高島平駅を出ると目の前が高島平団地。１階に店が並ぶ棟が、いくつか連なっているのが見えた。「団地には商店街が６つ。戸数は１万を超えるからね。高齢 化しても３７年間、品ぞろえの多さは変わらないよ」と中央商店街の鈴木友一会長。米、野菜、鮮魚、総菜の店を中心に市場さながらの活気をみせる。

　団地の先にはけやき並木。赤塚公園の緑も目に染みる。街中の樹木が大きくみずみずしい。「以前は一面『赤塚たんぼ』と呼ばれる水田でした」と公園前でレストランを営む安井利昌さん。

　駅から遠ざかると商店街は憩いの空間に。森の小道のような緑地沿いには、住民の白井正さんが定年を機に開いたカフェ・タプローがあり、小川の名残をとどめる桜並木沿いには、大東文化大学「高島平再生プロジェクト」の拠点もある。

　駅の北側には熱帯植物や熱帯魚、小動物と気軽にふれ合えるスポットが点在。徳丸ケ原公園には町名の由来となった高島秋帆が幕末、この地で日本初の洋式砲術訓練をしたと記す碑も残っていた。

　公園近くに一昨年、パン店を開いた下条幸美子さんは「パセリのように街に新たな彩りを添えたい」。団地の上に夕焼け空が広がっていた。（武居智子）