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【私説・論説室から】

唐獅子土蔵に支援を

 「唐獅子土蔵が東日本大震災で損傷しました。何とか修復したい」と、一般社団法人「日本左官会議」の木村謙一・総務理事から連絡をもらった。

 現在の陸前高田市(岩手県)出身の名工・吉田春治が明治時代につくった独特な土蔵だ。同県一関市花泉町に四棟あるという。入り口の屋根に逆立ちをした唐獅子の彫像がある。

 「天から舞い降りたポーズをした芸術的な作品です。わらを芯に使い、白い漆喰(しっくい)を塗り付けた立体像は類例を見ません。達人の域にあるものです。一棟の唐獅子像は、かつての大きな地震で落ちてしまいました。残る三棟の壁などが、今回の震災でダメージを受けたのです」

 唐草模様のレリーフや、「黒漆喰磨き」と呼ばれる、高度な左官技術も用いられているそうだ。

 「岩手南部に気仙町と呼ばれる地域があり、出稼ぎで大工仕事や左官仕事をする集団がいました。大工の方は歴史が続いていますが、『気仙左官』は途絶えました。技術の文化的価値もあるのです」

 日本の左官技術は国際的に「エコ建築」として注目されている。製造過程でエネルギーを消費しないからだ。土の特性として、蓄熱・蓄冷、湿度調節もする。

 同会議はこの土蔵修復で若い人への技術の伝承もしたいという。国は復旧復興として、こんな歴史や文化の分野にもっと支援したらどうか。 (桐山桂一)

 

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