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【社会】

輝け、高校生漫画家 作新学院・伊十蔵さん 少年誌新人最高賞

鉛筆を走らせる伊十蔵さん=宇都宮市で

写真

 栃木県内の高校生が描いた漫画が、老舗の少年誌「週刊少年サンデー」の新人漫画賞で最高賞に選ばれ、「名探偵コナン」などの人気作と並んで掲載された。編集部が作品に添えた惹句(じゃっく)は「高校1年生の天才作家、現る」。読み切りの掲載に満足しない生徒は言う。「在学中の連載開始を目指す」 (内田淳二)

 二月発売の十号に載ったのは、不思議な力を持った男子高校生が主人公の「瘟鬼(おんき)」(疫病神の意)。いじめに遭う生徒を救う姿を、笑いや活劇を交えて描いた。

 「今だからこそ描ける世界観を出したかった。もう次作の準備中。経験を積まないと」。そう話す伊十蔵(いそくら)景さん(16)は、漫画に対してひたすらストイックだ。作新学院高校(宇都宮市)の美術デザイン科に通う。

 ちなみに名前はペンネーム。多くの漫画家が作品のイメージを大切にしようと写真や本名を公表しないように、プロを目指す伊十蔵さんも今から、性別まで伏せている。それだけ「本気」なのだ。

 幼いころから、絵を描くのが好きだった。小学生で「漫画家」という仕事があることを知って以来、憧れの職業に。中学三年でプロの道に進むと決め、漫画コースがある作新を選んだ。「高校に入ったら雑誌に投稿をしたいと思って。親からは最初、『大学を出てからにしなさい』と反対されましたが」

 今作が、生まれて初めて描いたストーリー漫画だった。敬愛する作品を何度も読み、コマ割りや表現方法を独学。テーマとしたいじめは身の回りではなかったが、同世代の身近な問題として想像力を働かせ、高校入学から約半年で仕上げた。「宿題やテストと両立させるのが大変で…」。現実生活はやはり普通の高校生だ。

 しかし、作品にはプロの編集者も舌を巻いた。「まず、絵にほれこんだ。誰が読んでも面白いと思える普遍性も持っている」。編集部の瓜生昭成さん(36)は絶賛する。サンデーの新人漫画賞「まんがカレッジ」の募集は年八回前後。しかし、最高賞の入選作は「該当なし」が多く、ましてや高校生が本誌掲載までされるのはまれだ。

 実はサンデーへの投稿を勧めたのは瓜生さん。伊十蔵さんがネットに載せていた絵を見つけ度肝を抜かれ、宇都宮まで異例のスカウトに訪れた。瓜生さんは現在、担当者として伊十蔵さんと次作を練る打ち合わせを重ねているが「機が熟し、編集長がGOを出せば在学中の連載もありうる」とも。

 「天才」とまで呼ばれてしまった伊十蔵さんは「そんなことないですよ」と顔を赤らめるが、将来を見据える目には迷いがない。「厳しい世界だけれど、それを乗り越えれば達成感がある。やってみなければ分からない。『不安』というより『楽しみ』です」

 

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