仮想移動体通信事業者
仮想移動体通信事業者(かそういどうたいつうしんじぎょうしゃ、Mobile Virtual Network Operator, MVNO)は、携帯電話やPHSなどの物理的な移動体回線網を自社では持たないで、実際に保有する他の事業者から借りて(再販を受けて)、自社ブランドで通信サービスを行う事業者のこと。対義語として、自社網をMVNO事業者に提供する側を、移動体通信事業者 (MNO)と呼ぶ。
かつてのアステルやツーカーは自社の回線が及ばない地域などはNTT網やデジタルツーカーグループ(後のソフトバンクモバイルのうち、東名阪地域を除くエリア)などの他社の回線を利用していたが、この場合は含まない。イー・モバイルにおけるドコモローミングについても同様。
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[編集] 概略
OEM製品の、移動体通信サービス版ともいえる。サービス卸元の事業者としては、卸先の事業者の販売・営業体制を活用することができ、卸先の事業者にとっても、物理的な移動体回線網設備の負担なくサービスを提供できる。
また、両者間の契約形態(帯域貸しなどその他)から、同程度のサービスを、卸元よりも卸先が安価に提供することも多い。
[編集] 経緯
日本でのMVNO第一号は日本通信 b-mobile(ビーモバイル)。その後、他の企業も参入している。下記参照。
[編集] データ通信系
当初はウィルコムのPHS回線のMVNOが多かった(特記ない限り同社のMVNO)が、2008年からはNTTドコモやイー・モバイルの回線を、2009年からはUQコミュニケーションズのモバイルWiMAX網を利用したISPによるMVNOが増えている。
- 日本通信
- b-mobile
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- Secure PBビジネス定額 - SoftBank 3G
- ニフティ
- @nifty WiMAX - UQコミュニケーションズのモバイルWiMAX網を利用した定額制データ通信サービス
- @nifty Mobile BB - イー・モバイルのEMモバイルブロードバンド網を利用した定額制及び準定額制データ通信サービス
- @nifty Mobile P - ウィルコムのAIR-EDGEを利用した定額制データ通信サービス
- Tikiモバイル 3G - NTTドコモのFOMAハイスピード網を使ったデータ通信サービス(日本通信との協業となる)
- 2011年3月22日より、Android端末をセットにしたTikiモバイル ANDも開始した。
- IIJモバイル - NTTドコモ、イー・モバイルのHSDPA通信を利用した企業向けモバイルアクセス通信
- ACCA mobile (D) - NTTドコモのFOMAハイスピード網を使ったデータ通信サービス。イー・モバイルのMVNOは現在受付中止
- モバイルPCアクセス タイプD・モバイルPCアクセス タイプK・モバイルPCアクセス タイプW・モバイルPCアクセス タイプE
- モバイル/リモートアクセス ドコモモデル
- Arcstar IP-VPN モバイルアクセス
- OCNモバイル - NTTドコモ網を使ったMVNO
- OCNビジネスモバイル(d)
- OCN高速モバイルEM - イーアクセス網を使ったMVNO
- ぷららモバイル NTTドコモのFOMAハイスピード網を利用したMVNO
- ぷらら「高速モバイルオプション (EM)」イー・モバイルのEMモバイルブロードバンド網を利用したMVNO
- BitWarp / bitwarp PDA
- So-net モバイル 3G - So-net会員向けのNTTドコモのFOMAハイスピード網を使ったデータ通信サービス。光ポータブル(PWR-100F)や、ノートパソコン「VAIO type P」、などが対応。
- BIGLOBE 3G - NTTドコモのFOMAハイスピード網を利用したMVNO
- 京セラコミュニケーションシステム (KCCS)
- KWINS - ウィルコムのPHS回線
- KWINS 3G - KDDI/沖縄セルラー電話(各auブランド)のCDMA 1X WIN
- WILLCOM CORE 3G(NTTドコモのHSPA網(FOMAハイスピード)を利用したMVNO):同社のXGPサービス網 (WILLCOM CORE XGP) の繋ぎサービスであるため、最長で2012年12月までのサービスとなる予定であったが、WILLCOM CORE XGP事業を分離する方向で検討されているため、今後の展開は未定となる。HYBRID W-ZERO3のように、音声はWILLCOMのPHS、データ通信はWILLCOM CORE 3Gをつかうといった応用もされている。
- WILLCOM CORE 3G(ソフトバンクモバイルのHSPA網(3G ハイスピード)を利用したMVNO):2010年10月より、WILLCOM CORE 3Gにソフトバンクモバイル(3G ハイスピード)網を利用したサービスが追加される。これに伴い、従前からのドコモ網を利用したサービスの新規受付は、2010年9月で終了となる。
- eoモバイル - イーモバイルのEMモバイルブロードバンド網を利用(eo光ネットのオプション扱い)
- Master's ONE セキュア・リモートアクセスサービス 定額FOMAデータ通信プラン - NTTドコモのFOMAハイスピード網を利用(日本通信の協力による)
- edion KuaLnet - UQコミュニケーションズのモバイルWiMAX網を利用した定額制データ通信サービス(2009年10月22日からサービス開始)
- データ定額ボーナスパック - イー・アクセスの回線を利用した定額サービスと、ソフトバンクモバイル自社網の従量制サービスをセットにしたもので、USIMカードを差し替えて利用する為、2枚のUSIMカードが付属している。そのためソフトバンクモバイルの純増数としてもカウントされる。
- 自社のULTRA SPEEDサービス開始後は、UIMカード1枚でEMOBILE G4サービスのデュアル利用が可能なサービスも開始されている。
- 2012年2月には、Wireless City PlanningのMVNOとして、AXGPデータ通信サービス「SoftBank 4G」を開始予定。
- amobile - イー・モバイル網を利用したサービス、利用しない月は0円、利用した月は4,980円と言うサービス、機種はイー・モバイルのD26HWを使用、プロトコル制限等無く、災害など緊急時用として利用価値が高い。
クレジットカード支払い、銀行振込、コンビニエンスストア支払いが可能(2011年4月6日からサービス開始)
- DIGIMAX - UQコミュニケーションズのモバイルWiMAX網を利用した定額制データ通信サービス(2009年11月1日からサービス開始)
- NTTドコモ、FOMAハイスピード網を使い、「ベリーデータ定額 日本」というサービスを法人向けに展開。MiFiといわれるモバイルWiFiルータを使った定額通信サービスを2010年4月から展開している。
- NTTドコモ、FOMAハイスピード網を使い、a2networkと同様MiFiといわれるモバイルWiFiルータを使った定額通信サービスを2010年6月から展開している。こちらは個人向けが中心となる。
- NTTドコモ、FOMAハイスピード網を使い、「VECTANTセキュアモバイルアクセス」という定額での企業アクセス用の閉域IP接続サービスを展開している。
- 日本HPが発売するノートパソコンに、FOMAモジュールを搭載し、HP Mobile Broadbandという名称でNTTドコモのFOMAハイスピード網を利用した、プリペイド課金型SIMカードを販売している。また2010年11月には月額固定料金のモバイルWiFiルータの発売も開始している。
- ドリーム・トレイン・インターネットがDTI ハイブリッドモバイルプランという名称で、2011年3月よりNTTコミュニケーションズの公衆無線LANとNTTドコモのFOMAハイスピード双方が利用できる、定額制データ通信サービスを開始。
- NTTドコモのFOMAハイスピード網を使い、android OS搭載のRstreamA1というFoxconn製のスマートフォンにIP電話対応のアプリケーションを搭載し、定額のデータ通信とIP電話のサービスの提供を行っている。2011年1月より提供開始。
- NTTドコモのFOMAハイスピード網を使い、android搭載のスマートフォンIDEOS X5にIP電話対応のアプリケーションを搭載し、定額のデータ通信とIP電話のサービスの提供を行っている。2011年7月より提供開始。
- UQコミュニケーションズのMVNOとして、自社のCDMA 1X WINとのデュアル通信形式にて、データ通信専用端末による+WiMAXサービスを開始。2011年には、スマートフォンとのデュアル通信サービスの提供も始めている。
[編集] 音声通話系
- ジュピターテレコムが、ウィルコムの回線(主に音声通話サービス)を利用して、PHSと直収電話との統合サービス (Fixed Mobile Convergence) を、2006年に開始。同社ブランドPHS (J:COM MOBILE) から直収電話 (J:COM PHONE) への通話料にオプション割引制度あり。
- NTTコミュニケーションズが、ウィルコム回線を使い、NTTコミュニケーションズや無料通話先プロバイダの050IP電話を通話相手とした音声通話定額制「.Phoneユビキタス」を法人向けに開始。
- ウォルト・ディズニー・ジャパンが、ソフトバンクモバイルの回線を利用して、「ディズニー・モバイル」ブランドで日本の携帯電話事業を2008年3月1日より開始している。
- フュージョン・コミュニケーションズが、自社IP電話回線と併用する形でのFMCサービス、「楽天モバイル for Business」を2009年4月15日から開始。端末および構外部分の回線はウィルコムから提供を受ける。
- 日本通信が、talkingSIMの名称で、NTTドコモのMVNOとして、音声通話対応のUIMカードの提供を2010年7月30日より受付開始(利用は、UIMカードが届き次第順次可能)した。端末は、別途技術基準適合証明マークのついたSIMフリーの端末か、ドコモ向け端末を利用者自身が準備する必要がある。
- その後、同社は、SIMフリー版のiPhone4利用者向けとして、talking b-microSIM Platinum Serviceの提供を開始。音声向けとしては初のmicroSIM形態での提供となった。
[編集] サービス終了または、事業撤退
インフォニックス社は複数のMVNO事業を展開していたが、初期投資がかさんだことによる資金ショートにより、一部の事業が清算となったため、セレクトモバイルを基盤とした以下のサービスは、基盤ごとKDDIに引き取られることとなった。[1]当面サービスは継続される予定と発表されている。
- ECナビとインフォニックスが、au電話の回線を使い、インフォニックスのMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)基盤であるセレクトモバイルを活用した「ECナビケータイ」ブランドで、2009年8月3日よりサービス開始。
- 日本航空インターナショナルとインフォニックスが、au電話の回線を使い、インフォニックスのMVNE基盤であるセレクトモバイルを活用した「JALマイルフォン」ブランドで、2010年5月18日よりサービス開始。
- 阪神タイガースとインフォニックスが、au電話の回線を使い、インフォニックスのMVNE基盤であるセレクトモバイルを活用した「Tigersケータイ」ブランドで、2010年5月24日よりサービス開始(受付開始は、同年5月10日)。
- 読売巨人軍とインフォニックスが、au電話の回線を使い、インフォニックスのMVNE基盤であるセレクトモバイルを活用した「GIANTSケータイ」ブランドで、2010年6月30日よりサービス開始(受付開始は、同年6月10日)。
以下のサービスは事業継続のメリットがなくなったため、サービスを終了している。
- ベネッセコーポレーションが、2010年2月9日より進研ゼミ会員を対象に、ソフトバンクテレコムをMVNEとし、ソフトバンクモバイルのMVNOによるサービス、「ベネッセモバイルFREO」の提供を開始。わずか1年後の2011年2月28日をもってサービス終了。
- NOKIAの子会社で、高級携帯電話ブランドVERTU(ヴァーチュ)が2009年5月よりNTTドコモ網を利用しMVNOサービスを開始。銀座に旗艦店をオープンさせ、"VERTU Club"といわれる、サービスを展開。端末は金、プラチナ、宝石、螺鈿をちりばめた職人手作りの携帯電話を利用し、電話やメールでホテルやレストラン、航空券の予約などを行えるコンシェルジュサービスを利用できる。またNTTドコモの国際ローミングサービスWORLD WINGも対応する[2]。携帯電話メーカが展開する日本初のMVNOだったが、スマートフォンの台頭などによるVERTU事業、さらにはノキアそのものの業績悪化に伴い、ドコモとの回線契約期限が切れる2011年8月31日をもってサービス終了。
なお、MVNOとは称していなかったが、現在で言うMVNOに近いものとして、次のサービスがあった。
- YOZAN時代末期のアステル東京が2004年9月より「全国コールサービス」としてDDIポケット(当時)網に接続するサービスを開始したが、その実態はアステル電話機にDDIポケットの番号を書き込むというものであった(旧番号への着信は1ヶ月間無料で新番号に転送された)。これにより自社網は一切使えず、通話以外の機能は一切使えなかった。対象者は同年8月末時点での契約者に限られ、2005年3月に受付終了、同年11月30日にアステル東京自体がサービス終了した。同サービス利用者のウィルコムへの移行は番号変更なしでできた。
[編集] 海外での日本企業のMVNO事業
海外の通信キャリアとの契約を日本語で行う、日本語でのサポートを行う、また海外キャリアの通信環境で日本語表示の携帯電話や日本語でのメールを利用できるといったMVNO(一部取次ぎ、代理店)事業が近年開始されている。代表的なものを以下に記す。
- アメリカ
- KDDIが、スプリント・ネクステルの回線を利用して、KDDIモバイルブランドで米国の携帯電話事業を2007年に開始。3月中旬からプリペイド式携帯電話、4月中旬からポストペイド式携帯電話の料金体系で開始し、日本語の入力や表示ができるKDDI Mobile 6600-J端末が7月16日に投入された。
- NTTドコモUSAではTモバイルの回線を使った、MVNOサービスとして、DOCOMO USA Wirelessを2011年4月より開始した。BlackBerryやandroidといった日本語表示対応のスマートフォンを中心に在米日本人や長期出張者向けに実施している。それにより日本のパスポートなどの証明で契約が可能となる。その他にTモバイルの取次ぎ契約も行っている。[3]
- ヨーロッパ・タイ・中国
- a2network社がドイツ・イギリス・ベルギー・タイにおいて、ベリーモバイルというブランドで日本語表示対応の携帯電話のMVNOサービスを実施。海外において日本語のSMSやプッシュ型電子メールを利用することができる。イギリスにおいてはドコモ・ヨーロッパと共同で事業を展開[4]。また中国においても「ベリーデータ定額中国」という定額データ通信サービスを開始している。
- 中国においてはドコモチャイナ(都客夢(上海)通信技術有限公司)がチャイナユニコムの回線を使った日本語表示、日本語でのメール、SMS、iチャネル対応のスマートフォンを中心に在中日本人や長期出張者向けに日本語での取り次ぎ契約を実施している。
- 韓国
- NTTドコモが韓国KTF社(現・KT)と共同開発した技術で海外プラスナンバーといわれるものがある。これはNTTドコモのFOMAカードにKTの電話番号を書き込んで(遠隔登録含む)1枚のSIMカードに2番号をもたせるものとなる。韓国にいる間はKTの番号で通話ができるというもの。WORLD WING対応のドコモの携帯電話であれば利用が可能となる。同様にKTの利用者も日本で同様のサービスを受けることができる。
[編集] 参考
- 日本
- 英国の企業・モベルコミュニケーションズリミテッドの日本支店が、英国・O2 UK, 米国・AT&Tモビリティ、中国・中国移動からMVNOで借り受け、日本人が海外に行った際に利用することを想定したSIMカード(端末とのセットもある)の提供を行っている。ちなみにニューヨークにある米国支店(モバル)は、ソフトバンクモバイルのMVNOとなっている関係で、日本支店が日本国内用として外国人向けにレンタル貸し出ししているのは、ソフトバンクモバイルのものとなっている。
- 同様の事業は、日本企業ではテレコムスクエア・ジーエーピーなどが行っている。
[編集] 海外での外国企業の日本人向けMVNO事業
- フランス
Transatel社がフランスにおいて、ブイグテレコムの回線を利用したMVNOブランド「eurokeitai」を在仏日本人に提供している。日本語対応の機種を購入することにより、日本語でのメールが可能。契約から解約まで日本語でサービスがうけられる。またeuro keitaiは日本への通話料が格安である。
- アメリカ
- イギリス
[編集] 脚注
- ^ 〈お知らせ〉 「JALマイルフォン」、「Tigersケータイ」、「GIANTSケータイ」および「ECナビケータイ」に係るMVNO事業の譲り受け完了について
- ^ VERTU端末向けサービス「VERTU Club」発表 (ITMedia)
- ^ [http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2011/03/25_00.html?ref=nr_index ドコモUSAが米国で日本人のお客様向け携帯電話サービスを開始 <2011年3月25日>(NTTドコモ報道発表資料)]
- ^ ドコモ・ヨーロッパがa2network社提供の日本語対応携帯電話サービスの英国内における販売支援を開始
[編集] 関連項目
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