【神奈川】巻き返し道険しく 世界遺産「鎌倉」不登録を勧告
世界文化遺産への登録を目指していた「武家の古都・鎌倉」が、審査を行う国際記念物遺跡会議(イコモス)から「不登録」の勧告を受けた。国内で不登録の勧告は初めて。6月16日からカンボジアで始まる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で正式に登録の可否が決まるが、勧告は文化財保護や景観保全など多岐にわたって問題点を指摘しており、巻き返しの道は険しい。(斎藤裕仁) 日本では、これまで登録された京都や日光など十二件に加え、鎌倉と富士山で計十四件が文化遺産に推薦された。このうち、不登録の勧告は鎌倉だけ。平泉と石見銀山が「登録延期」だったが、その後に登録を果たした。 鎌倉は極めて異例のケースだが、予兆はあった。イコモスの勧告の前に富士山にはあった情報照会が、鎌倉にはなかったからだ。情報照会は、登録への注文となるいわば宿題。これがなかったことで、関係者の間では「もう大丈夫」という楽観論が出た半面、登録の条件を満たすにはほど遠いため照会がないと分析し、厳しい結果になると警戒する声も強かった。 勧告は「武家の古都」としての鎌倉の歴史的な重要性を認めながらも、それを証明する史跡や市街地、権力の証拠などの物的証拠に欠けると指摘。不安が的中することになった。 さらに勧告では、資産候補の社寺や切り通しなどの文化財を「適切に保全」するための緩衝地帯で「無視できない景観への影響がある」という課題を挙げた。文化資産の管理体制は整備されているものの、実際に機能することを確かめる必要があるとの懸念も示し、世界文化遺産にふさわしい「顕著な普遍的価値を証明できていない」と結論づけた。 鎌倉市の松尾崇市長は「結果は残念だったが、市民や関係者の活動には敬意と感謝をしたい。これからも鎌倉は鎌倉であり続けるし、この歴史や文化の素晴らしさは市民や観光客も認識していると思う。今後は、何が不十分だったのかを分析し、慎重に今後の対応を判断していきたい」と述べた。 焦点は、世界遺産委員会までに推薦を取り下げて出直しを図るのか。または強行して「登録延期」などへの昇格を狙うのかの決断。ただ、世界遺産の総数が九百六十二件に達し、十分な管理を行うためにユネスコは、新規登録を抑制する姿勢を一段と強めており、鎌倉にとって厳しい関門が待ち構えている。 <イコモスの勧告> (1)登録(2)情報照会(3)登録延期(4)不登録−の4段階で評価。ユネスコの世界遺産委員会は勧告を踏まえて審議し、同じ4段階評価で可否を決める。同委員会で不登録となった場合、原則として国は再推薦ができなくなる。 PR情報
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