＜知っている？　知りたい？＞財政の崖

　増税に歳出強制削減が加わり、景気を崖から落としかねない「財政の崖」と呼ばれる危機の回避が米議会で決まりました。ただ抜本的解決は先送りされ、短命とみられた流行語も生き延びそうです。

　昨年二月のバーナンキ連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）議長の発言から全米が騒いだ財政の崖。ウォールストリート・ジャーナル紙は、十二月下旬までの三カ月間「財政の崖」を用いた同紙記事は一日当たり六本を超すと電子版で明かしました。ただ米国の辞書編集者によれば新語ではありません。既に一九五七年の米紙に登場し、予算編成上の難局を指すのは八〇年代からと説きます。実際の影響は測れず、景気悪化は緩やかと分析し、崖でなく坂に例える見方もありました。しかし今や言葉はより刺激的で、ＦＲＢ議長という権威も例えに使った崖一色です。

　昨年公債発行特例法の成立が難航し、予算執行に影響した際「日本にも財政の崖」と外国を中心に報じられました。対岸の火事ではなかったのです。　（重松洋一）