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【社会】

つながる親 都外へも 認可保育所不足で集団異議

杉並区議らも出席し認可保育所不足をテーマに話し合われたシンポジウム=24日、東京都杉並区で

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 「子どもを認可保育所に入れたい」という悲痛な思いに駆られた行動が広がっている。杉並など東京都内の四区に続き、さいたま市でも二十五日、入所を認められなかった親たちが、埼玉県内では初めて集団で、行政不服審査法に基づく異議を市に申し立てる。杉並区では二十四日、保育問題のシンポジウムに地元区議らも出席、当事者の訴えに耳を傾けた。対策に及び腰な行政との隔たりを埋めようと、母親らは各地で奔走している。 (柏崎智子、増田紗苗)

◆杉並でシンポ 区議7会派出席

 最初に集団での異議申し立てを取りまとめた市民団体「保育園ふやし隊@杉並」が開いたシンポジウムには、区議会十一会派のうち最大の自民党を含む七会派から議員十二人が出席。母親らの切実な訴えに区議会も向き合う姿勢を見せ始めた。主張の隔たりはあるものの、母親らは「こんなに来てくれるとは」と歓迎し、変化に期待を寄せる。

 区議会には昨年十一月、小学校跡地への認可保育所整備を求める陳情を、母親らが提出した。その際に各会派を回ったが、「認可保育所は財政的に無理」と一点張りの会派や、会おうともしない会派もあった。しかし、この日は、異議申し立てをした母親たちの熱意に打たれたように多くの会派が参加した。

 シンポジウムには、子どもが認可保育所に入れなかった夫婦ら約八十人も参加。ふやし隊の曽山恵理子代表と、保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんが、それぞれ待機児童の状況などを語った後、区議らが紹介され、あいさつした。

 無所属区民派の結柴(けしば)誠一氏は「皆さんの必死の取り組みで区が緊急対策を取り、一歩進んだ」と母親らの活動を評価。生活者ネット・みどりの未来の須黒奈緒氏は「廃園する私立幼稚園と交渉し土地や建物を利用するなど、まだまだやれることがある」と提案した。

 一方、区議会第一、二会派の自民、公明とは主張の隔たりも。

 自民党の富本卓氏は「保育園だけ造ればいいわけではない。少子高齢化で財政も厳しい」としながら「皆さんと建設的な話をし、いいものは杉並で一番に取り入れるよう頑張る」と表明した。

 公明党の横山江美氏は「認可保育所は(施設面積などが)国の基準で北海道から沖縄まですべて一緒。それを小さな杉並へ持ってくるのはやはり難しい」とし、認可外保育所に区が力を入れてきた状況を説明。

 これに、会場から「どこに生まれても子どもは子ども。場所で保育環境が違っていいという話はない。認可外や基準の弾力化は次善の策だ」と声が上がると、横山氏は「緊急対策としてやむを得ず、という意味。認可保育所の必要性は十分認識している」と補足した。

 十九日には区長にも面会し、意見交換をした。曽山代表は「子どものために杉並をよくしようと思っているのはみんな同じはず。安心で安全な保育所に預けられるようになるために、対話していきたい」と話した。

◆さいたま きょう申し立て

 さいたま市では二十五日、五人前後が異議を申し立てる。杉並区などで母親らが行った集団申し立ての動きを見て、行動を起こすことにした。

 さいたま市によると、市内の認可保育所は百四十六カ所あり、二〇一三年度の募集定員は三千八百六十六人。五千五十二人が申し込んだが、一次選考では約三割の千六百七十三人の入所が認められなかった。

 異議申し立てを決めたのは、さいたま市内の認可保育所に勤める保育士の三室英里奈さん(29)=埼玉県蕨市=ら。杉並区での集団申し立てを知った会社員阿部一美さん(34)=さいたま市緑区=らが「さいたまでもやろう」と呼び掛け、インターネットのブログや口コミを通じて集まった。

 三室さんはさいたま、蕨両市に長女いち花ちゃん(1つ)の入所を申し込んだが、一次、二次選考とも認められなかった。

 三室さんは昨年十一月に育児休暇を終え、隣の川口市にある実家にいち花ちゃんを預けて仕事に復帰したが、母親も仕事をしていて、父親は祖母の介護をしている。

 両親を頼り続けることはできず、「無認可保育所は安全面で抵抗がある」という。夫も同じ保育士だが、預け先がなければ共働きはできない。三室さんは今月末での退職を決めた。

 呼び掛け人の阿部さんは、長男の碧月(あつき)ちゃん(1つ)の入所が一次選考では認められなかったが、今月上旬、繰り上げで入所できるとの通知が届いた。阿部さんは「同じ思いの親から『八カ所を希望したのに駄目だった』『私たちの声も届けて』との声がメールなどでたくさん届いている。市には、親たちの悲痛な声に真剣に向き合ってほしい」と話している。

 

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