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「厄介者」で焼かないれんが 瀬戸の大量産業副産物 新たな資材へ活用期待

手前左の微粒珪砂「キラ」に紙コップ内の酸化マグネシウムを混ぜ、干して作ったれんが。中心になって研究を進めている道尾助教(左端)=長久手市の愛知淑徳大で
手前左の微粒珪砂「キラ」に紙コップ内の酸化マグネシウムを混ぜ、干して作ったれんが。中心になって研究を進めている道尾助教(左端)=長久手市の愛知淑徳大で

■愛知淑徳大・研究グループ

 長久手市の愛知淑徳大の研究グループがガラスの原料・珪砂(けいしゃ)を精製するときに出る微粒珪砂「キラ」を使い、焼かずにれんがやタイルを作る取り組みを進めている。キラは瀬戸市で大量に産出される産業副産物だが、これといった活用法もない“厄介者”。作り方も簡単で、新たな資材としての可能性が広がる。(水越直哉)

 研究しているのは愛知淑徳大メディアプロデュース学部助教の道尾淳子さん(32)ら。焼かずにれんがなどを作る技術は、東京の建築家山下保博さんらが考案した。道尾さんは、瀬戸の土でもできないかと考え、山下さんにアドバイスを求めながら試行錯誤を重ねてきた。

 作り方は極めて簡単。土と酸化マグネシウム、水を混ぜて成形し、干すだけ。水分が抜ける間に化学反応が進み、硬化するのだという。普通のれんがのように超高温で焼く必要はなく、硬化後は雨を吸い込むこともない。山下さんは、この手法で作られたれんがで家も建てた。

 本来は土が使われるが、道尾さんは瀬戸ではただ同然で膨大な量が手に入るキラに着目。試したところ、粒子が小さいため、きめ細かで白っぽくモダンな質感が出た。強度は実験中だが、今のところ、建築確認が取れたれんがにひけを取らないという。ただし、れんがなら乾燥するのに3週間もかかるのが短所だ。

 道尾さんらは産地・瀬戸で認知度をさらに高めようと20、21日に催される陶祖まつりに合わせ、キラのタイル作りを体験できるワークショップを開く。道尾さんは「産業副産物として処理に困っているキラを、利活用できるよう研究成果が役立てばいいですね」と期待している。

 【キラ】 珪砂を精製すると1〜2割がキラとして排出される。粒子が細かくガラス製造に向いていないとされ、ほとんどが採掘地に埋め戻される。業界団体によると2012年度は少なくとも12万トンが排出された。これまで一部が道路舗装や亜炭鉱山の埋め戻しなどに使われたが、継続した取り組みには至っていない。

(2013年4月18日 中日新聞朝刊なごや東版より)

[2013.04.18]

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