東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 伝統芸能一覧 > 記事

ここから本文

【伝統芸能】

<評>寿美が三代の彩り 国立大劇場「第八十八回曙会」

 三代目花柳寿美主宰「第八十八回曙会」(十四・十五日、国立大劇場)。花柳宗岳七回忌追善として、初日はリサイタル、二日目は一門の会を開催。

 長唄「花尽(づく)しみなめでたし」(作詞・佐藤春夫、作曲・三世今藤長十郎、振付・花柳寿輔)は、昭和三十四年に寿美が三代目を襲名した折に初演された曲。宗岳の振付により三人立だったのを、今回、初代から三代を一人で踊り分ける趣向にした。かつて宗岳が披露した「喜寿の春」も盛り込まれている。現・寿美の描写から初代、二代目と辿(たど)り、三代目に回帰する方式に、紗幕(しゃまく)を使った舞台美術(中嶋八郎)が興趣を添え、夢の中に亡き人が現れる能のごときタッチで展開。舞台に飾られた写真から初代と二代目が抜け出てきたような味わいがあった。寿美は、初代の所作の伸びやかさ、二代目の風格、そして自身のスマートな芸とを表現し、三代のモダニズムの伝承を彷彿(ほうふつ)とさせた。花柳寿輔も出演し、寿美と共に稽古風景を舞うなど、舞台面を引き締めた。

 義太夫「桜丸の飴(あめ)売り」は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の外伝的作品。桜丸が飴売りに身をやつし、斎世(ときよ)親王、苅屋姫を飴の箱に隠して太宰府へと向かうという内容。寿美(桜丸)は物売りの明るさと、人物の苦しい胸中とを手堅く演じた。坂東三津五郎(斎世親王)、中村梅彌(苅屋姫)が好助演。三者三様の彩りが過不足なく伝わった。  (阿部さとみ=舞踊評論家)

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo