支配の確立を通じて、国民和解の道に導くのが最善というのが、わたしの信条だと、語った。
司会 日本記者クラブ企画委員 小栗泉(日本テレビ)
代表質問 日本記者クラブ企画委員 杉尾秀哉(TBS)
同時通訳 澄田美都子、大野理恵(サイマル・インターナショナル)
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025678/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
新たな国づくりへ 地道な実務家の「正直」な言葉
アウン・サン・スー・チー氏は有徳の貴婦人といった風情だった。「どんな質問にも正直にお答えします」と述べて、記者会見を始めた。
日本の援助に何を期待するか、ミャンマー民主化の現状はどうか、国内の民族・宗教紛争にどう対処するのか、地域大国の中印両国といかに付き合うのか──。相次ぐ質問に「正直」な回答が返ってきた。
人物には華があるが、語る言葉に華はない。ご本人も「私の発言は派手でない。不満に思う人、退屈に感じる人は多い」と認める。
例えば、ミャンマーの人権抑圧の新たな象徴になり、特に米欧で批判の強い、市民権を持たないロヒンギャ系住民の処遇については、「市民権の有無は国内法に照らして対処すべきです。ただ、国内法が国際基準に適合しているかどうかの検討も必要です」と慎重だった。
「最重要課題は国家の統一と平和の樹立」であり、「国民和解の前提は法治の確立」と言う。それが「政治経済社会の持続的発展の根本です」。実際そうなのだろうが、まるで軍政時代の標語のようだった。
スー・チー氏は、幽閉されてなお軍政に抵抗を続けた民主化の星というより、新生ミャンマーの国づくりに地道に取り組む実務家だった。
そして、「私は大統領になりたい」と語った。国を正しく指導することは自らに課した使命なのだろう。「建国の父」と崇められる実父のアウン・サンは、独立を見ずに暗殺された。スー・チー氏は英国人の夫が末期がんで余命いくばくもないことを知りつつ、祖国にとどまった。実父の夢を引き継ぎ、自らを国に捧げる決意は揺るぎないようだ。
大統領になるには軍の同意を取り付けることが不可欠だ。憲法はスー・チー氏排除のため、外国人の家族を持つ人物の大統領資格を認めていない。軍は憲法改正に拒否権を持つ。
スー・チー氏は最近、「軍は好きです。父が作ったわけですし」と公言し、今年の国軍記念日の軍事パレードに初めて参列した。記者会見では、「軍人の考え方は規律や指令の順守であり、心配はありません。最大の障害は軍事専制に染まった思考様式なのです」と述べた。国軍の改革派とは手を組む姿勢だ。
ミャンマーの高名な占星術師によると、スー・チー氏は2014年半ばに何らかの形で大統領に就き、15年の総選挙の勝利で大統領に再任されるという。絵空事と一笑に付すことはできない気がする。
読売新聞編集委員
鶴原 徹也
「エジプト革命2年後のいま」池内恵 東京大学准教授 2013.4.15
池内恵・東京大学准教授が、革命2年後のエジプトの政治状況について分析した。軍最高評議会(SCAF)が移行期の統治ルールを確立できなかったことで、最高憲法裁判所などの司法が主導権を握るようになった。一時的ではあるにせよ、このことが政治の混迷の度合いを薄めることに寄与している、と。
司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日本経済新聞社)
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025585/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年 5月号に掲載)
エジプトの国づくりは大河ナイルのごとし
「革命から2年が経過したエジプトの現状をどう読み解くか」について、現地で観察を続けてきた池内氏によるディープな分析が行われた。30年に及んだムバラク前政権が民衆の抗議デモによって倒された後、軍最高評議会による暫定統治、民主的な選挙を経て、昨年、イスラム主義勢力主導のモルシ政権が誕生した。しかしながらその後も、国内各勢力による対立と混乱が続き、新しい国づくりの終着点は一向に見えない。このような「移行期政治の不確定性」を「構造的に把握すること」に主眼が置かれた。
興味深かったのは、ムバラク後のエジプトが、いまだに「正統性」のある新政権を樹立できずにいる一方で、国家の「合法性」や「継続性」は維持され盤石であるという指摘だ。とりわけ、司法府や裁判官が意気軒高である。軍最高評議会によって、ムバラク政権時代の憲法の効力が停止されたにもかかわらず、憲法裁判所は過去の判例に基づいて、すでに議席が確定した人民議会選挙を無効にするといった政治的判断を下し、民主化プロセスに重大な影響を与えている。
新しい国づくりの主導権を握った「ムスリム同胞団」は、治安維持や外交を円滑に進めるため、軍と警察の取り込みを図っている。これに対し、選挙で惨敗した「世俗派・リベラル派」も、組織力の弱さをカバーし、イスラム主義勢力に対抗するため、軍と警察による介入に密かに期待しているという。かくして、軍と警察は徐々に復権し、とくに軍は今後自らの既得権益を守るため、一時的に政治に介入する可能性もあると分析する。
エジプトの歴史の流れは、大河ナイルのごとく実にゆったりである。個々の政治の動きを追いかけるだけでなく、全体を見渡し、構造的な把握をすることが大切だという池内氏の指摘にうなずかされた。
NHK解説委員
出川 展恒
ラスムセン NATO事務総長 2013.4.15
Anders Fogh Rasmussen, NATO Secretary General
※同時通訳です。日本語は右チャンネル、英語は左チャンネル
English : Choose a left channel
NATOのラスムセン事務総長が、国際治安支援部隊(ISAF)のアフガニスタンからの撤退後の治安問題やアジアでの防衛協力などについて語った。NATOはこの地域でのプレゼンスを求めているのではなく、共通の安保課題をかかえるアジアのパートナーと協力していきたいと、と述べた。
司会 日本記者クラブ企画委員 杉田弘毅(共同通信)
通訳 小松達也、澄田美都子(サイマル・インターナショナル)
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025672/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年 5月号に掲載)
NATOの存在感 時代とともに変化
かんでふくめるような丁寧な語り口。エストニア・タリンでの北大西洋条約機構(NATO)外相会議などの折、事務総長の記者会見に参加したことがあるが、今回も私の受けた好印象は変わらなかった。 冒頭のスピーチは20分弱。北朝鮮情勢、グローバル化する世界でのNATOの役割変化、アフガニスタンなどNATO域外活動に対する日本の貢献への謝意、さらなる貢献への期待表明などが内容だった。
最初の質問者として指名されたので、事務総長が言及しなかった中国に対する認識、姿勢を聞いた。
記者は3月までベルリン特派員だったので、日本と欧州における対中国認識の差異について、皮膚感覚として認識しているつもりだ。当然のこととはいえ、欧州において中国の台頭を脅威と受け止める見方は薄いし、領土問題についても、どの当事者の肩を持つことも慎重に回避する。
ただ、今回の訪日では共同宣言も用意されているし、極東情勢は日々変化している。若干踏み込んだ発言、ニュアンスの変化への期待もあった。
回答は、「中国の軍事予算の増大には注目しているが、NATO加盟国への直接的な脅威とは考えていない。私は中国指導部が、国際平和維持、安定が自国の利益になることを理解していると信じている」。
こんなところがせいぜいなのだろうな、というのが正直な感想だ。事務総長は、欧州・大西洋地域の多国間安保機構の存在が、同地域の安定の基礎となっているとして、アジアでも多国間機構の設立を、と慫慂したが、我々はその困難さを日々感じている。
ただ、私には全く違う視点で発見があった。かつてNATOは「軍事」同盟ゆえに、日本の言論空間では継子扱いされるようなところがあった。記者会見ではそうした予断に基づく質問は皆無だった。時代相の大きな変化を物語っているのだろう。
読売新聞編集委員
三好 範英
兒玉和夫 前国連次席大使 2013.4.11
Kazuo Kodama, Former Ambassador, Permanent Mission of Japan to the United Nations
国連の日本政府次席大使を務めた兒玉和夫氏(現・外務省研修所長)が、2年半にわたる経験を踏まえ、「国連と日本外交」のテーマでスピーチをした。国連外交の現場かみると、地政学的な視座からだけでは説明しきれない進展の中に国際情勢があり、「力」、「国益」の概念以上に第3の柱として「価値」の比重が高まってきているのを感じる、と述べた。
司会 日本記者クラブ企画委員 山岡邦彦(読売新聞)
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025641/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
国際政治のメガ・トレンドは「価値」
各国のエゴがぶつかり合う国際政治の場で最近、「力」「国益」に次いで、「価値」が第3の要素として比重を増し、「メガ・トレンド」になっていると兒玉和夫氏は指摘する。
価値とは民主主義拡大であり、住民を虐殺から守ることだ。具体例として、国連安全保障理事会が今年3月に採択した決議で、コンゴ民主共和国東部で展開するPKO部隊に、「介入旅団」として武装勢力を攻撃し「無力化」する任務を与えたことを挙げた。「前例としない」との留保が付いているが、画期的な内容だ。
しかし、安保理5常任理事国が、自らの国益に反する内容の決議に拒否権を行使し、世界や地域の平和や安定について有効な対策を取れない「機能不全」はいまだ解消されていない。国際社会の最大の課題であるシリア内戦について、ロシアと中国は、対アサド政権への制裁警告決議案などに3度、拒否権を行使した。
武力行使や経済制裁承認など、国連で唯一、法的拘束力のある決定ができる安保理の機能不全は極めて深刻だ。日本は常任理事国入りを外交の優先課題にしているが、05年に「大変な外交力、外交資源を投入」(兒玉氏)し、アフリカ連合(AU)と安保理拡大決議案一本化を模索したが、失敗。以降も目に見える進展はない。
AUの強硬姿勢、米国、中国、ロシアの「現状維持」の立場が変わらない限り、有効な安保理改革の実現はほとんど不可能とさえ思える。
だが、日本が安保理改革への努力をやめていいことにはならない。経済力が落ち、国連分担率、政府開発援助(ODA)が減り続ける中、どのような「価値」を重視して国際社会に訴えかけ、各種制約があるPKO参加をどう拡大していくか。政府、国民が真剣に考える必要がある。
会見の最後、日本が常任理事国になれば「何ができるかではなく、できることは何でもしなければならないのだ」との兒玉氏の言葉が重く響いた。
共同通信外信部
坂本 泰幸
ペニャニエト メキシコ大統領 記者会見
Enrique PEÑA NIETO, President, Mexico
メキシコのペニャニエト大統領は、滞在最終日に会見し、今回の公式訪日の意義について語った。質疑応答では、日本のTPP交渉参加への支持表明やメキシコ国内の治安問題などについて答えた。
司会 日本記者クラブ理事 会田弘継(共同通信)
通訳 三好勝(メキシコ大使館翻訳官)
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025647/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
TPPへの交渉参加 日本を支持
交渉参加の是非をめぐり国民的議論が沸き起こり、日本の政財界やマスコミなどを賑わせてきた環太平洋経済連携協定(TPP)。安倍晋三首相が交渉参加を表明して以降、もっぱら国内の関心は日本がいつから実質交渉に参加できるのか、他国の賛同は得られるのかに移っている。
交渉でのルール作りに早期に加わり、日本の主張をできるだけ反映させなければならない─。日本側が焦りを強めるのは、主にこうした理由からだ。農産物などの重要品目を多く抱える日本に対し、米国などTPPを主導するいくつかの主要参加国の支持はなかなか得られず、(会見の4月10日当時)焦燥感に拍車が掛かる。
そうした観点から、ペニャニエト大統領の訪日で、日本は一定の成果を得た。メキシコもTPP交渉に加わったばかりの「後発国」。後から加わったために不利な条件をのまされてはたまらない、と日本との「共闘」を演出して他国をけん制する狙いもあろう。また、TPP参加を目指す国の首脳としては初めて日本に支持を表明したのも、自国で渦巻く根強い反対論を何とか抑えたい、という思惑があったかもしれない。
会見でも、日本メディアからはTPPへの質問が集中。特段踏み込んだ発言はなかったが、重要品目の例外扱いに関する問いに「個別の交渉内容は言えないが、各国の留保事項はそれぞれの交渉の席で話し合うべきだ」と日本の懸案は今後の交渉次第で打開できるとの見方を示した。
「日本の発展からは、経済成長や技術革新などメキシコが学ぶべきインスピレーションがたくさんあり、模範となる国だ」。大統領からは、聞いていて恥ずかしくなるほどのほめ言葉を頂いた。日本だけでなく、メキシコ側にとっても今回の訪日での収穫が大きかったことを望みたい。
時事通信外信部
鈴木 克彦
著者と語る『なつかしい時間』 長田弘 詩人 2013.4.5
Osada Hiroshi, Poet
詩人の長田弘さんが著作『なつかしい時間』について話した。題名をひらがなにしたのは、懐古の懐の漢字にすると、昔のことと思われがちになる。その意味が定着し、現代日本ではよくないことと思われている。石川啄木の「ふるさとの訛りなつかし・・・」のなつかしいには過去を振り返るのではなく、ふるさとを現在形としてとらえていると思う。このように、なつかしいを現在形で使ってみたかった、と述べた。福島市出身としての東日本大震災への思いについても語った。風景を取り戻さないと、記憶も戻らない。山とか川は震災にあっても変わらない。そのような風景によって人はいかされている。風景と共存していかなければ、被災の体験を伝えていくのは難しい、とも。
司会 日本記者クラブ企画委員 星浩(朝日新聞)
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025571/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
生き物すべてが被災 思いが言葉にあらわれる
アベノミクスだ、領土問題だと、ふだんはこむずかしい話題が続いて、何かと気ぜわしい日本記者クラブだが、時には穏やかな時間が流れることがあってもよい。
詩人の長田弘さんがNHKの「視点・論点」で話した中身が岩波新書にまとめられ、長田さんの思いを語ってもらった。
著書は、1995年から2012年までの話を収録。阪神淡路大震災から東日本大震災まで、折々の感慨が、時には長田さんの詩を紹介しつつ、淡々と語られている。
著書を語る長田さんからは、詩人らしい感性がにじみ出ていた。
「この本の内容は20世紀と21世紀をまたいでいます。ふたつの世紀の大きな違いは、ボキャブラリーが変わったことでしょう。20世紀の言葉は誰かが見える形で直してくれた。21世紀はフォーマットがあって、それに従って直されていく」
福島市出身の長田さんにとって、2年前の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故への思いは、人一倍強い。
「福島県内の文学賞の選考委員をしているが、原発事故以降、お年寄りの詩には、ミツバチが死んだとか、トカゲが出てこなくなったというものがあった。原発事故は人間に大きな被害を与えただけではない。生き物すべてが被災してしまったのです」
今回の「著者と語る」を司会してひとつ、気がかりなことがあった。「福島出身の詩人」が、大震災と原発事故についてどんなメッセージを出すのだろうという関心は、日本記者クラブの会員の中にあまりないのだろうか。当日の出席者は24人と、きわめて低調だった。
現役の記者諸兄もOBの方々も、日々のニュースを追いかけるのに忙しいのだろう。それでも、これが震災と原発事故の「風化」を物語るのだとしたら、とても残念なことだ。
企画委員 朝日新聞特別編集委員
星 浩
研究会「サイバーセキュリティ」④ 名和利男 サイバーディフェンス研究所 2013.4.4
Toshio Nawa, Senior Security Analyst, Cyber Defense Institute Inc.
研究会「サイバーセキュリティ」の第四回目。名和利男・サイバーディフェンス研究所情報分析官部長・上級分析官が「サイバー攻撃の技術や実態について」と題し、話した。15、20年前のギークやハッカーといわれた、攻撃者の"顔が見える時代"から"顔が見えない時代"になってきている。ネット環境が整い、ネットワークの時代になった。そのために、ウェブサーバーにネットワークを通じて入り、所有者に断わりなく、顔をみせずに、内容を書き換えることが可能になった、という。攻撃相手のどこにアナがあるかを調べた上で、攻撃をしかける。ウィルス対策は完璧であったにもかかわらず、攻撃を受け、調べてみるとマルウェア(コンピューターウィルス)が1年にもわたり入れられていた、という政府機関の例もあった、とも。背景には、毎日10万個のマルウェアが生産されているという米国での調査結果もあり、ウィルス対策が追いつかなくなっている状況がある、とした。対応には限界があるとしながらも、攻撃する側が綿密に連携しているので、官民、民民の間で情報交換をし、同じように綿密に連携していく必要がある、と思うと。
司会 日本記者クラブ企画委員 杉尾秀哉(TBSテレビ)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025566/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
日本のサイバー 防御態勢は極めて貧弱
このところ米国や韓国で、報道機関や企業、政府機関に対するサイバー攻撃が激烈の度を増している。
日本でも指折りのサイバー専門家・名和利男氏が、そうした攻撃の実態や防御について語ってくれた。
サイバー界の話というと、専門用語(それもたいていは英語)が頻発して参るのだが、名和氏の話は、豊富な図表の助けもあって、シロウトにもなんとかついていけた。わかりやすいだけに、脅威のほどが身にしみたともいえそうだ。
かつては、多くが個人の仕業だったコンピューターの乗っ取り、情報の窃取、書き換え、抹消、ソフトの破壊などが、今や国境を越えた「ハクティビスト(電脳活動家集団)」による抗議運動の手段ともなった。さらにテロ組織や国家機関によるサイバー攻撃は、イランの核施設に対して行われた例のように「サイバー戦争」の域に達している。
すこし程度の高い攻撃者は、自分の痕跡など残さない。数年以上コンピューターに潜んでいつか出る指令をじっと待つ忍者もどきのマルウェア(悪質ソフト)もある。
フェイスブックのような、個人情報を満載した交流手段の普及が侵入の手がかりを与えたり、ネットに接続していないのに侵入されることがあるというから怖い。
1日に数十万ともいわれるマルウェアの生成量に対して、防御ソフトの改訂が間に合わないことさえしばしばのようだ。
にもかかわらず、日本のサイバー防御態勢は、極めて貧弱で、国家レベルの強力な攻撃に対抗できる力量の専門家は一けた程度だろうという。
原子炉をはじめとするエネルギー関連、医療、情報通信、交通、金融などの活動を守るために、優秀な「サイバーの達人」が育つ環境を緊急につくらなければならない─と痛感させられた。
東京新聞出身
塚田 博康
下村博文 文部科学相 2013.4.3
Shimomura Hakubun, Minister, The Ministry of Education,Culture,Sports,Science & Technology in Japan
教育再生について、下村博文・文部科学相が会見で語り、記者の質問に答えた。
司会 日本記者クラブ企画委員 和田圭(フジテレビ)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025639/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
教育立国へ「目的税」創設を
第2次安倍晋三内閣の政策課題の2本柱は「経済」と「教育」の再生。アベノミクスで経済再生が順調に進む中、首相は教育再生にも強い意欲を示す。その先兵役が下村博文文部科学相だ。自民党文教族リーダーの1人として「満を持して」の初入閣。年初に始動させた教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大学総長)はまず、当面の課題である学校現場での「いじめ対策と体罰防止」に関する提言を提出。続いて、さまざまな問題点を抱える「教育委員会制度」見直しの論議を進めている。前者は今国会で、後者も来年の通常国会での関連法改正を目指す方針だ。
下村氏の念願は「21世紀の新たな教育制度をつくる」こと。「戦後の日本の教育制度は今までは成功だった。しかし、これからは一人ひとりの創造力を育てる制度に変えなければ日本は生きてゆけない」との考えから、最重要課題は「大学教育の質と量を高めること」だと指摘する。
大目標は成長戦略にも直結する「第2期教育振興計画」の策定。その中軸となる「大学改革」として①入試の在り方の抜本見直し②社会との連携での「学び直し」の促進③世界トップレベルの教育・研究拠点の形成─などを挙げた。
もちろん、新たな「教育立国」政策実現には公的支援拡充が必要。下村氏は「日本の教育関係費は対GDP比で3・8%だが、OECD(経済協力開発機構)各国の平均は5・8%。まずこのギャップを埋めなければならない」と力説。そのためには約10兆円が必要だが、下村氏は財源確保のための「教育目的税」創設を〝大臣私案〟として提起する考えだ。
幼い頃、父親を交通事故で亡くし、交通遺児育英会の交通遺児奨学生1期生として早大に進学し、学習塾を経営しながら中央政界に進出した苦労人。揮ごうは座右の銘で「意志あるところに必ず道あり」。
企画委員 時事通信出身
泉 宏
チダムバラム インド財務相 2013.4.1
Shri Chidambaram, Minister of Finance, India
チダムバラム財務相は、最近のインド経済の動向や投資対象国しての利点などについて語った。
世界経済が困難に直面する中、インドは、2012年度は推計で5.0~5.5%の成長率を達成した。先進国と比較すれば高いが、少なくても8%の成長を目標としていたので、国民の期待を満足させるものではない、とした。
経済・財政改善のために、①財政赤字削減、②インフレ沈静化、③決定済みプロジェクトの予定通り執行に重点的に取り組んでいる、とも。
投資環境については、高い貯蓄率、健全な銀行や市場制度、明瞭な投資制度に支えられている、とメリットを強調した。
海外直接投資(FDI)額は、2011年は460億ドル、2012年も10月までに300億ドルあり、500億ドルを容易に受け入れられる環境にある。
どの分野の投資を歓迎するかの問いには、製造業と答えた。中所得国は国内に大きな製造業のベースをもっている。国内で生産し、消費できるような製造業の土台を築きたいと、と。
司会 日本記者クラブ企画委員 実哲也(日経新聞)
通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/04/r00025616/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
首相めざすより まず成長率回復
昨年来、新興国の経済成長率の低下が目立つ。年8%前後の実質成長が続いていたインドも例外ではない。3月末で終わった前年度は、5%台前半にとどまったとみられている。
昨年夏に内相から財務相に転じた。3度目の財務相就任である。「現状はハッピーではない」「少なくとも8%の成長をしないと、国民の期待は満たせない」。1990年代以来、経済改革を推進してきた政治家は、こう語った。そして、今年度は成長率の6%台回復に「ベストを尽くす」とスピーチを締めくくった。
財政赤字の削減、インフレの抑制、経済開発プロジェクトの効率的な遂行。解決すべき課題として詳しく言及したのは、この3つだ。「日本の援助による地下鉄建設は、予算を超過せず、予定通りにできた。だが、うまく進まないプロジェクトの悪例は多い」。世界最大の民主国家が内包する非効率性は頭痛のタネらしい。
3月のBRICS首脳会議で合意した開発銀行設立については、インドや中国の国内の貯蓄をインフラ投資に結びつける意味があると説明した。「世界銀行やアジア開発銀行に対抗するのではなく、補完の機能を担う」という位置付けは、日米欧の警戒感を和らげる狙いだろうか。
言葉を選び、数字を示しながら論理的に説明する。その印象は、政治家というよりもエコノミストに近いが、「インドは法治の国で、受け入れのルールは明確」と投資誘致のPRにも時間を割いた。
会見の最後に、首相をめざすのかという質問が出た。氏は苦笑をまじえて、「私は自分の限界を知っている」「人生には、首相になることよりも、やるべきことが他にたくさんある」と答えた。それでもインドは将来、この人を首相として必要とするのかもしれない。
企画委員 日本経済新聞コラムニスト
脇 祐三
斉藤惇 日本取引所グループCEO 2013.3.29
Atsushi Saito, CEO, Japan Exchange Group, Inc.
斉藤惇・日本取引所グループ(JPX)最高経営責任者が、最近の株式市場とJPXの中期経営計画について話した。昨年11月14日に国会解散が決まって以降これまでに株価は40%上昇した。アベノミクスのクイックなリズム感に市場は反応がよい。決められる政治になってきたとの効果が一番大きいと思う、と。ただし、世界の動向からみれば、NYダウが史上最高値を更新しているのと異なり、株価は現在12,500円ほどで、2000年のITバブルピークの6割に留まっている、とも。株価のこんごの推移についての質問に対しては、TPP交渉参加や原発を含む日本のエネルギー政策に、安倍政権がどれだけ現実的に対応していくかにかかっている、とした。現実的であれば、前向きに進んでいくのではないか、と。
司会 日本記者クラブ企画委員 実哲也(日経新聞)
日本取引所グループのホームページ
http://www.jpx.co.jp/
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/03/r00025584/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年4月号に掲載)
再編加速 世界の取引所 日本市場の強みは「質の高さ」
「アジアで最も選ばれる取引所を目指す」──。東京証券取引所グループと大阪証券取引所が1月に経営統合して発足した日本取引所グループ。長年のライバル関係だった東証と大証が手を組んだ理由は、バブル期に世界を席巻した日本市場は、もはやアジアでも圧倒的な存在ではないとの現実があるからだ。
上場企業としての日本取引所の時価総額は5千億円弱。アジアで資本市場の覇権を争う香港取引所、シンガポール証券取引所を大きく下回る。国境をまたいだ取引所のM&Aがあるとすれば、時価総額で劣る日本取引所は買収される側だ。中期経営計画で「アジアのトップを目指す」と断言できない歯切れの悪さの一因はここにある。
世界では取引所の再編が進んでいる。日本取引所が発足する直前の昨年末、エネルギー関連のデリバティブ取引に強みがある米インターコンチネンタル取引所が、ニューヨーク証券取引所を傘下に抱えるNYSEユーロネクストを買収すると発表。新興の取引所が老舗を飲み込む買収劇に衝撃が走った。
アジアのライバルに対抗できる日本取引所の強みは何か。斉藤惇CEOが強調するのは、長年の伝統に裏付けられた「日本市場の質の高さ」だ。米国市場に上場する中国企業が粉飾問題で揺れる一方、「投資対象として日本企業の評価が高まった」と指摘する。アジア各地で積極的に事業展開する日本企業の株式に投資すれば、結果的にアジアの成長を取り込める。世界の投資家から「最も選ばれる取引所」になり得るとの算段だ。
日本取引所では、情報発信力の強化や取引の利便性の向上を進め、世界に向けて日本株の魅力を高める戦略を打ち出した。「アベノミクス」による円安・株高の追い風をどう生かすのか。日本取引所を率いる斉藤CEOの手腕に注目が集まっている。
日本経済新聞証券部
戸田 敬久
パンゲストゥ インドネシア観光・クリエイティブエコノミー相 2013.3.29
インドネシアのパンゲストゥ・観光相・クリエイティブエコノミー相は、①最近のインドネシア経済の動向、②日本の投資、③日本人向けの観光促進策、④WTO事務局長への立候補の理由について話した。日本の投資については、自動車、エレクトロニクス産業を中心に、増加する中産階級を対象にした国内市場と、アセアン諸国向けの生産拠点の両面から活発化しているとした。観光では、グレイ・ツーリズムを推進し、長期滞在ビザを出し、医療機関の整備も行っていきたいと語った。日本との経済連携協定(EPA)を通じ日本での研修経験がある、日本語のできる介護福祉士、看護師の採用も視野に入れたものにしたい、とも。WTO事務局長の立候補については、自分が前職の貿易相時代を含め国際貿易の世界に25年も携わってきたことで、政府の推薦を受けた。インドネシアはG20中で15位の経済規模をもつ国になったが、自由で公正なルールに基づいた多角的な貿易体制の恩恵を受けた。新興国が自分たちと同じような機会を得られるようにするためにも、こんごもこの体制を守っていくのは重要である、と。
司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)
通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)
インドネシア観光・クリエイティブエコノミー省の公式ホームページ(日本語)
http://www.visitindonesia.jp/index.html
日本記者クラブホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/03/r00025614/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年5月号に掲載)
WTO次期事務局長候補 意欲と頼もしさ前面に
貿易相を7年間もつとめ、国際会議を取材した経験のある記者たちによく知られるパンゲストゥさんは、世界貿易機関(WTO)の次期事務局長候補として注目される存在。会見の冒頭では、観光・クリエーティブエコノミー相としてインドネシアの経済発展の展望を語ったが、質疑はWTOや貿易をめぐるやりとりに終始した。
もともと経済学者だけに、「2億5千万のインドネシア人口のうち、中間層は4千5百万人だが、2030年には1億3千万人になる」「日本企業にとってASEANや東アジアへの供給基地としてインドネシアの重要性が増す」などと、立て板に水の説明。クリエーティブエコノミーについては、映画やゲーム、音楽、ファッション、アニメなどの産業発展をめざすと述べた。
WTOに関しては「2国間や地域ごとの自由貿易協定(FTA)では確保できない多角的な自由貿易の体制を育てていく重要な使命がある」と語った。さらに「貧しい途上国が自由貿易から取り残されないようにしたい」「小国が大国を相手取った紛争処理の場を確保するためにもWTOは重要だ」と強調。
WTOの存在意義や活性化の展望を語る表情からも、公正なルール作りや事務局長への強い意欲がうかがわれ、記者たちを引きつけるような迫力があった。
一方、インドネシアが環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加していないことに関しては、「民主主義」ゆえの意思決定の難しさがあると述べた。また、TPPそのものが貿易だけでなく政府調達や知的財産権、競争政策など多くの分野にまたがるので、評価や取り組みが難しいと、率直に語った。
G20の一員として自信をつけ、ますます重きをなすインドネシアの頼もしさを感じた。
企画委員 朝日新聞記者
小此木 潔
■2013年度日本記者クラブ賞■
小山鉄郎・共同通信編集委員兼論説委員に 文芸記者初の受賞
特別賞は ジャーナリストの故・山本美香さんに
詳細はこちらに 6月12日に受賞記念講演会
歴代受賞者はこちら。
■会見詳録 更新■
2/18 赤坂憲雄 学習院大学教授 シリーズ企画「3.11大震災」
「現在の復旧・復興には30 年後、50 年後の日本の姿が欠落している 」
2/21 遠藤雄幸・川内村村長、増子輝彦・民主党副代表(参議院議員) シリーズ企画「3.11大震災」
「除染、雇用、医療、教育が大きな課題―川内村で生活する生きがいを取り戻す作業が続く」
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