憲法と、
岐路に立つ憲法。その60年余を見つめ直します
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【東京新聞フォーラム】「東京スカイツリー 生み出す『墨田の地域力』」 各氏コメント
観光とものづくりと 墨田区長 山崎昇さん墨田は、江戸時代からずっとものづくりのまちでした。日常生活で使われるもののほとんどを、墨田区でつくってきた。ところが、産業構造の変化でみんなコストの安い東アジアに行ってしまって、ものづくりが崩壊し始めました。工場の多くはマンションになっています。これでまちが元気であり続けるのは難しい。生き生きした地域社会をつくるには、やっぱり人が集まることが必要です。 ちょうどそのときに、東京スカイツリーの話がありました。もちろん観光の核としての東京スカイツリーですが、観光と、これまで営々と培ってきたものづくりを融合したまちを頭に描いて、誘致したんです。古いものと新しいもの、ものづくりと観光、いろんなものが融合したまちです。 墨田の誇る地域力は、義理人情にはぐくまれた下町の人です。下町には、隣の家の子どもをしかる地域の教育力や、わがまちを自ら守る地域防災・防犯力があります。みんながそれぞれの役割を分担して、まちをつくっていく。これが墨田の地域力だと思います。
下町らしさは変えず 墨田区商店街連合会会長 山田昇さん私は、墨田で生まれ育って六十一年になります。墨田の力というのは何かなと考えてみますと、墨田は、生活の場、人間と人間の間が非常に近いのです。これが地域の力に結びついてくるという感じがします。 例えばお祭りにしましても、ふだんはあまり口をきいたことがない人たちでも、お祭りが始まると仲よくなり、夜遅くまで本当に楽しみます。これも力です。 東京スカイツリーができると大きく変わると思いますが、変わっていいものと、変わってはいけないものがあると思います。その中で、墨田はやはり墨田らしさを売るべきだと考えています。 よそに行くと、墨田区はうらやましいと言われます。スカイツリーの施設だけで年間二千五百万人、八百八十億円の経済効果がある。今、世界中探しても、そんなすばらしい話のあるところはありません。 これは二度とないチャンスなので、これを的確にとらえて、生活を向上させ、コミュニティーをつくり直す力が、墨田にはあると思います。
向島の花柳界東京一 料亭きよし三代目女将 小林綾子さん向島には、今、料亭が十六軒あって、芸者衆は百二十人ほどいます。料亭、芸者衆とも、東京では数の一番多い花柳界です。数が多いというのは何の自慢かと申しますと、それだけお客さまが来てくださっているということなんです。 じゃあ何で向島にそれだけのお客さまが来てくださるのか、料亭が残ってきたかを考えますと、一つは、交通の便があまりよくないからです。交通の便がよくなった赤坂や新橋は、料亭をやっていられなくなってしまった。向島というのは、どこの駅から行ったらいいんだとよく言われるんですが、駅がないんです。駅からちょっと遠いので残った。料亭には、ある程度の敷地が必要です。高層ビルの料亭には、皆さん、来たいと思わないのかもしれません。 向島は戦災で焼けたので、戦後の建物がほとんどですが、大正時代の建物でやっている料亭も一軒あります。明治、大正、昭和の東京のよさを残した建物で、心の中にも懐かしいものを持っている向島の花柳界は、墨田の地域力の一つだと思っています。 戸惑いもエネルギーに 東京新聞したまち支局長 榎本哲也成長を続ける東京スカイツリーへ、完成を待たずに全国から訪れる見物客は、日を追って増えています。 地元の墨田区民のみなさんも、その成長を見上げて夢や希望を抱いていますが、一方で不安や戸惑いも多いことを取材で感じます。 細い路地が入り組む昔ながらのまち並みと世界一の電波塔とのギャップ。観光客の殺到による環境の変化。その観光客が、必ずしも地域経済を潤してはいない現実。スカイツリー周辺が将来どのように開発されるのか…。 ですが墨田区には、江戸時代から培われた文化、震災や水害など苦い過去から学んだ防災力、下町ならではの住民自治など、他にはない「地域力」があると思います。討論を通じ、不安や戸惑いをもエネルギーにして、スカイツリーを契機としたまちづくりを模索する墨田区のみなさんの「地域力」を、あらためて実感しました。 今後も東京スカイツリーと、その足元で暮らす人々の息遣いを取材していきます。 PR情報
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