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【私説・論説室から】

「もったいない」の底力を

 「節電のため、照明を消させていただきます」−。車掌さんの声が電車内に伝わってきた。朝の通勤時間帯でのことだ。新聞を読むのに何の不自由もない。

 無駄なエネルギー消費はもったいない。そんな意識をだれもが呼び覚ましたのだろう。昨年の東京電力福島第一原発事故を境に日常化した車内の消灯に文句をつける人は見当たらない。

 その「もったいない」は今夏の節電で鮮やかに底力を発揮した。原発依存度が高いため電力不足を声高に口にしてきた関西電力も、家庭や企業の節電の後押しで暑い夏を乗り切った。

 「もったいない」は日本のモノづくりも支えている。今、その歩みを振り返る好機ではないだろうか。

 たとえば一九七〇年代の石油危機。自動車業界は原油価格の暴騰に対抗するため、省燃費の小型車を開発した。九〇年代には湾岸戦争が警鐘を鳴らした過度の石油依存から脱しようと、エンジンと電気モーターの二つの動力を持つハイブリッド車を実現させた。

 「もったいない」はコストや品質面からも世界で評価され、日本の稼ぎ頭に成長した。こうした挑戦を太陽や風などにも向けられないものか。もっと上手に使いこなさないと貴重なエネルギーが無駄になる。

 政府の脱原発路線に失望している日本の経済界に、降り注ぐ太陽の光や熱、そして風の力などを引き寄せる世界の勝者になってほしいと思う。 (羽石保)

 

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