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【放送芸能】

ベルリン映画祭 in 仙台 被災地に夢と勇気を

 東日本大震災の被災地の復興支援を目的にした「第一回ベルリン国際映画祭 in 仙台」が二十八日から三十一日まで、仙台市で開催される。世界三大映画祭の一つ、ベルリン映画祭の関連イベントがドイツ国外で行われるのは初めて。同映画祭のジェネレーション部門(児童・青少年向けの部門)に出品された優秀作品の上映のほか、同部門のディレクター、マリアンヌ・レッドパースさんを招いたシンポジウムなどが予定されている。 (井上喜博)

 今回のイベントは、一九五一年に始まったベルリン国際映画祭が、第二次世界大戦ですべてを失ったドイツ人に未来への希望を与えたことにあやかりたい仙台市民と、東日本大震災の被災地を支援したい映画祭側の思惑が一致して実現したという。

 上映作品は、子どもたちの心の傷をいやす楽しい映画、現実に前向きに取り組む映画という二つの切り口から、計十三本を選定。地震の被害を受けながらも、土地に愛着を抱いて生きるセミの姿を描いた平林勇監督の「663114」(戦後66年の3月11日に起きた4基の原発事故を指す)も含まれている。

 映画祭に合わせ、「ローカルからグローバルへの視点」と題したシンポジウムも開催。レッドパースさんのほかに、東京国際映画祭の矢田部吉彦プログラミングディレクターらが参加して、地域の映画製作者が海外展開するのに必要な戦略などについて意見を交わす。

 「東日本大震災から二年が経過し、被災地の復興は全然進んでいないのに、早くも人々の記憶から忘れ去られようとしている」と話すのは嘉村康祐・運営事務局長。「映画祭の開催を通じて、震災が風化するのを防ぐとともに、被災地の子どもたちに夢と勇気を与えたい」

 東日本大震災での宮城県の死者・行方不明者は一万八百三十八人で、両親を失った震災孤児は百三十五人、どちらか片方を失った震災遺児は九百二人に上った。また県内の四十六の小中学校が、仮設校舎や他校の施設を利用しての授業を強いられ、子どもたちの心のケアも大きな課題となっている。

 運営事務局は今回の映画祭に先立ち、国際的に活躍する映画監督と被災地の子どもたちの交流も企画。今年のベルリン国際映画祭で映画「かぞくのくに」が国際アートシアター連盟賞を受賞したヤン・ヨンヒ監督が昨年十二月と今年二月、仙台市の中野栄小学校を訪れ、六年生の児童を対象に自作をテーマにした総合学習の授業を行った。

 「第一回ベルリン国際映画祭 in 仙台」は仙台市青葉区の東京エレクトロンホール宮城と、せんだいメディアテークを会場に行われ、すべて入場無料。参加希望者は公式ホームページから事前に申し込む(先着順。当日席あり)。運営事務局ではクラウドファンディング「HOT HAND」を通じて支援者を募集している。詳しくは同ホームページへ。

 <ベルリン国際映画祭> ベルリンで毎年2月に開催される国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の映画祭。ベネチア、カンヌとともに世界3大映画祭と称される。コンペティション部門の最高賞は金熊賞で、過去に日本の作品では「武士道残酷物語」(1963年)と「千と千尋の神隠し」(2002年)が受賞。今年の映画祭では、東日本大震災で被災した自宅の再建に取り組む老人の姿を追ったドキュメンタリー映画「先祖になる」(池谷薫監督)が特別表彰を受けた。

 

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