久我山駅を降りると、神田川の川べりの緑が目に飛び込む。踏切の音がのどかに響き、吉祥寺や渋谷などの繁華街がすぐ近くにあることがうそのようだ。

　駅前の豆腐店・平田屋の３代目平田幸一さんは、久我山生まれの久我山育ち。「今は駅前も静かですが、以前は、商店街が人で埋まるほどにぎわっていたんですよ」と昔を懐かしむ。街のシンボルともいえる神田川は、今はコンクリート護岸となり、遊歩道もきれいに整備されているが、かつては細い川でよく氾濫したそうだ。「私の父が子どものころは、しょっちゅう神田川があふれて家の前まで川のウナギやコイが流れてきたそうです。今も、どこかいなかっぽいところがあり、便利さと共存しているのがこの街の魅力ですね」とほほ笑む。

　豆腐作りには地下１２０メートルまで掘削した自慢の井戸の水を使用。佐賀県産大豆フクユタカを１００％使用して、コクのある極上の豆腐ができあがる。

　駅周辺には、今年３０周年を迎えた洋菓子のロッシェ、クラシック音楽のよく似合うカフェデマエストロなど地元密着の店が点在し、落ち着いた雰囲気を醸し出す。街で出会った人が口々に「住みやすい」と言っていたのも、納得だ。（池沢なつ）