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代表ブランドの確立目指せ WBC3連覇に挑む「侍ジャパン」

2013年02月13日

侍ジャパンでも主将を務める阿部(右)と言葉を交わすWBC日本代表の山本監督(2月11日、巨人宮崎キャンプで、共同)
侍ジャパンでも主将を務める阿部(右)と言葉を交わすWBC日本代表の山本監督(2月11日、巨人宮崎キャンプで、共同)

野球の国・地域別対抗戦、第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が迫ってきた。山本浩二監督率いる日本代表は15日に宮崎市で直前合宿に入る。目標は3連覇。だが、日本球界にはもう一つ重要な課題がある。日本代表「侍ジャパン」のブランドを、いかに確立していくかということだ。

日本野球機構(NPB)は「代表の常設化」を掲げる。大会後も継続的に日本代表の事業を行い、収益の確保を狙う。軌道に乗せるまでの道は険しいが、その方向性は正しいと思う。

昨夏、大手玩具メーカーが3~12歳の子どもを対象に好きなスポーツのアンケートを実施したところ、野球は11.1%でサッカー、水泳に続き3位だったという(回答したのは保護者)。低年齢層での人気低下は深刻と言わざるを得ない。もはや国内のプロ野球だけでは、この流れに歯止めをかけることはできない。代表の力を最大限に使うべきだ。国際舞台での活躍は、コアなファンだけでなく、それまで関心のなかった層にも訴える効果がある。一昨年のワールドカップ(W杯)優勝で一躍注目が高まったサッカー女子「なでしこジャパン」は、その好例だろう。WBCを五輪やサッカーW杯に比肩するイベントに育てながら、その中で「侍ジャパン」の魅力をアピールしていくという努力が必要になる。

残念ながら、今回は逆境の中で迎える大会と言える。イチローやダルビッシュら日本人大リーガーは1人も参加しないし、山本監督は人気の面でインパクトに欠けると懸念する向きもないではない。実際、過去2大会でチームを引っ張ったイチローや、第1回大会で指揮を執った王貞治監督のような、カリスマ性を備えた「チームの顔」はいない。

ここはあえてその逆境をチャンスと捉えたい。個人の人気に頼れないからこそ、代表そのもののブランド力向上へ知恵を絞るいい契機になる。監督の人選が難航していた時期、加藤良三コミッショナーが「王さん、長嶋さんが元気でおられたら、というのはあるが、現実的には難しい」と発言したという報道があったが、もし人気を重視してのものであるならば発想の方向性が間違っている。サッカー男子代表のザッケローニ監督は就任前の知名度は低かったが、「監督が無名だから人気が落ちる」と危惧する声は聞いたことがない。カリスマ的人気が求められるのであれば、それは代表の権威付けができていないことの裏返しとみるべきだ。そもそも開拓すべきマーケットは若い世代である。今の子どもたちに「ON」と言ってもピンとこないだろう。

今大会は「代表常設化」を打ち出してから初の大きな国際試合。「イチロー、ダルビッシュはいなかったけど、やっぱりWBCは面白いね」と言ってもらえるかが勝負になる。その第一歩は、まず代表戦を見てもらうことだろう。昨年11月に行われたキューバとの親善試合は2試合とも空席が目立った。やはり、スタンドに熱気がないと雰囲気もしらけてしまう。このときのチケットは外野席でさえ3000円台。内野は一番安い席でも、それぞれ4500円と5000円だった。まだ定着したとはいえない野球の代表戦に、この値段は高すぎだろう。NPB内にも「価格設定がまずかった」という反省はあるようだ。宮崎での合宿中の17日に行う広島との強化試合のチケットは、大人1000円、子ども500円となった。目先の採算にとらわれず、広くファンの支持を集めるための取り組みを続けてほしい。

日本球界の誇りを懸けて戦うWBC。きっと面白いはずだ。われわれ報道陣も、その魅力を余すところなく伝えられるよう、全力を尽くしたい。「侍ジャパン」の雄姿を見て野球を好きになってくれる子どもたちが増えれば、それが最大の喜びである。

児矢野雄介(こやの・ゆうすけ)2003年共同通信入社。高知支局を経て、05年から運動部で主にプロ野球を取材。栃木県出身。