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【社会】

最古の国産投影機 東京・荒川のプラネタリウム 閉館前に100人が別れ

最後の上映が終わり、閉館を惜しむ来場者

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 ありがとう。お疲れさま−。国内のプラネタリウムで国産としては現役最古の投影機が二十三日、四十九年の仕事を終えた。東京都荒川区立プラネタリウム館にある五藤光学研究所(府中市)製の「S−3」型機。建物の老朽化のため今月末で閉館する。最後の一般投影には、子どもたちやファンら約百人が感謝と別れを告げた。 (竹上順子)

 一時間のプログラムの最後に朝焼けとともに星が消え、館内の照明がつくと、観客から拍手が湧き起こった。解説員の杉本幸子さん(71)は「無事に閉館できます。ありがとうございます」とあいさつ。その後も大勢の人たちが名残惜しそうに館内にとどまり、投影機や、スクリーン下部に客席をぐるりと三六〇度囲むように東京の街並みを再現した手作りのシルエットの写真を撮っていた。

 一九六四年、区立科学館の付属施設として開館。小学校の理科の授業のほか、第二、第四土曜の月二回、一般向け投影を実施してきた。古い機械の珍しさや肉声の解説が人気で、ここ数年は北海道や関西からも愛好家が訪れ、年間約千四百人が来館していた。

 直径八メートルのドーム中央に置かれた投影機は、中の電球の光を周りのレンズに通し、星をスクリーンに映すタイプ。恒星を映す「恒星球」や、太陽や月、水星、金星などを映す「惑星棚」、モーターや電球に電気を送る「スリップリング」と呼ばれる円盤など、機械の仕組みが外から見える点が人気を集めた。

 コンピューター制御された最新機器と違い、操作は全て手作業。解説員は一人で投影機を操作しながらいくつものスイッチを入れて星座を映す一方でBGMを流し、解説の原稿を読んだ。

 プログラムはほぼ自作で、毎回違う内容。この日、杉本さんは「今夜九時の空」に続いて、ギリシャ神話のスライドを映した後、自分で組み立てたプログラム「宇宙の広がり」を上映した。

 中学校の理科教員を定年退職後、六年七カ月間、解説員を務めた杉本さんは「科学だけでなく歴史や文化まで幅広いのが、星の世界の面白さ。これから寂しくなります」としんみりと話していた。

 区は投影機を保存する予定で、今後は公開も検討している。

 

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