谷中の「夕焼けだんだん」を上がり、日暮里駅に近くなってきたら醤油のいい香りが漂ってきた。見るとつくだ煮屋「中野屋」と書かれたお店があった。建物はいかにも由緒ありそうである。
子供の頃、つくだ煮が大好きで、いつもご飯をちょっと残し、椎茸と昆布のつくだ煮を載せて、祖父にお茶をかけてもらってお茶漬けにして食べるのが気に入っていた。中学になってもそれは続き、「二色弁当」といえば友人は鶏肉のそぼろ煮だったのに、私はアミのつくだ煮だった。
つくだ煮を食べなくなって久しい。スーパーなどで売っているのは添加物が多く、買う気になれないのだ。
種類が色々あるので感心して眺めていると、お店の方は説明をしてくれ、「３世代にも渡って買いに来るお客様もいる」とにこにこ語った。昔ながらの「つくだ煮屋」を発見し、嬉しくて沢山買い求めてしまった。さて、今日は昔のようにお茶漬けにしてみようか。

（東京都　菊川　真澄）

下町散策が趣味の私にとって、何よりの楽しみは、歴史の名残との思いがけない出会いです。
先日は、荒川区西日暮里にある富士見坂へ行こうと、日暮里駅から歩いていたところ、経王寺というお寺の横を通りかかりました。
何となく気になって山門をくぐろうとしたところ、そこにはたくさんの穴が。
何の穴だろうとそばに立っていた看板を見ると、あの戊辰戦争の１つである上野戦争の際、新政府軍が撃った鉄砲の痕とのこと。
上野戦争の弾痕跡と言えば、移設された寛永寺の黒門がある南千住の円通寺さんが有名ですが、経王寺さんのものは場所も当時のまま残されております。
私が下町散策をするときの決めごとは、事前に調べすぎないこと。
きっとどこかでこうしたサプライズを期待しているのでしょう。
たとえ見逃した場所があっても、また行けばいいやと思うくらいが散策にはちょうどいいと勝手に思っています（笑）

（東京都　大澤範之）

私は土手に座り、目の前を横切る電車を眺めていた。夕焼けの映える荒川近辺は、生まれ故郷にどこか似ている。当時、大学卒業間近なのに就職がまだ決まっていなかった。下りの東武伊勢崎線の電車に乗れば故郷まで二時間で帰れるのに、帰れない。地元の企業には全て落とされたのである。
この荒川土手は大学のクラブで毎日のように走った場所。気が落ち着く場所であった。
「ファイト！」野球少年たちが通り過ぎた。ため息をついても始まらない。
「さあ、この東京でもう一度頑張ろう！」
夕日で輝く上りの電車が見えた時、私は立ちあがった。
荒川小菅緑公園。
昭和５４年２月の寒い夕暮れ時のことであった。

（神奈川県　赤谷康憲）

薔薇が美しい三ノ輪駅からサンシャイン近くを通り早稲田駅迄走行している都電の旅がお薦め。５００円の「１日乗車券」で乗降自由。桜の名所の「荒川二丁目駅」では荒川自然公園で白鳥を眺め、季節の散策が楽しい。「町屋駅」では、千葉から来た行商のおばあちゃんの露天が楽しい。区内の「ジョイフル三ノ輪商店街」「荒川仲町商店街」等で安価・豊富な商品を購入して店主と会話も楽しめる。「熊野前駅」は「日暮里・舎人ライナー」のモノレールが頭上を走る。「荒川遊園地前駅」で下車すると、池で釣りも出来る。ここの動物園には１０歳未満が乗れるポニーや牛も居る。イタリア製のジェットコースターや豆汽車等が有る区立遊園地が有る。観覧車に乗り真下の隅田川を眺めると雄大な気持ちになれる。名物もんじゃや、たこせんで満腹だ。都電も青やピンク、レトロカラーとオシャレになった。「荒川車庫前」の旧型都電で歴史を学ぶ事が出来る。区内走行はここ迄。

（東京都　高橋　美優喜）

東京では銭湯をよく見かけた気がします。
でも、あえて銭湯に行くことってなくて。
皆さんはありますか？？
日暮里に斉藤湯という昔ながらの銭湯があるんです。
「番台」とか「ながしの札」とかがあって、
なんだろう……昔からずっとあるんだなって感じられる
懐かしい、温かい気持ちになる場所です。
お客さんも常連さんが多いようで、実にアットホームなんです。
変わり湯が定期的にあるようで、
その日はローズマリー湯ということでしたが、
きもちいい！肌がぜんぜん違うんですよ。つるつる！
なんだか下町は落ち着いて、
大好きなんですよね。
関西人の私までそこで生まれ育ったような気がしてくる。
そんな下町の良さを感じさせてくれる銭湯なんですよ。
ちょっと気が向いたら、寄り道してみてください。
きっと、その日が良い一日になりますよー♪

（大阪府　谷口　千紘）