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【栃木】

<センバツ甲子園>「あと一歩」健闘に声援 宇商ナイン「夏こそ」誓う

鳴門に敗れ、グラウンドを後にする宇都宮商ナイン=甲子園球場で

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 あと一歩及ばず−。第85回選抜高校野球大会2日目の二十三日、初戦を迎えた宇都宮商は鳴門(徳島)に1−2で惜敗した。34年ぶりの大舞台。宇商の歴史を塗り替える「甲子園で2勝」への挑戦はかなわなかったが、監督や選手は「夏も絶対に来る」と心に誓った。(内田淳二、池田友次郎)

 「かっとばせえ」。1点を追う最終回。宇商を応援する三塁側のアルプス席では、応援団だけでなく、観客たちも自然と立ち上がって声をからした。

 走者を三塁まで進め、中軸を迎えた大チャンス。相手投手が1球投げるごとに「おー」とどよめきがわき起こる。しかし、3番の五十嵐雄太選手(三年)が凡退したのに続き、5番の飯岡健太選手(同)が三塁ゴロに倒れると、歓声は一気にため息に変わった。

 試合は、強力な打撃で「渦潮打線」とまで呼ばれる鳴門を抑え、1点を争う接戦だった。

 待望の先制点は三回。右中間を破る三塁打を放った柴山和博選手(同)が暴投で生還。スタンドで見守った母親の弘美さん(41)は「たぶん息子より私の方が緊張していました。一打が出てほっとしました」。

 投げては、先発の飯岡選手が三回まで1失点。継投した新井諒(りょう)投手(同)が四回をぴしゃりと三者凡退で終わらせると、野球部の高下(こうげ)和博君(二年)は「今日は絶好調」と期待を高めた。

 守備も堅実。大会の一週間ほど前の練習で、遊撃手の小林和史選手(三年)が右手にけがをしたため守備位置が一部変わったものの、失策はなかった。

 しかし、八回裏。センター前の適時打で逆転されると、追いつくことはできなかった。最後まで声援を送り続けた応援団長の大島翔汰君(同)は「十分に力を発揮し、白熱した戦いを見せてくれた」と健闘をたたえた。

◆先輩に学んだ3番の誇り 五十嵐雄太選手(3年)

4回、左中間へ二塁打を放つ五十嵐選手

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 走者を必ずホームにかえす。それが3番打者の役割だと先輩の背中を見て心に刻んできた。だから、絶対に打ちたかった。

 「皆がチャンスをつくってくれたのに。申し訳ない気持ちでいっぱいです」。グラウンドを後にする選手の中でただ一人、大粒の涙を止められずにいた。

 1点を追う九回。打席は理想的な形で回ってきた。先頭打者の1番が二塁打で出塁し、2番が手堅い犠打で三塁に送った。

 「絶対にかえす」。そんな思いで臨んだが、気負いが空回りした。外角高めの球に手を出し、体が伸び上がった。打ち上げた球は三塁手のグラブに。「外野まで飛ばそうと焦ってしまった。気持ちが投手に負けていた」

 新チームになる前は1番を打っていた。3番は1年上で当時、主将だった高井和馬さん。「塁に出ると、必ずかえしてくれるという安心感があった」

 突出した選手はいないが、各自が持ち味を生かして戦うのが宇商の野球だ。新チームで監督から3番を任されると、目指す目標ははっきりとしていた。

 167センチと小柄ながら、筋肉をつけて入学当時から10キロ増やした体で長打も放つ。打率は4割を超え、一打が期待できる打撃の要へと成長した。

 高井さんら昨夏に引退した先輩からは「おまえたちの代なら、甲子園を狙える」との言葉を贈られていた。先輩の思いも背負って戦った甲子園。悔しさの中に、次の目標も見つけた。「勝負強さを身につけ、夏にこの借りを返したい」。次を見据えると、涙はもう乾いていた。(内田淳二)

 

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