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【なるほどランド】

なぜ秋に色づくの

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 ♪秋の夕日に 照(て)る山もみじ−。ことしも、木々の葉(は)っぱが赤や黄色に色づく季節(きせつ)がやって来ました。毎年私(わたし)たちを楽しませてくれる紅葉(こうよう)。なぜ秋に色づき、葉っぱの中でどんな変化(へんか)が起(お)きているのでしょう。紅葉について調(しら)べてみました。

<どうして>気温低下で冬支度開始

 「一口に『こうよう』と言っても、植物(しょくぶつ)の葉(は)が赤くなることを紅葉(こうよう)、黄色くなることを黄葉(こうよう)と記すんですよ」。教えてくれたのは名古屋(なごや)市東山(ひがしやま)植物園の安藤定治(あんどうさだはる)さんです。文字(もじ)通り、赤色系(けい)になる木と、黄色系になる木に大きく分かれます。

 赤色に変(か)わる代表的(だいひょうてき)な木はイロハカエデなどのカエデ類(るい)。コナラやカシワ、ブドウも赤く色づきます。黄葉する木は、街路樹(がいろじゅ)で見るイチョウやポプラなど。黄葉した葉から、みたらし団子(だんご)のような甘(あま)いにおいを出すのはカツラです。いずれも冬に葉を落(お)とす落葉樹(らくようじゅ)です。

 木は紅葉の時季(じき)をどう察知(さっち)しているのでしょう。「一日の最低気温(さいていきおん)が十度以下(どいか)になると色づき始(はじ)め、八度以下で色づきが早まるといわれています」。気候(きこう)と植物の関係(かんけい)に詳(くわ)しい龍谷(りゅうこく)大の増田啓子教授(ますだけいこきょうじゅ)はそう説明(せつめい)します。気温が下がり始め、落葉樹が冬支度(じたく)を始めるときに起(お)こる現象(げんしょう)が紅葉なのです。

 夏から秋口にかけての天気は、色づき具合(ぐあい)にも関(かか)わってきます。「鮮(あざ)やかな色になるには一日の寒暖差(かんだんさ)が大きいことや、適度(てきど)な日照量(にっしょうりょう)や降水(こうすい)量が必要(ひつよう)です」と増田さん。また、猛暑(もうしょ)で葉が枯(か)れたり、台風で葉が傷(いた)んだりした年は、色づきがいまひとつになるといわれています。

<葉の中は>色素により緑から変化

 葉(は)は細胞(さいぼう)に含(ふく)まれるクロロフィルという緑色(みどりいろ)の色素(しきそ)によって青々としています。色が変(か)わるとき、葉の中でどんな現象(げんしょう)が起(お)きるのでしょうか。

 「木が葉を落(お)とそうとするとき、葉と枝(えだ)の境(さかい)に離層(りそう)ができ始(はじ)めます」と話すのは東京農工(とうきょうのうこう)大の星野義延准教授(ほしのよしのぶじゅんきょうじゅ)。離層は細胞が死(し)んで固(かた)くなった部分(ぶぶん)のことです。気温(きおん)の低下(ていか)や一日の日照(にっしょう)時間が短(みじか)くなるにつれて離層は完成(かんせい)し、根(ね)から吸(す)い上げた水や、葉で光合成(こうごうせい)して作った糖(とう)などの養分(ようぶん)が行き来できなくなります。

 同時に葉の細胞の中で、クロロフィルは分解(ぶんかい)して減(へ)り、行き来できない糖はたまっていきます。「この糖から赤い色素のアントシアニンが作り出されることで、葉が赤くなるのです」と星野さん。「つまり紅葉(こうよう)は、葉に残(のこ)った余分(よぶん)なものを処分(しょぶん)する過程(かてい)で起こる現象といえるでしょう」

 では黄色は? 葉の細胞の中にはもともと、クロロフィルのほかにカロチノイドという黄色の色素が含まれています。離層ができるとクロロフィルは急速(きゅうそく)に分解し、減っていきます。すると残っているカロチノイドの黄色が浮(う)かび上がるというわけなのです。

 私(わたし)たちに身近(みぢか)な紅葉。謎(なぞ)もあります。星野さんは「なぜ赤や黄色なのか、色の意味(いみ)には諸説(しょせつ)あり、まだよく分かっていません」と話します。

<見頃いつ>温暖化影響 昔より遅く

 紅葉(こうよう)の見頃(みごろ)はいつなの−? 日本気象協会(きしょうきょうかい)(東京(とうきょう))は全国(ぜんこく)百七十二地点の見頃予想(よそう)を無料(むりょう)サイトに載(の)せています。見頃は木の八割以上(わりいじょう)色づいた状態(じょうたい)としました。「予想は九月の平均気温(へいきんきおん)や標高(ひょうこう)、例年(れいねん)の傾向(けいこう)などに着目(ちゃくもく)して計算しました」と担当(たんとう)の東山(ひがしやま)真理子(まりこ)さん。日本観光振興(かんこうしんこう)協会から提供(ていきょう)された過去(かこ)の色づき情報(じょうほう)も使(つか)いました。

 例(たと)えば北海道(ほっかいどう)の阿寒湖畔(あかんこはん)。ことしは例年より半月ほど遅(おそ)い十月下旬(げじゅん)を見頃と予想し、当たりました。井上(いのうえ)紗斗子(さとこ)さんは「九月の平均気温が、平年と比(くら)べ二・四度(ど)高かったので遅くなりました」と説明(せつめい)します。ことしは全国的(てき)に遅く、愛知(あいち)や千葉(ちば)の一部(いちぶ)は十二月上旬と予想されています。

 「実(じつ)は二〇一〇年までの約(やく)五十年間に、見頃は全国平均で十九日遅くなりました」。こう指摘(してき)する増田(ますだ)さんによると、一九六〇〜二〇一〇年の九〜十一月の全国平均気温は一・二五度上昇(じょうしょう)しました。「地球温暖化(ちきゅうおんだんか)の影響(えいきょう)を受(う)けている」といいます。

 増田さんは、京(きょう)都府(とふ)地球温暖化防止(ぼうし)センターなどと府内のカエデの定点観測(ていてんかんそく)をして、紅葉と気候(きこう)の関係(かんけい)を調(しら)べています。「紅葉の記録(きろく)を続(つづ)けると地球環境(かんきょう)の変化(へんか)が見えてくることを子どもたちにも知ってほしい」と話しています。

 小学3年生までが学習していない漢字を中心に振り仮名を付けています。

 

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