スクリュー
スクリュー (screw スクルー) は、流体中で回転することで回転軸方向に流体の流れを生む装置である。あるいは逆に、流体の流れを受けて回転するものもあり、より一般的には、流体の流れと回転とを相互変換する装置であると言える。
似た言葉に「プロペラ」がある。航空機用がプロペラ、船舶用がスクリューと理解されることがあるが、正確には、プロペラとは推進装置の意味である。船舶のスクリューもプロペラの一種で、より詳しくはスクリュープロペラと呼ぶ。
「スクリュー」の語はブタ(scrofa)の尻尾に由来し、英語では螺旋状の回転部品全般を表す言葉として螺子(ねじ)もこれに含まれる。古くからあるスクリューであるアルキメデスのスクリューは螺子と同様の螺旋型で、作動するのが流体中か固体中かという違いはあるが、力学的には螺子と似ている。現代のスクリュープロペラも、非常に短い螺旋であると言える。なお、螺旋型の流体機械としては他にスクリュー圧縮機のロータがあるが、これは螺子ともスクリューとも原理が異なるので、ここでは扱わない。
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[編集] 歴史
スクリュープロペラの原理は艪(ろ)による推進と同じである。なお艪は東洋では比較的多く使われていたが、ヨーロッパではヴェネツィアのゴンドラぐらいでしか見られない。ただしヴェネツィアのゴンドラの漕ぎ方は艪と櫂の中間である。例えば、カヌーを一本の櫂で漕ぐ場合の漕ぎ方も比較的近いが、同一ではない。中国での艪の使用は3世紀にまで遡る。
艪では、単一の板を弧を描くように操作し、水を効率よく押すようにする。スクリュープロペラはこれを改良し、羽根が360度回転し、常に効率的な角度で水を推すようにした。一枚羽根のスクリュープロペラも存在するが、一般に常に力が均等にかかるように複数枚の羽根を使う。
スクリュープロペラの起源はアルキメデスにまで遡る。アルキメデスは灌漑用に水を汲み上げたり、船底に溜まった水をくみ出すのにスクリューを使った。それが有名なアルキメディアン・スクリューである。アルキメデスは螺旋を研究しており、エジプトで何世紀も前から使われていた水車にヒントを得て、螺旋状の動きを応用したものと考えられる。レオナルド・ダ・ヴィンチは同じ動作原理を理論的なヘリコプターに使った。ダ・ヴィンチが描いたヘリコプターには、上部に巨大な布製のスクリューが付いている。
1776年、デヴィッド・ブッシュネルは自作のタートル潜水艇で人力駆動のスクリューを使用した。1784年、J. P. Paucton は、同様のスクリューを使ったジャイロコプター風の航空機を提案したが、そのスクリューは揚力と推力の両方を発生させることになっていた。同じころ、ジェームズ・ワットが船の推進にスクリューを提案しているが、自身が開発した蒸気機関にはスクリューを採用しなかった。なお、スクリューによる船の推進という考え方はワットの発明ではなく、1世紀前に Toogood と Hays が考案している。ただしワットのころにはそれも忘れ去られていた。
1827年、チェコ系オーストリア人の建築家ヨーゼフ・レッセルは、円錐状の中心軸に複数枚の羽根を装着したスクリューを発明した。オーストリア帝国の海軍の下で開発と試験が行われ、従来の方式よりも蒸気船を格段に高速化できることがわかった。しかしすぐ実用化されることはなく、1835年フランシス・ペティ・スミスが新たなスクリューの製造法を発見する。スミスのスクリューは当初は木製だったため、試験中にスクリューが半壊したが、うまい具合に残った形状が現代のスクリューのようになり、かえって船の速度が増したという[1]。同じ頃、フレデリック・ソヴァージュとジョン・エリクソンも似たような特許を申請しており、3人のうち真の発明者は誰かという問題には結論が出ていない。エリクソンはモニターというスクリュー推進の装甲艦を設計した。この艦は南北戦争中の1862年にアメリカ連合国海軍のヴァージニアと交戦したことで知られている。
イギリス海軍は外輪船よりもスクリュー船が優れていることを確認しようとした。まずスミスに試験的に初のスクリュー推進の蒸気船アレキサンダー号を建造させた(1839年)。次にほぼ同じ大きさのスクリュー船ラットラー号と外輪船アレクトー号を建造し、両船を徹底的に比較した。両船で綱引きをしたところ、ラットラー号がアレクトー号を2.8ノットの速さで引きずり回し、スクリューの優位性が誰の目にも明らかとなった。なお、この件にはスクリュー駆動の鋼船グレート・ブリテン号(1843年)を建造したイザムバード・キングダム・ブルネルの働きかけが大きく影響している。
19世紀後半、スクリューに関する力学的研究が進んだ。ウィリアム・ランキン(1865年)らが理想的なスクリュープロペラの数理モデルを構築した。スクリューは厚さのない円盤にモデル化され、中心軸を一定の速度で回転させるものとした。すると円盤の周囲に流れが生じる。このようにして、回転力と推進力の関係が数式化された。さらにウィリアム・フルード(1878年)らがスクリュープロペラの数学的理論を確立していき、それによってスクリューの羽根の形状が進化していった。
ライト兄弟を先駆者として、スクリュープロペラは飛行機の推進用のプロペラに応用されるようになっていった。
内燃機関でスクリューを駆動する方式を最初に採用したのは、フレデリック・ランチェスターが製作した小型ボートだった。オックスフォードで1904年、試験航行が行われた。
[編集] 航空機用プロペラとの違い
スクリュー | 航空機用プロペラ | |
---|---|---|
レイノルズ数 | 低レイノルズ数 | 高レイノルズ数 |
回転速度 | 低速 | 高速 |
アスペクト比 | 幅広 | 幅狭 |
揚抗比 | 低揚抗比 | 高揚抗比 |
流体の相 | 主に液体 | 気体 |
流体の密度 | 高密度 | 低密度 |
流体の粘性 | 高粘性 | 低粘性 |
流体の流入元 | 周囲180° | まっすぐ前方 |
スクリューにはこういう傾向があるものの、どこまでがスクリューかは連続的かつあいまいで、はっきりした定義があるわけではない。広義には航空機用プロペラを含むこともある。
液体中で動作するものをスクリューと呼ぶ傾向が強いが、空気中で動作するものもエアスクリューとしてスクリューに含めることもある。送風機のファンは、流体力学的には航空機用プロペラよりスクリューに近い。
水中で動作するスクリューの回転速度が遅いのは、水がスクリュー表面から剥離し真空の泡が生まれるキャビテーション防止のためである。
スクリューの揚抗比は航空機用プロペラに比べれば低いが、それでも現代のスクリュープロペラは、揚抗比がかなり高く主に揚力を使う。アルキメデスのスクリューは抗力を使い、また他に抗力を使う推進器として外輪船の外輪がある。一般に、揚力機械は抗力機械より効率がよく、スクリューは低揚抗比から現在の高揚抗比へと進化してきた。
[編集] 用途
[編集] 回転から流れへ
[編集] 流れから回転へ
[編集] 脚注・出典
- ^ “History and Design of Propellers: Part 1”. the boatbuilding.community (2004年2月7日). 2007年9月3日閲覧。 “Francis Petit Smith accidentally discovered the advantages of a "shortened" Archimedean screw. Originally, his wooden propeller design had two complete turns (what we might call "double-pitch"). Nevertheless, following an accident in a canal, his boat immediately gained speed after half of his blade broke away.”