時計の針は午前5時13分を指していた。太平洋の水平線に浮かんだ雲の上から、朝日が満面を輝かして現れた。大小の漁船が黒潮の大海に浮かぶ。やがて眼前には、豪快な美しい海岸線が映し出されていく。まるで絵画のようだ。
時節によっては日本一早いといわれる銚子の日の出に幸運にも巡り合うことができた。海岸近くのホテル屋上では、宿泊客たちがカメラのシャッターを切る。横浜から日の出を見にきたという若いカップルが「わあすてき、感動!」と思わず跳び上がって抱き合っていた。
千葉県の房総半島。何かと話題になるのは、南国ムード漂う南房総だろう。だが、北東に位置する利根川沿いの低地とその隣に広がる台地には、地域の特性をうまく活用した豊かな大地と海の恵みがいっぱい。
3年連続漁獲高日本一になった銚子港の味覚は後のお楽しみとして、まずは豪快な犬吠埼の突端にそそり立つ灯台に足を運ぼう。99段のらせん階段を上り切った眺望は、海を独り占めにした錯覚を覚えてしまう。
1874(明治7)年に英国人ヘンリー・ブラントンによって造られ、1998(平成10)年に「世界歴史的灯台百選」に選ばれた。海の安全をひたすら守り続ける風格のある白亜の塔は、銚子を代表するスポット。やっぱり絵になる。