Vol.11 | |||||||||||||
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今回のゲストは、女流棋士の矢内理絵子さん。
これまでに数々のタイトルを手にしてきた実力派でありNHKの将棋番組でも司会を務めるなど、お茶の間の将棋ファンにもお馴染みの美人棋士さんです。
今回は、将棋のことをあまり知らないダンディがどうやったらプロ棋士になれるのか?
はたまた、棋士界とはどんな世界なのか?などなど、将棋ファン以外にはあまり知られていない将棋のプロの世界の奥深さをとことん聞いちゃいます。
ではでは、チェックメイト!じゃなくて王手!?
早速、ご紹介しましょう!
本日のマドンナ、矢内理絵子さんをゲ〜ッツ!!
【ダンディ】 | 早速ですが、矢内さんはどんなきっかけで将棋を始めたのですか? |
【矢内さん】 | 父がもともと、女の子が生まれたら将棋かゴルフをやらせようと考えていたらしいんです。父自身もスポーツ選手だったのですが、スポーツは怪我をしちゃうとできないけど、将棋なら怪我をしてもできるから。それに私があまり運動神経が良くなかったのもあって、将棋をやらせたんだと思います(笑)。父からルールを教わって将棋を始めたのが小学3年生の夏で、最初は父や父の将棋仲間の人たちと指していました。 |
【ダンディ】 | 最初はお父さんに将棋を教わって、その後に師匠のところに入門されたのですね。 |
【矢内さん】 | そうですね。私の場合は「女流棋士にしたい」という父の意向があったので、早くプロ棋士に教えてもらう方がいいだろうと。それで、関根茂九段が開いておられた教室に通うことになったんです。毎週土曜日に学校が終わった後、電車で1時間半くらいかけて先生の教室に通って。そこで根気づよく将棋の基本を教えてもらいました。 |
【ダンディ】 | 矢内さんのように小学3年生くらいで将棋を始めるというのは、まわりの女流棋士の方と比べると早い方なのですか? |
【矢内さん】 | 幼稚園の頃からだったりもっと早く始める人も多いので、私は遅い方だと思います。いまなら小学3、4年生になると、もう自分で「プロになろう」と道を決めている子も多いんですよ。将棋の場合、特殊な脳の使い方をするので、脳が柔らかいうちから始める方が強くなれるとは思います。子どもの頃にソロバンを習っていた人がアタマの中で珠(たま)をパチパチと弾くことができるのと同じで、将棋でも、たとえば5手先とか10手先の局面が映像として浮かんだり。そういう部分では早く始める方がいいと言われていますね。 |
【ダンディ】 | そうですか。では、うちの娘もそろそろ・・。とはいえ、早くから教室に通ったからといって、みんながプロ棋士になれるわけではないですよね。矢内さん自身は、最初からプロを目指そうと考えていたんですか? |
【矢内さん】 | 当時の関根先生の教室はアマチュアの方が対象で、最初は将棋好きのおじさんたちに混じって指していたんです。そこで1年くらい将棋を教えてもらったのですが、ある日、先生から「自分が師匠になるから女流棋士になりませんか?」と言ってもらったんです。 |
【ダンディ】 | なるほど。その頃から矢内さんには光るものがあったんですね。 |
【矢内さん】 | 普通の子どもはパパッと直感的に駒を動かすけれど、私はじっと集中して考えて駒を動かすタイプで、そこを師匠に見てもらったんだと思います。それが小学5年生の頃で、そこから女流棋士の養成機関である女流育成会に入会しました。女流棋士になるには31歳までという年齢制限があるのですが、私のような子どもから大人までがその育成会に集まって、月に一度の例会日に対局をするんです。総当たりで一日に3回の対局をして、私が入会した当時は一年間で上位2名。途中で制度が変わって、半年間の総当たり戦の優勝者が、プロの女流棋士として認定されていました。現在はまた違う制度になっています。 |
【ダンディ】 | まさにプロ棋士のための登竜門。そこで矢内さんは当時最年少の13歳でプロになられたわけですね。大人をごぼう抜きにしちゃうなんて、凄いです!! |
【ダンディ】 | もちろん才能もあったんでしょうけど、プロの女流棋士になるには相当な努力をされたと思います。子どもの頃なんて遊びたい時期なのに。それだけ将棋が楽しかったんですか? |
【矢内さん】 | 小学生の時から、ご飯を食べる時間以外はほとんど全て将棋の勉強でしたね。「詰め将棋」という将棋の問題集があるのですが、それを解いたり、本を見ながら盤面に駒を並べて戦法を覚えたり。学校の勉強は宿題と予習復習くらいで、それ以外の勉強をしていると父から「将棋の勉強をしなさい」と怒られるんです(笑)。ツライときもありましたけど、将棋で勝つのが楽しかったのでやめようと思ったことはありませんでしたね。 |
【ダンディ】 | それだけ一つのことに集中できるのは凄いですね。どうやったらその集中力が身につくんですか? |
【矢内さん】 | 最近はよく講演会などでもお話するのですが、私の場合はたとえば将棋の問題集を解くにしても、ダラダラとやると飽きちゃうので、「今日は30問解こう」「1時間で10問解こう」というように、自分でタイムトライアル的な要素を取り入れていたんです。そんな風に自然と目的を設定していたから、自ずと集中して勉強できたのだと思います。それに例えば男性棋士の場合では、朝から始めて勝負がつくのは日付けが変わる頃という対局もあるくらい、長丁場の勝負になります。ですから、棋士にとって集中力はとても重要なんです。 |
【ダンディ】 | 普通の人だとそんなに集中力は持ちませんね。それにお腹もすいちゃいます(笑) |
【矢内さん】 | 対局中には50分の昼食休憩があるんですよ。私はその日の朝に買って行くことが多いのですが、外に食べに行く人もいますし、出前を取る人もいます。もちろんお弁当派の人だっていますよ(笑) |
【ダンディ】 | ええっ! それは意外なトリビアをゲ〜ッツしちゃいました。でもあんまり食べ過ぎちゃうと・・。 |
【矢内さん】 | うふふ、眠くなっちゃいますね(笑)。だからほどほどにしています。 |
【ダンディ】 | 集中力もそうですし、けっこう将棋の世界も体力勝負なんですね。そう考えると、若い人の方が有利という面もあるのですか? |
【矢内さん】 | 若い頃は勢いで指せる強さがあるし、年齢を重ねると経験や総合力で勝る部分があるので一概には言えませんね。先輩の棋士の方が、「棋士のスタイルというものは陶芸のようなもので、できあがったと思ったらそれをまた壊して、また新しいことにチャレンジをしてつくっていく。その繰り返しだね」と仰っていて。つまり年齢によって戦い方が変わっていく。まさに私も、いまは自分のスタイルを一度壊して、新たなスタイルを模索しているところなんです。 |
【ダンディ】 | 名人でも進化し続けなきゃいけないんですね。たとえば体操競技なら、誰かの名前がつくような新技が定期的に出てくるじゃないですか。それと同じように、将棋でも誰かが新しい戦法を発明するというようなことはあるんですか? |
【矢内さん】 | あります。藤井システムとか森下システム、中座飛車などといった棋士の名前がついた戦法もあります。ちょうど今年が日本に将棋の名人が誕生して400年になるんです。それでもまだ新しい発想や戦法はどんどん発見されています。私の場合、基本的には羽生先生やトップ棋士の対局からヒントを得て、そこに自分のエッセンスを加えることが多いのですが、17歳で最初にタイトルを獲ったときは、他の人が使わないような戦形を研究して使いました。「菊水矢倉」という名前の戦形だったのですが、それからはその戦形が出ると「矢内矢倉」と呼んでいただいて。 |
【ダンディ】 | なるほど。矢内さんの必殺技ですね。 |
【矢内さん】 | そうですね。でも研究されると勝率が悪くなっちゃうので、いまはあまり使っていないんです(笑)。 |
【ダンディ】 | たとえば新たな戦法をひらめくのはどんなときですか? |
【矢内さん】 | 常にアタマのなかに局面を描いて考えている状態なので、電車に乗っているときやお風呂に入っているときなど、どんなときでもふとひらめくことがあるんです。ひらめいたらそれをすぐにノートに書いて。でもたまに夢のなかでひらめいちゃって、朝起きたら「忘れちゃった」って。そういうこともよくありますね(笑)。 |
【ダンディ】 | ダンディも電車のなかでくだらないことを思いつくことはありますが、本当にくだらないので書きもせずにそのまま忘れちゃいます(笑) |
【矢内さん】 | 棋士にはそのような人が多いので、あまりクルマの運転をする人もいないんです。アタマのどこかで将棋のことをずっと考えているから、運転に集中できなくて危ないんですよ(笑)。 |
【ダンディ】 | なるほど。たとえば、こうやってお話ししていても相手の5手先を読んじゃったりとか? |
【矢内さん】 | そういうクセはついているかもしれませんね。自分がこう言えば相手はどう返事をしてきて、それなら自分はこう対応しようとか。買い物をするときなんかも、衝動買いをすることはまずなくて、「欲しい!」と思っても、すぐに「本当に使うかな?」と深く考えてしまいます。 |
【ダンディ】 | そんな棋士の方同士が対局するわけですから、将棋は心理的な駆け引きも面白いですね。 |
【矢内さん】 | そうですね。たとえば相手が意外なところに駒を置いても、それがうっかりなのか、自分の読み落としなのか。人間同士が近距離で向き合っての勝負なので、相手の表情や息づかいを読んだりという駆け引きがあります。良い手なのに「まいったな〜」とぼやく方もいらっしゃるんですよ。 |
【ダンディ】 | なるほど。野村監督のぼやき戦法だ(笑)。集中力はもちろんですが、先の展開を読んだり相手の心理を読んだり、将棋からは色んなことが学べそうですね。いまの子どもたちにはそういう部分は足りないと言われていますから、学校の授業などにも取り入れるといいのに。 |
【矢内さん】 | 実際に授業に将棋を取り入れている小学校もあるんですよ。それに、いまは小学生の間で将棋がとても人気があって、最近もJTさんが主催した子ども将棋大会が、同会場の一斉対局数の最多記録でギネスに認定されたんです。将棋からはテレビゲームやインターネットでは学べないものを学ぶことができますし、多くの親御さんたちがそれに気付いて、子どもたちに将棋を習わせようと思ってくださっているのだと思います。 |
【ダンディ】 | うちの娘もまだ4歳ですけどもうDSをやっているんです。いまの矢内さんの話を聞いて、せめてオセロくらいから始めさせようかと・・。 |
【矢内さん】 | それくらいのお子さんなら、いきなり本将棋は難しいですが、まわり将棋や山崩しから始めるのもいいですよ。他にも「どうぶつしょうぎ」というゲームがあるんです。3×4の盤面で、動物が描かれた4枚ずつの駒で対局するのですが、将棋を始めるきっかけとしてはとてもいいと思いますよ。 |
【ダンディ】 | それはいいですね〜。早速、探して娘にプレゼントしちゃおう。今日はタメになるお話をたくさんゲ〜ッツできました。娘が女流棋士を目指すことになったら、ぜひ師匠に。そのときはよろしくお願いします! |
【矢内さん】 | こちらこそ、ダンディさんのおかげでとてもリラックスしてお話できました。私も棋士としてタイトルを目指すのはもちろん、将棋ファンを増やすための活動にも力を入れたいと思っています。ぜひ、ダンディさんにも将棋を始めてもらえると嬉しいです。 |
「ダンディ坂野のハートをゲッツ!」に関するご意見・ご感想をメールにてお寄せください。
ダンディ坂野さんへのメッセージもお待ちしております。
t-hotweb@tokyo-np.co.jp
次回の「ダンディ坂野のハートをゲッツ!」は2013年2月13日更新予定です。お楽しみに!
矢内さんのお話を聞きながら、娘の進路を「女流棋士か、はたまたプロゴルファーか・・」と悩むダンディ。その表情もいつになくとっても真剣です。
「さっぱりした勝負の世界なので、将棋は自分に合ってると思います」と矢内さん。美人棋士として注目を集めることには、「恥ずかしいですが、私が表に出ることで少しでも多くの人に将棋を知ってもらえれば嬉しいですね」と答えてくれました。
女流棋士になって良かったと思う瞬間は?という質問に、「昔は対局で勝ったときでしたが、いまはイベントなどでお会いした方に『応援していますよ』などと声をかけてもらえる瞬間ですね」と答えてくれた矢内さん。ファンをとても大切にする姿勢が伝わります。
「女流棋士会の副会長としては棋界の裾野を広げること。プレイヤーとしては、もう一度タイトルを獲ってひと花咲かせたい」。そんな目標を語ってくれた矢内さんを、これからもダンディは応援します!
『駒桜(女流棋士会ファンクラブ)』
公式サイト/ http://komazakura.shogi.or.jp/
東京新聞社主催の女流王位戦で、17歳にして初タイトルを獲得して以来、若き美人棋士として女流棋士界を牽引してきた矢内さん。現在、女流棋士会の副会長を務め、新たな将棋ファン獲得のためにも力を注いでおられます。タイトル戦でいつもファンを魅了する彼女の着物姿には、「将棋の世界がもっと注目されて欲しい」という想いも詰まっているのだとか。そんなとっても素敵な矢内さんをもっと応援したい人は、女流棋士会のファンクラブへ。ゲ〜ッツ!
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1967年1月16日生まれ。 カラフルなタキシード姿(基本的には黄色が多い)から繰り出す決め台詞「ゲッツ!」で一躍お茶の間を席巻。ピン芸人の先駆け的存在となる。 趣味はマラソンと温泉めぐり。
●公式ブログ ゲッツ! 1回50円!! http://ameblo.jp/dandy-sakano/ ●ダンディ坂野 (Dandysakano) on Twitter |