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【原発事故 規制委拡散予測】

17原発で拡散予測訂正

 原子力規制委員会は12月13日、全国17の原発で、事故時にどう放射性物質が拡散するかの予測を訂正した。すべての原発で、拡散する方角や距離に誤りがあった。九州電力の玄海、川内両原発では、風上と風下を取り違えた誤りを直した。北海道電力泊原発では、雨量を10倍多く入力し、地上に放射性物質が落下すると計算していた。
 規制委の検証によると、孫請けのコンサルタント会社、シー・エス・エー・ジャパン(東京)の社員一人だけで予測作業を実質的に担当していた。発注した旧経済産業省原子力安全・保安院は丸投げ、元請けの原子力安全基盤機構(JNES)は内部で仕事を押し付け合ってもいた。
 シー社は2010年、同じような拡散予測をJNESから受注。その流れで今年4月、今回の予測を再び受注した。今回のミスは「思い違い」「電卓で手計算」「入力ミス」「何らかの理由で忘れた」など多岐にわたった。
 前回の予測はJNESの内部検討資料用だったが、今回は自治体への配布を前提とした正式な予測。精度が求められ、作業量も大幅に増えたが、納期が短いのにシー社の社員一人で作業する体制はそのままだった。
 JNESでも担当者は実質的に一人だったが、組織改編もあってどの部署が担当なのかあいまいに。「自分はただの窓口役」などと仕事を押しつけ合う場面もあったという。
 発注者の旧保安院もミスを拡大させた。7月に予測結果はほぼまとまっていたのに、8月に方位別に予測するよう注文変更、9月には年間の全気象データを反映して予測するよう再び変更した。扱うデータは73倍に膨らみ、その過程で変換ミスなどが起きた。
 旧保安院と規制委は、この間データを自ら検証せず、規制委はJNESから渡された報告書をそのまま発表しただけだった。

<拡散予測図の見方>  各原発の全原子炉でメルトダウン(炉心溶融)が起きたと想定し、風向きや降水量などの気象データを基に放射性物質の拡散方向や距離を試算した。
 1週間の積算被ばく線量が国際的な避難基準の100ミリシーベルトに達する最も遠い地点を16方位ごとに「□」で示した。風が吹く確率が低く、統計上の合理的な数値が出なかった方位には□がない。海上の□は、原発との間に少なからず陸地があるケース。海だけの場合は□がない。

◆拡散予測をめぐる経過 10月24日 原子力規制委員会が全国の原発で過酷事故が起きた際の放射性物質拡散予測を公表。直後に避難が必要な市町村名の一部を訂正
10月29日 東京電力柏崎刈羽原発など6原発データ訂正
11月 6日 九州電力玄海、川内両原発のデータ訂正
11月 8日 委託先の原子力安全基盤機構(JNES)にデータの総点検指示
11月22日 東北電力が東通、女川両原発についてJNESへの提供データに誤りがあったと発表
12月13日 東電福島第1原発を含む17原発のデータ訂正

<原子力規制委員会の拡散予測>  全国の原発で過酷事故を想定し、放射性物質の拡散状況を試算した。原発立地や周辺の自治体が事故に備えて「原子力災害対策重点区域」の範囲を決める際の参考データだが、地形を考慮していないため、精度や信頼性に限界があるとの指摘がある。国から作製を委託された独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)は、電力業界と関係の深いコンサルタント会社に作業を丸投げしていた。10月の公表時から訂正が相次ぎ自治体などから批判が出た。



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