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【健康】

風疹 近年にない大流行 妊婦は特に注意

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 関東地方を中心に、風疹(ふうしん)が流行している。特に妊娠初期の女性が感染すると、胎児が「先天性風疹症候群」になる場合があり、注意が必要だ。妊婦はワクチンを接種できないため、厚生労働省は家族などがワクチンを接種するよう呼び掛けている。 (稲熊美樹)

 感染症や予防接種に詳しい国立病院機構三重病院(津市)の庵原俊昭院長によると、国内で今回のような大きな流行があったのは、三十年以上も前。その間も局地的に小さな流行はあったが、「三十代以下は、ほとんどの人が感染した経験がないと考えたほうがいい」と話す。

 過去に、風疹と確定診断された場合以外は、感染したと思っても、実は別の疾患だった可能性もある。突発性発疹など、似たような症状が出る病気があり、間違って診断されることも少なくないという。

 国立感染症研究所の集計によると、今年に入ってから千二十九人(二月二十七日現在)の発症が報告されている。昨年の同時期に比べると、二十倍以上に激増している=グラフ。本来、冬は流行の季節ではなく、今後も増える可能性が高い。特に発症報告が多いのは東京、埼玉、神奈川、千葉。大阪や兵庫、愛知、静岡などでも報告があり、感染地域もじわじわと拡大している。

 発症報告の多くは十代〜四十代の男性。集団接種が女子中学生に限られていたり、一九九五年に個別接種に切り替えられたりした後の世代だ。せきやくしゃみなどで感染する。

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 最も心配なのは、妊娠中の女性が感染した場合の胎児への影響だ。中枢神経障害のほか、心疾患、白内障や緑内障といった先天性風疹症候群になる可能性がある。昨年は五人、今年も一人報告されている。難聴は母体が感染したときに妊娠一カ月だと、発生率が八割以上になる。妊娠四カ月でも五割ほど。ただ、妊娠五カ月ごろになると、いずれの障害も発生率はゼロに近くなる。

 胎児以外でも風疹は侮れない。子どもは一般的に症状が軽いが、重くなることもある。「脳炎が一番怖い」と、あいち小児保健医療総合センター(愛知県大府市)保健センター長の山崎嘉久医師。大人も発疹、高熱、血小板減少、関節炎などの症状が出る可能性がある。

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 一方、ワクチンの副作用は「ほとんどない」と庵原医師。接種後、五年ほどは抗体価が下がるが、それ以降はほとんど下がらず、生涯にわたって免疫が持続する。風疹の免疫があるかどうかは、採血して「HI抗体価」を調べると分かる。八倍や十六倍の場合は免疫が低く、ワクチン接種が必要だ。

 ただ、検査は必ずしも必要ない。「抗体がある人がワクチンを打っても問題ない。さらに免疫が高まる」と山崎医師。風疹の免疫が低い年代は、風疹だけでなく、麻疹(はしか)の予防接種もしていない人が多い。費用は少し高くなるが、流通量の多いMR(麻疹と風疹の混合)ワクチンの接種を勧める。

 妊婦自身はワクチンを接種できないため、妊婦の周囲の人がワクチンを打って、先天性風疹症候群を予防する。山崎医師は「同症候群は防げる障害。周りの人がワクチンを接種し、生まれてくる赤ちゃんの病気を防いで」と呼び掛ける。

 ワクチン接種後は、ウイルスが三〜四週間は体内にとどまるため、女性が接種した場合は二カ月間避妊する。ただ、接種後に妊娠が判明した場合でも、庵原医師は「ワクチンに含まれるウイルスは病原性が弱く、ウイルス量も少ないので、妊娠は継続しても大丈夫」と話す。米国で多くの妊婦にワクチンを接種した年があったが、先天性風疹症候群は一例も報告されなかったという。

◆中1、高3無料接種 助成は3月末まで

 現在、MRワクチンは公費助成の対象で、一歳児、小学校入学前一年間の幼児、中学一年生、高校三年生は、多くの自治体で、無料で接種できる。ただし、中一と高三の助成は三月末まで。大人は自費。費用は医療機関によって異なる。

 

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