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【コラム】

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 サンフランシスコ講和条約が発効し、七年近い占領が終わったのは一九五二年四月二十八日。政府はこの日を「主権回復の日」として今年初めて式典を開く。その理由を、安倍晋三首相は戦争に負けた後、長い占領期間があった歴史を知らない若い世代が増えていることを挙げている▼多くの米軍の基地が存在し、墜落事故が続発した新型輸送機MV22オスプレイが沖縄と本土の上空をわが物顔で飛び回っているのが今の日本だ。占領されていたのは昔話ではない。そう思い込む若者がいても不思議ではない▼沖縄にとって4・28は再び本土の捨て石にされ、米軍による二十年間の軍事占領が始まった「屈辱の日」だ。祖国復帰した今も在日米軍専用施設面積の74%を押しつけられている県民が「何が主権回復だ」と怒るのは当然だ▼でも、こんな声は届かないようだ。政府は米軍普天間飛行場の移設に向け、名護市辺野古の埋め立てを認めるよう沖縄県に申請した▼「実現可能性を抜きに実行できると思うのは、普通考えられない」と仲井真弘多(ひろかず)知事は不快感をあらわにした。圧倒的な反対の声に背を向けた展望の描けない“見切り発車”だ▼「県外移転」は保革を問わない沖縄の声だ。交付金や公共事業など、従来の懐柔策で翻意できると考えているなら、県民への愚弄(ぐろう)が過ぎる。政権に早くもおごりの気配が漂ってきた。

 

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