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【政治】

「成年後見」控訴するの? 政府と与党で綱引き

 認知症や障害で判断能力が十分でない人に成年後見人が付くと選挙権を失う公職選挙法の規定に対し、東京地裁が違憲判決を下した。与党からは規定を見直す法改正の動きも出始めている。控訴期限が二十八日に迫る中、政府が控訴するのかが注目を集めている。 (大杉はるか)

 Q なぜ成年後見人が付くと選挙権を奪われるの。

 A 公選法一一条で「選挙権及び被選挙権を有しない者」として成年被後見人が規定されているからだ。明治時代からあった禁治産制度が二〇〇〇年に廃止され、今の成年後見制度に代わった時、禁治産者に選挙権を与えない法の規定がそのまま残った。

 Q 合理性はあるのか。

 A 政府は「精神上の障害により識別能力が欠けている人は、政治参加は期待できない」と説明してきた。でも判決では「被後見人が総じて選挙権を行使する能力を欠くわけではないことは明らか」と否定された。海外では障害のある人にも選挙権を認めるのが潮流になっている。

 Q 政府は控訴するのか。

 A 協議中だが、今のところ「控訴せざるを得ない」との意見が強い。控訴をやめれば、夏の参院選から被後見人に選挙権を認める手続きが必要になる。政府関係者は、法改正を含めて間に合わないと主張する。また同様の裁判が係争中で、東京地裁と違う判決が出れば混乱を招く恐れもあるとの論理も持ち出し、谷垣禎一法相は「(最高裁の)上告審までいって判例が統一されれば混乱することはない」としている。

 Q 最高裁判決まで待っていたら何年もかかってしまう。

 A 自民、公明両党は違憲判決を受け、被後見人の選挙権を認める法改正の検討で合意した。公明党の井上義久幹事長は「国会で改正するなら控訴の意味はない」と政府に断念を迫り、駆け引きが激しくなっている。

 Q 同種の裁判で政府が控訴しなかった例は。

 A 十二年前にハンセン病患者の隔離政策を違憲とした地裁判決が出た際、当時の小泉純一郎首相が時の世論などを踏まえ、控訴しない政治決断をした。当時の官房副長官は安倍晋三首相だ。政府内には今回はいったん控訴した後、法改正などの手続きが整った時点で取り下げるとの二段階論も出ている。

 

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