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【なるほどランド】

缶で袋でご飯を炊こう

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 大地震(おおじしん)や津波(つなみ)、水害(すいがい)などの災害(さいがい)が発生(はっせい)すると、停電(ていでん)が起(お)きたり、道具(どうぐ)が足りなくなったりしてご飯(はん)が炊(た)けなくなるかもしれません。でもあきらめずに、行動(こうどう)を起こせば乗(の)り切ることができるかも。ここでは二つの炊き方を紹介(しょうかい)します。家族(かぞく)でチャレンジしながら、防災(ぼうさい)について考えてみましょう。

<缶を釜に>燃料は牛乳パック使う

 一つ目の炊(た)き方は、サバイバル・メシタキ、略(りゃく)して「サバメシ」。空き缶(かん)を使(つか)ってご飯(はん)が炊けるおもしろ技(わざ)です。考案者(こうあんしゃ)に習(なら)ったという愛知県(あいちけん)高浜(たかはま)市高浜小学校の前校長、坂倉(さかくら)澄夫(すみお)さんに方法(ほうほう)を見せてもらいました。

 用意(ようい)するのは三百五十ミリリットルのアルミ缶二つ、一リットルの牛乳(ぎゅうにゅう)パック三つ、アルミホイル、軍手(ぐんて)、缶切り、カッター、米〇・八合、水一合。「米は洗(あら)わなくても炊けるよ」と坂倉さん。ぬかを洗い落(お)とす方がおいしく炊けますが、災害(さいがい)時には、米を洗えない可能性(かのうせい)もあります。

 燃料(ねんりょう)となる牛乳パックは、洗って乾(かわ)かしてから、一センチ幅(はば)の短冊状(たんざくじょう)に切っておきます。缶は缶切りで上の面(めん)を取(と)り除(のぞ)き、一つは釜(かま)、一つはこんろとして使います。こんろには、大きめのカッターで横(よこ)三センチ、縦(たて)一・五センチの穴(あな)を上下に二カ所(しょ)ずつ、計四カ所開(あ)けておきます。釜には米と水を入れ、アルミホイルでしっかり密封(みっぷう)。「缶の縁(ふち)に沿(そ)って、しっかりと指(ゆび)でつまむようにして密封するといいよ」

 平(たい)らな地面にこんろを置(お)き、上に釜を重(かさ)ねたら準備完了(じゅんびかんりょう)。燃料を一本点火して、上の穴からこんろに入れ、火が消(き)えないようにくべ続(つづ)けます。燃料は、炊きあがりに必要(ひつよう)な三十分ほど燃(も)やし続けられるだけ用意されているはず。坂倉さんは「最後(さいご)の一分間、燃料を多く入れて強火(つよび)にすると、よりおいしく炊きあがります」とアドバイスします。

<袋の中で>米と水の量同じで30分

 次(つぎ)に紹介(しょうかい)するのは、とっても簡単(かんたん)な「袋(ふくろ)ご飯(はん)」。ビニール袋に米と水を同じ量(りょう)だけ入れて、煮立(にた)った鍋(なべ)に三十分間入れておくと、袋の中でご飯が炊(た)けます。

 三重(みえ)中京(ちゅうきょう)短大(たんだい)食物栄養(しょくもつえいよう)学科の前学科長、土井(どい)喜美子(きみこ)さんが十年くらい前に考え出しました。「水と熱(ねつ)さえあればご飯は炊けるはず」と、簡単な方法(ほうほう)を探(さが)し求(もと)めたのがきっかけで、いろいろと試(ため)しながら編(あ)み出しました。

 用意(ようい)するのは米一カップ、水一カップ、それと料理(りょうり)で使(つか)う厚(あつ)めのビニール袋一枚(まい)。米と水をビニール袋に入れて、固(かた)く結(むす)びます。鍋に入れたときに浮(う)いてこないよう、袋の空気はなるべく抜(ぬ)きます。「ストローで吸(す)い出すのも一つの方法ですね」と土井さん。鍋に入れた後の火加減(ひかげん)は「ふたをしないで、コトコトと煮ます」。

 この方法が優(すぐ)れているのは、煮るのに利用(りよう)するのは水道水でなくても大丈夫(だいじょうぶ)だということ。飲(の)み水が限(かぎ)られ、洗(あら)い物(もの)も制限(せいげん)される被災(ひさい)地では役立(やくだ)ちます。袋を人数分用意すれば、炊きあがったご飯を分配(ぶんぱい)する手間も省(はぶ)けます。あさりのつくだ煮を入れれば味(あじ)ご飯、カレー粉(こ)と冷凍(れいとう)のミックス野菜(やさい)などを入れればカレーチャーハン、小豆(あずき)を入れれば赤飯(せきはん)、と工夫(くふう)次第(しだい)でいろんな味が楽しめますし、米を1/5カップに減(へ)らせば赤ちゃんや病人向(びょうにんむ)けにおかゆもできます。

<災害時に>生き抜く力身に付けて

 これらの炊(た)き方を覚(おぼ)えておけば、もう何があっても安心(あんしん)? いえいえ、実際(じっさい)に災害(さいがい)に遭(あ)ったら、もっと過酷(かこく)で大変(たいへん)な生活が待(ま)ち受(う)けているかもしれません。サバメシを考え出した、茨城県(いばらきけん)つくば市で地滑(じすべ)りなどの災害を研究(けんきゅう)している内山(うちやま)庄一郎(しょういちろう)さんは「サバメシ作りを通して、手元にある道具(どうぐ)と知恵(ちえ)で災害を生き抜(ぬ)く心掛(こころが)けを身(み)に付(つ)けてほしい」と訴(うった)えます。

 土井(どい)さんは、もともと袋(ふくろ)ご飯(はん)でおいしく炊こうとして、米と水の割合(わりあい)を一対(たい)一・三としていました。しかし「被災(ひさい)したら、はかりなんて使(つか)えない」と考え直し、単純(たんじゅん)な方法(ほうほう)に切り替(か)えました。そして長期(ちょうき)にわたるかもしれない避難(ひなん)生活で、飽(あ)きないメニューを考えるようになりました。

 三月の東日本大震災(だいしんさい)では、被災地で袋ご飯を作っている映像(えいぞう)が流(なが)れているのを見た土井さん。「とにかく一回やってみることが大事(だいじ)」と強調(きょうちょう)します。方法を一つ覚えておくことで、心にゆとりが生まれ、非常(ひじょう)時にも対処(たいしょ)しやすくなる、と説(と)きます。

 

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