東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 私説・論説室から > 記事

ここから本文

【私説・論説室から】

日本が見えにくくなった

 シカゴとカリフォルニアを結ぶ米国の国道66号。「ルート66」と呼ばれ、大陸横断道路として米南西部の発展に貢献してきた。一九七〇年代、その「ルート66」をバスでロサンゼルスからオクラホマに向かっていたときのことだ。

 ロッキー山脈の急坂でバスが自重にあえぎ、みるみる速度が落ちてきた。外に目をやると真っ赤なスポーツカーが軽快にバスを追い越していく。日産自動車のフェアレディZだった。

 ナット・キング・コールらが歌い、全米でヒットした「ルート66」。さっそうと異国で走る日本車に、名状しがたい高揚感を覚えた記憶が今もよみがえる。ニューヨークのタイムズスクエアでは、SONY、NIKONなどの大きな広告が目に飛び込んできた。

 だが、今やその勢いを見ることは難しい。自動車はトヨタが過去最高の世界販売台数を記録、米GMを抜いて首位に返り咲いたが、家電は惨憺(さんたん)たるものだ。

 どこのホテルも備えつけのテレビは韓国のサムスン、LG製ばかりで、日本製とお目にかかる機会は少ない。それを象徴するかのように、ソニー、パナソニックに続き、シャープも人員整理の検討に入った。

 頻繁に渡航するビジネスマンは「海外で日本が見えにくくなった」という。

 今年の上半期、日本は輸入額が増えて二・九兆円に上る過去最大の貿易赤字を記録した。国富が海外へと消えていく。 (羽石 保)

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo