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【私説・論説室から】

茶色に染まり始めた朝

 「事なかれ主義」がファシズム台頭を許すと警鐘を鳴らし、フランスでベストセラー、多くの国でも翻訳された短編寓話(ぐうわ)『茶色の朝』。作者のフランク・パブロフ氏を仏グルノーブル市の自宅に訪ねたのは、邦訳が出版された九年前のこと。欧州で移民排斥など右傾化の嵐が吹き荒れ、日本も教科書検定問題など息苦しさが漂う時期だった。

 “茶色”とはナチスの象徴の色だ。あらすじはこうだった。ある日、毛が茶色以外のペットは法律で禁止された。これを批判した新聞が廃刊となり、本や服装、政党名に茶色が強制されていく。しかし、不自由のない日々だからと声を上げないでいると、過去に茶色以外のペットを飼った者まで逮捕される法律ができ、主人公に危険が迫る…。

 パブロフ氏は諭すように解説してくれた。民主主義を花瓶に例えて「少しだけ欠けたのをほっておくと、ひびはだんだん大きくなる。まあいいかと思っていると、いつの間にか割れてしまう」。毎朝起きたら注意を払い、時には行動しないと守れないものだ、と。

 そう、夏の参院選まではタカ派色を隠し、「国のかたち」を変えにかかるのは選挙後だろうと油断していると…。武器輸出三原則は例外の積み重ねですでに骨抜きに。集団的自衛権行使を模索する動きも、自衛隊の国防軍への改編や交戦権を認める新憲法づくりも、この国ではもう相当に前のめりなのだ。 (久原穏)

 

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