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【私説・論説室から】

オバマ大統領の壮大な実験

 米国のオバマ大統領が、銃規制の法案成立に「全力を傾ける」と語った。

 昨年暮れ、コネティカット州の小学校で、子供二十人を含む二十六人が命を奪われた銃乱射を受けての発言だ。痛ましい事件を抑え込もうとするオバマ氏の挑戦は実を結ぶだろうか。

 かつて二カ月ほど滞在したオクラホマ州の人たちとの出会いを思い起こすと、とても楽観できない。

 日本から嫁いできたバーネス・靖子さんは「夫は枕の下にピストルを忍ばせる」と国情の違いを嘆いた。いくら「やめて」と頼んでも首を縦に振らない。

 州政府の農業担当職員、レイサム氏は、西部開拓時代に物々交換の場として始まったスワップミートに同行させてくれた。レイサム氏はワゴン車に大量のおもちゃを積んでいく。週末の休みはおもちゃ屋に変身するのだが、それは仮の姿。なじみの客は、おもちゃと一緒に運ばれてくるピストル目がけてやってくる。

 レイサム氏もあうんの呼吸でこたえ、車からピストルの収納箱を持ち出して商談を成立させる。公務員のレイサム流副業だ。米国ではだれもが入手可能であり、三億丁もの銃器が広く行き渡ってしまった。

 生命と財産を守る道具として扱われてきた銃器を、どう封じるのか。議会に銃規制反対を執拗(しつよう)に迫る全米ライフル協会を向こうに回したオバマ氏の挑戦は、米国の日常を覆す壮大な実験でもある。 (羽石 保)

 

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