9月24(土)、25(日)(11:00〜16:00)の2日間、岐阜県美濃加茂市を流れる木曽川河川敷にある「木曽川緑地ライン公園」で、イベント「きそがわ日和」の「川の家プロジェクト」が開催されました。クラフト作りのアーティストやこだわりの食を提供するフードクリエイターたちが、間伐材で創った「川の家」で小さな店をオープン。川の家が建ち並んだ川べりは、その日、楽しい交流の場に早変わり!訪れた人々は、台風一過の秋空の下、のどかなきそがわ日和を楽しんでいました。
◆杉の間伐材を使用し、釘を使わない組み木工法で
この魅力的な「川の家」をデザインしたのは、スペースデザイナーの川合泰平(かわいたいへい)さん。高校の非常勤美術講師も勤める24歳です。川の家のパーツである杉板一枚の寸法は、一般建築に使われる「貫板(ぬきいた:土木用語で幅60〜90mm、厚さ9〜15mm程度の杉板のこと)」と同じ、幅90mmx厚さ15mm。「一番よく使われるスタンダードなものを大事にしよう」という思いから、家創りは出発したそうです。材には県内産間伐材を用い、両端に溝を作り、溝どうしをかみ合わせて壁や天井を組み立てていきます。家一軒はリユース可能なタタミ約3畳の大きさで、組み立て時間は4人で20〜30分という素早さです。
◆建築でなく、心地よい空気と景色を楽しむための装置
早朝から河川敷に建った30軒の「川の家」の中では、ガラスや陶、彫金、革など、遠くは長野や愛媛県からこのイベントのためにやって来た作家たちが、手作り作品を展示しはじめました。杉板と杉板の隙間からは、緑が見え、風がぬけ、陽射しが漏れてきます。外との境であるような、ないような。エスプリの利いた北欧調のような、はたまた土に同化する和風のような。直線で構成された川の家は、柔らかな空気を醸し出していました。川合さんはこの家を、「イベントのために作ったのではなく、作品の一つとして展示している」と語ります。
◆こだわって作られた、愛しくておいしい作品たち
作家の一人、藤居奈菜江さんの「おうち宝箱」は、ガラス作家の失敗作を譲り受けリサイクルした作品。木工作家がコラボして作った屋根には、桜、ナラ、ケヤキ、チェリー、胡桃、栗、栃などさまざまな木が使われています。どんな場所においてもなじむだろう愛らしさでした。遠く松山から出展した革作家、稲井浩志さんの一番人気は、カメラ用ストラップ。お客さんとの会話もはずみます。長野県上松町から出展した瀬尾誠さんの、桜の木に色漆を塗ったボタンもステキでした。他にも、カレーやお弁当、ケーキ、焼き菓子、ドイツパン、地元「コクウ珈琲」自慢のコーヒーなど、クラフトアート同様にスタッフがこだわって選んだ食のセレクトショップも、人々に極上でおいしい時間を提供していました。
◆川や木が作り出すゆるやかな時間に、心ゆだね
「なぜ木を?」との問いに、川合さんは、「人間に一番近い素材だから」と応えます。石や鉄と違い、寿命が一番人間に近いから。木は先人が残したもの。それを現代の人間が使う点も魅力。「木という素材は人がつなげていくものだから、一番身近に感じる」とも。イベント前日まで、河川敷には台風の影響で木曽川の水が溢れていました。当日、晴天とともに嘘のように水が引き、「川の家」は見事に、白く美しい木肌を現したのです。堤防の上から眺めるその全体像は、川合さんが作った夢のある模型の風景そっくりでした。
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