東京大神宮から坂を下ると目白通り。このあたりから飯田橋までの間には、数々の「発祥の碑」が点在する。明治維新の後、旗本屋敷の跡地に国学院大学など名だたる大学や病院が開設した。
金型でプレス加工するバッジの製造業もこの街で誕生した。「九段の飾り職人に頼み、フランスの勲章をまねて作ったのが最初です」と日本徽(き)章商会 の甲斐田徳秋さん。職人が独立し戦前は同業者が密集。今は5軒ほどで職人も分散しているが、「仕上げまで分業で一つ一つが手作りです」。
2003年に完成した複合施設アイガーデンエアのあたりは、明治以来の貨物駅だった。「よく遊んだね。国鉄の官舎もあって店にテレビが来た日には町中 の住人が集まった」とファリーヌキムラヤの山崎尚宏さん。祖父が銀座木村屋から独立して開業。今も隣の工場で作る焼きたてパンを朝6時から販売している。 三ツ木園では、今でも家族同様の従業員が茶葉を調合し、近隣の会社に配達している。
戦後、出版社の多いオフィス街と化し、近年はタワーマンションも増えているが、そのはざまで昔ながらの商いが、街の歴史を伝え続けていた。(武居智子)
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