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【東京新聞フォーラム】

「東京スカイツリー 生み出す『墨田の地域力』」 パネル討論

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 東京新聞フォーラムは9月1日、東京都墨田区錦糸の東武ホテルレバント東京で「東京スカイツリー 生み出す『墨田の地域力』」(墨田区後援)を開催した。

 俳優で作家の愛川欽也氏が基調講演。その後、愛川氏を交え、山崎昇・墨田区長、山田昇・墨田区商店街連合会会長、料亭きよし三代目女将(おかみ)の小林綾子さんの4人のパネリストが、榎本哲也・東京新聞したまち支局長の司会で、来年末完成を目指す東京スカイツリーによって生み出される墨田区の地域力について白熱した議論を戦わせた。地域活性化の具体案には、ユニークなアイデアやユーモアあふれる話もぽんぽん飛び出し、約300人で満席の聴衆は時間を忘れて聞き入っていた。(会場写真は、木口慎子撮影)

 −愛川さんは、墨田の地域力をどうやって引き出せばいいとお考えですか。

 愛川欽也さん・俳優、作家 隣の子をしかるというのは、日本人独特の教育ですね。昔ほど煩わしくない隣組みたいなものはあったほうがいい。下町は隣が近いから、すぐ声がかけられます。近所づき合いのある地域は、うらやましいと思います。

 −スカイツリー見物のお客さんに対する商店街の反応はどうですか。

 山田昇・墨田区商店街連合会会長 何をしたらいいかわからないというのが現状だと思います。今は周りの商店街は潤っているかもしれませんが、あそこにできる施設にお客さんが全部収容されてしまう可能性もあるんですね。しかし、区では「すみだ地域ブランド戦略事業」も実施されているので、いろんなことができると思います。

 小林綾子さん・料亭きよし三代目女将 スカイツリーを撮ろうとカメラを提げた人が向島にもいっぱい来ています。芸者衆は、美容院に行くときは素顔でジーパンをはいていたりする。自転車に乗った勇ましい姿がインターネットに出されると大問題です。芸者衆も私たちも、もっと気を引き締めていかなきゃいけないなと思っています。

 −区長は、どういうまちづくりをしていかれますか。

 山崎昇・墨田区長 墨田区はものづくりのまちですから、従業員の昼食や夜食を地場の商店で買う。そういう商店街として発展してきたんですが、産業構造の変化で成り立たなくなった。商店街の活性化には、まず、日曜日もシャッターを開けるなど観光商業への取り組みも重要です。地域の自助努力が重要です。商店街に来ていただく仕掛けを強力に推進していきたいと思います。

 山田さん 墨田区の商店街では、十月から、スイカ、パスモの交通系カードを使ったポイントカードを実施するようにします。買い物だけでなく、ボランティアやマイバッグ持参者にもポイントが付く地域貢献ポイントです。

 小林さん スカイツリーに来る修学旅行生に、芸者衆が浴衣の着方、座り方、ふすまの開け方、簡単な踊りを教えて、その後で懐石料理のマナー講座をするのはどうでしょうか。

 もう一つは、隅田公園でビアガーデンをやって、「一店一品おつまみ運動」をすれば、個人商店にお客さんが入るきっかけになると思います。芸者衆も踊りやお茶のサービスをします。

日に日に高さが増す東京スカイツリー。周辺には昔ながらのまち並みが広がる=22日、東京都墨田区で(本社ヘリ「おおづる」から、中西祥子撮影)

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 愛川さん 僕は、東京タワーができたときからずっと見ています。最初は大変な人でした。その後、本当に寂れたんですよ。最近、また満員です。スカイツリーも寂れるときが絶対来ます。そのときに踏ん張れるのは地元の人です。商店街がシャッターを開けて、お年寄りが囲碁やカラオケをしたり、若い人がたこ焼き屋をやったり、行政も支援して、憩いの場をつくったらどうですか。

 米国ミズーリ州のブランソンという人口六千人ぐらいの小さな町は、「ムーン・リバー」を歌った歌手アンディ・ウィリアムスが劇場を造ったことから、今では六十ぐらいの劇場ができて、年間七百万人のお客が来るんです。墨田も、花街とつながる芸能の寄席や漫才、小さな新劇の劇場ができれば長続きするんじゃないでしょうか。

 山崎さん リピーターが行く観光地の条件は三つあります。

 一つ目は、治安がいいこと。二つ目はグルメで、おいしいものが幾つもある。三つ目は、地域の人との触れ合いです。下町の人情を大事にしたおもてなしで頑張りたいと思います。

 山田さん 観光客はお土産ばかりでなく、地元の商店でいろんなものを買われます。今ある商売を地道にやって、墨田の生活をそのまま見せることが、大きな観光になると思います。

 小林さん 向島の見番でやった「華のお座敷」は、芸者衆の踊り、幇間(ほうかん)(たいこ持ち)の芸、落語を組み合わせた舞台で、とても好評でした。スカイツリーの展望台に上るまでの待ち時間に、芸者衆の踊りと食事のミニツアーができたらいいなと思います。

 −最後に、墨田をこんなまちにしますというのを、一言ずつお願いします。

 山崎さん これからの超高齢化社会で活躍するのは女性です。女性の方、ぜひ男性を連れてスカイツリーのある墨田にお越しください。いろんなものを用意してお待ちしております。

 山田さん 昔は墨田区ってどこにあるのとよく言われましたが、今は知らない人はいません。われわれもそれにこたえて自助努力を重ねます。きっと素晴らしいまちになると思います。

 小林さん 日本の文化ほど素晴らしいものはありません。日本の芸能、着物、すべて花柳界には残っていますので、それをなくさないように頑張っていきたいと思います。

 愛川さん さっきB級グルメの話をしましたが、食事だけでなく、甘いものが意外と穴場だと思います。

◇ツリーのできるまで

2003年12月   NHK・民放キー局が600メートル級新タワー建設推進プロジェクト発足。その後、自治体が相次ぎ誘致に名乗り

 04年11月25日 墨田区長が誘致を表明

 05年3月28日 墨田区が第1候補地に

 06年3月   墨田区が建設地に最終決定

 08年6月10日 名称「東京スカイツリー」決定

   7月14日 着工

 09年8月7日 高さ100メートルを超える

   10月16日 計画変更、高さを610メートルから634メートルに

   11月10日 高さ200メートル超える

 10年2月16日 高さ300メートル超える

   3月29日 高さ338メートルに到達、東京タワー超え日本一に

   5月5日 第1展望台の工事始まる

   7月30日 高さ400メートル超える

(以下は予定)

 11年春    高さ634メートルに到達

   12月   竣工(しゅんこう)

 12年春    開業

 

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