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【東京新聞フォーラム】

「都の企業 21世紀の夢づくり」 パネル討論

たなか よしあき (社)東京都信用金庫協会専務理事。1950年生まれ。73年日本大学商学部卒業後、東京都信用金庫協会入会。地域協調推進部、広報部、経営対策部、業務部の部長を歴任。事務局長、常務理事を経て2007年7月より現職。(株)しんきんカード取締役ほか関連企業の要職を兼務。

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信金は業務開拓も支援 田中 良明氏

 植木編集委員 中小企業支援で、信用金庫は金融とともに、経営指導でも重要な役割を果たされています。日々の活動で感じられる中小企業の現状はいかがでしょうか。

 田中さん 「政府では返済猶予とか、貸し渋り防止対策を検討されているが、仕事がないんだから景気対策をやってほしい」という声を非常に多く聞きます。信金は営業地域が決められています。その地域で一回不備があると、次からはもう地元の皆さまに相手にしていただけない。他地域に行けないわれわれは地元で変なことはできません。

 今後も制度融資、保証業務で積極的に対応していくとともに、現在、都内二十三金庫のうち十四、五金庫で、ビジネスチャンスが欲しいとのご要望におこたえするべく、大学などの研究機関、官と連携した産学官のビジネスマッチングなどの工夫を行っています。

 われわれは、企業の皆さまの励みになればと企業表彰制度も設けています。企業を審査する専門の先生方はどうしても製造業の技術に目が行くようで、やはり町工場は強いなと実感させられました。岡野工業さんは平成十九年に最優秀賞をとっておられます。

 岡野さん 今はコンピューターが発達して、自動車でも、どこか悪いところがあるとコンピューターが教えてくれる。だから自動車修理屋さんがいなくなっちゃったんだけど、機械で解決できることは実は限られている。機械でわからないことを見て、機械でできないことをやるのが職人だよ。最後はデジタルじゃなくてアナログ。これは自信を持っていえるね。

 でも、アナログだからって、朝はアナログ時計で出勤、夕方はデジタル時計で五時ピッタリに帰ってちゃ、とても職人になれないよ。午前八時から午後五時までは社長の仕事をして、五時から翌日の朝までが自分の時間。その間に技術を勉強する。月給をもらうんじゃなく、月謝を払う気持ち。技術ってのはそういうものだ。ただ、独立を目指すなら、技術バカじゃだめ。注文取りの営業もできなきゃいけないし、ネットワークもなきゃいけない。技術屋を目指す人に言っておくよ。

 植木編集委員 当フォーラムも朝まで続けたい気分です。本当にお名残惜しいですが、本日はどうもありがとうございました。

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世界的な技術を生かすために 編集委員・植木幹雄

 編集委員になって街を歩く機会が増えた。商店街を中心に、町工場などの個人経営に近い小さな会社、そしてその周辺の街。どこも元気がない。

 それだけに、岡野さんのすごさは強烈に映る。「カリスマ職人」とまでいわれる高い技術力。そして独特な経営哲学が、技術の声価を高めている。利益を独占しない、もうかっている仕事でも、先を見越して売却するという見切りの早さなど数知れない。

 過去、中小企業、特に町工場の経営者は「職人は技術さえあれば」と、大企業の言うがままで、「経営」の認識はどうだったろうか。

 岡野さんが「町工場が百消えれば百の技術が消える」と指摘するように、さまざまな分野で世界が認める技術を持つ工場は多い。これらが姿を消し続けるとどうなるか。考えると怖くなる。

 町工場自身の意識改革に加え大企業、行政、金融機関など関係機関の対策が進まない限り「技術立国」の未来は見えてこない。だが、時間は待ってくれない。岡野さんの教えには、今を乗り切る数多くのヒントがある。

 また、製造業だけでなく、さまざまな業界で参考になるのも岡野流経営哲学の特徴だ。

 

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