東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 伝統芸能一覧 > 記事

ここから本文

【伝統芸能】

<歌舞伎>菊之助「妻と歩む」 あす結婚式

 26日に結婚式を挙げる尾上菊之助が、3月2日から東京・新橋演舞場「三月花形歌舞伎」昼の部の「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 三笠山御殿」で初役のお三輪を、夜の部では長唄舞踊「二人椀久(ににんわんきゅう)」の松山太夫を演じる。お三輪は祖父の七代目梅幸が何度も演じた当たり役。「祖父が演じたような素朴な娘らしさ、一途(いちず)な恋を」と菊之助。松山は初演で名手・故中村富十郎の椀久を相手に踊って以来の再挑戦だ。「幽玄の世界で魂が揺れているように」と意気込む。 (藤英樹)

 「歌舞伎(を身近)に育った女性を伴侶に持ち、共に歩み、難局を乗り切っていきたい」。中村吉右衛門の四女・波野瓔子(ようこ)さんとの婚約会見で決意を語った菊之助。中村勘三郎さん、市川團十郎さんと相次ぎ歌舞伎界の大黒柱を失い、おのずと責任感は増したという。

 「肉体の芸術ははかないもの。毎日毎日が真剣勝負、一期一会のつもりでお役と向き合います」

 「妹背山〜」は飛鳥時代を舞台に皇位を狙う蘇我入鹿(そがのいるか)と、これを阻止せんとする藤原鎌足の息子・烏帽子折求女(えぼしおりもとめ)(藤原淡海(たんかい))の争いを軸にした時代物。「〜御殿」では、求女に恋い焦がれる酒屋の娘・お三輪が求女の着物に付けた糸をたぐって追って来た入鹿の御殿での悲劇が描かれる。

 「祖父の舞台映像を見ると、娘らしさやかわいらしさを大事にしていたことがよく分かる」と菊之助。

 意地悪な官女たちにいじめられ、求女と入鹿の妹・橘姫が祝言を済ませたと聞いたお三輪の顔に激しい疑着(嫉妬)の相が表れる。入鹿を討伐するには疑着の相の表れた女の生き血が必要なため、お三輪は藤原家の家臣・鱶七(ふかしち)に刺されてしまう。

 「疑着の相やいじめに耐えるところなどやらなければいけない事がたくさんありますが、それに追われてしまうとお三輪が素朴でかわいらしい娘であるという本質が消えてしまいそう。娘らしい体使いが一番難しいと思います」

 求女のために役立てたお三輪は「かたじけない」と喜んで死ぬ。「ここも難しい。お三輪の一途な恋を、現代のお客さまにどう共感していただくか。『そんなに一途になれる?』と問われるのが怖い」

 夜の「〜椀久」は、富十郎と故中村雀右衛門の松山が絶賛された。菊之助は七年前に富十郎と踊った。「おじさまについていくのが精いっぱいでした」

 大坂の豪商・椀久は松山に入れあげ、身代を傾けたため座敷牢(ざしきろう)につながれる。まどろむ夢の中で松山と再会する。

 「生身の椀久が魂の松山と踊るイメージです。二人のイキがぴたりと合わないと曲に乗れません。踊りも日本舞踊の中では特別な鋭角的な振り。富十郎のおじさまに学んだ事を忘れずにお客さまを夢の世界にお連れできれば」

 出演は鱶七に松緑、求女に亀三郎、橘姫に右近、椀久に染五郎ら。ほかの演目は昼「暗闇の丑松(うしまつ)」、夜「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」。二十六日まで。一万六千〜三千円。チケットホン松竹=(電)0570・000・489。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo